水着剣豪七色勝負−11
その後、ギルガメッシュは唯斗の提案を実行に移すため、ラスベガスを蘭陵王も伴い3人であちこち巡ることに決めた。
オプショナルツアーに組み込む場所を選定するためだそうだが、その道中、見知った王を見かけてギルガメッシュは蘭陵王が運転するハイヤーを止めさせる。
「太陽の、お主もここにおったか」
「黄金のか。それに唯斗まで」
ちょうど高級レストランから出てきたオジマンディアスだ。道ばたにハイヤーを寄せて、窓を開けてギルガメッシュはオジマンディアスを呼び止める。
助手席に唯斗がいるのも見つけて、少し意外そうにした。
「セイバーとおるのかと思ったがな」
「こやつは22億の借金を背負い、水着獅子王に買われ、我に買われと転々としておるのだ」
「フハハハハハ!!なんだそれは!!」
やかましい声で笑ったオジマンディアスは、わりと本気でウケている。唯斗が借金を背負ったという事実はおかしくてしょうがないらしく、せっかくなので唯斗も窓を開けて追い打ちをかけることにした。
「アーサーのやつ、手札がワンペアのくせに10億賭けやがったんだ」
「ゲホッ、フハッ、げっほ、ちょっと待て、笑い殺す気か…!」
笑いつつ咳き込み、オジマンディアスは苦しそうにしながらなんとか立て直した。ギルガメッシュも少し引いている。
「…ふぅ。して、貴様らは何をしておるのだ?」
「我がホテルのオプショナルツアーのルートを選定している。太陽のは食事か?」
「今し方終えたところよ。ファラオの舌を唸らすものではなかったがな。こればかりは赤い弓兵を褒めてやらねばならん。あぁそうだ、ちょうどいい。後で振り込んでおく故、こやつを少し買うぞ」
「いや切り売りされてるみたいな言い方すんなよ…」
オジマンディアスは落ち着いたところで、おもむろに助手席のドアを開けて唯斗を引きずり出す。蘭陵王は扉を壊されるよりはマシと一瞬で判断したのか、事前にロックを外していた。
唯斗はオジマンディアスに引っ張り上げられ、そのまま抱き込まれる。
「うわっ」
「了承する前に持って行くとは品がないぞ」
「貴様に言われたくはないな」
「…まぁよい。悪くない余興であった。では唯斗よ、新たな借金を背負わぬようせいぜい励むといい」
ギルガメッシュは企画の道筋も立ったのと、蘭陵王が言っていた些細な感傷も満たすことができたためか、あっさりと手放した。
特にこちらの返答を聞くこともなく、ハイヤーはすぐに走り出す。
「…俺の扱いめっちゃ雑……」
「フン、むしろ丁寧であろうが、お前を扱った者たちを考えれば」
唯斗を抱き込んだままオジマンディアスはそう言った。確かに、獅子王、賢王、太陽王と所有権は移ったが、彼らの性質を思えばむしろ丁重にもてなされている方だ。
それにしても、わざわざ22億で唯斗を購入してまで何の用事だろうか、とその顔を見上げようとしたところで、直上にある太陽の光が目に刺さる。
「うわ眩し…」
「ふっ、余の光輝に目がくらんだか」
「や、それはいつもだけど…シンプルに太陽が……」
「…なぜだか貴様の賛辞は些か気持ち悪く感じる」
「失礼だな」
オジマンディアスは引いたようにしつつも、気を取り直して別のタクシーを呼び止める。すぐにタクシーが路肩に停車すると、後部座席に二人で乗り込んだ。
オジマンディアスに肩を抱かれたまま席に座ると、オジマンディアスは「カジノ・ファラオに」とだけ伝える。どうやらまたカジノに行くらしい。
「あそこってニトクリスのカジノだよな」
「然り。ただ、此度の特異点によって、ヤツは聖杯の力が己の神性を暴走させてしまったことでメジェド神と同化している。愉快なことになっている故、一目見てやろうと思ってな」
「なんでもありか…」
面白いものを見に行く気まんまんのオジマンディアスに、少しニトクリスへの同情を感じつつ、ファラオのカジノというものに俄然興味が沸いてきた。
少し走って、タクシーは目的地に到着した。
巨大なピラミッドが聳え、確かにメジェド神を象った像が多く建ち並んでいる。
タクシーから降りると、オジマンディアスはまたも唯斗の肩を抱いたまま歩き出した。
右側を歩くオジマンディアスはスーツ姿ということもあって、ここにきてようやく唯斗はドキドキとしてきた。
ルルハワのときはジェラートを買ってもらったくらいだったが、今回はしっかりと一緒に行動することになってしまった。あまりこういう機会はないため、肩に回った左腕の晒された腕の色黒の逞しさに、くらりとしそうになる。
この人もラスベガスに浮かれるのだな、と思っていると、ピラミッドの入り口でメジェドをあしらった毛布を被った従業員が出迎えた。
「いっしゃいませい」
「えっ」