水着剣豪七色勝負−13


カジノ・ファラオを出たはいいが、唯斗はこのあとどうするか途方に暮れてしまった。
借金がない以上、これまで唯斗の債権者であったアルトリアやギルガメッシュのところに戻る必要はない。立香たちは今頃水着剣豪とやらと戦い続けているだろうし、通信端末はアルトリアに没収されてから回収できていない。

灼熱の太陽が照り付ける街を歩くことはしんどかったため、唯斗はとりあえず建物の日陰に隠れる。
小切手はあるが、これを換金しないとレストランにも入れない。だが、銀行がきちんと機能しているかも分からないし、この金額では身分証明書が必要になるだろう。

ここはギルガメッシュのところにいったん戻るか、と考えていたところに、突然、軽快に声がかけられる。


「そこのカワイ子ちゃん、よかったら俺とデートでもどうだ?」

「っ、アキレウス!?」


なんと、わずかな風とともに一瞬で唯斗のすぐ横に立っていたのはアキレウスだった。唯斗を見つけるなり、その俊足で駆け寄ってきたらしい。


「アキレウスも来てたのか」

「おう。っつっても、着いたのはさっきだけどな。軍資金ねぇのに思いつきで来ちまったから、どうやってカジノ入るか考えてたところだ」


どうやらアキレウスは単に遊びに来ていたようだ。元手なしに賭博街に来るとは。
しかし、そこでふと唯斗は思い至る。


「…アキレウスは、ギャンブル自信あるか?」

「当たり前だろ。こちとら神性持ちだしな。それに、大体のものは俺の動体視力なら目で追える。勝てないわけないだろ」

「…実はさ、俺、この小切手の額面を持て余してて」


唯斗はそこで、アキレウスに事情を説明した。債権が転々としてきたことを聞いてアキレウスはおかしそうにしていたが、唯斗が8億ある、と言ったことで、初めて否定する。


「いや、それは30億の額面通りだと思うぜ」

「えっ、でもオジマンディアスは22億で俺をギルガメッシュから買ってるし…」

「あのファラオだぞ?そんな端金、大したもんじゃねぇさ。差し引きなんて考えてねぇよ。30億なら、22億と差し引き8億になると考えて受け取るだろうって魂胆だろ。それより大きい額だとさすがにお前さんも固辞するだろうからな」

「……マジか」


こういうときのアキレウスの見解は大体合っている。英雄の中の英雄であるため、やはり英霊たちの思考回路を読み取るのがうまい。
確かに、オジマンディアスならそれくらい考えて渡してくるだろう。つまり、この額を確実に唯斗に渡そうとしてくれたということだ。


「あのファラオ、お前さんが思ってるよりもずっと、唯斗を大事にしてるぞ」

「うわ…めっちゃ嬉しい…」


金額ではなく、オジマンディアスがそうやって気遣いをしてくれたことが嬉しかった。

とりあえず、小切手が額面フルで使えるとするならば、軍資金としてまったく申し分ないはずだ。


「…アキレウス、さっきの返事だけど。俺でよければカジノデートしよう。そんで、出禁RTAだ」

「おっ、いいねぇ。やろうぜ!」


ニヤリと笑い、アキレウスは唯斗を抱き上げると、さっそく地面を蹴って近くの大きなカジノへと向かった。タクシーより速いため、こうして徒歩で行くのである。

そして1軒目、水着剣豪のものほどではないが大規模なカジノに入ると、アキレウスは先ほどの言葉が誇張でもなんでもなかったことを示した。

ルーレットやスロットはその動体視力で動きを機械的に予測して完勝。運が絡むバカラやブラックジャックも次々と勝利していく。もちろん、運だけで決まるものについては負けるときもあるが、結局総合的には勝っていた。

3時間ほどして出禁を食らい、アキレウスは満足そうにする。30億は120億になっていたが、アキレウスはお金が欲しいわけではないため、さして金額には関心を持っていなかった。4倍になったという事実だけで楽しんでいる。
そのままさらに3つのカジノで出禁を食らうまで楽しんだときには、手元の金は170億にまで膨れ上がっており、ついに5つ目のカジノでは入場を断られてしまった。


131/359
prev next
back
表紙へ戻る