水着剣豪七色勝負−15


「お、来たな。んじゃマスター、乾杯」

「乾杯」


グラスの種類も違うため、グラス同士をぶつけることはせずに上げるだけで乾杯を済ませると、唯斗はダイキリを口に含む。
氷でキンキンに冷えたラム酒とサクランボのリキュールが柑橘系のジュースと程よく混ざってすっきりとした味わいになっている。ライムジュースが多めのため、清涼感は増していた。シロップがない分、甘くないのもいい。先ほどのレストランで甘ったるいデザートを食べたあとということもあり、これくらいで良かった。

しばらくアキレウスとしゃべったり、立香から水着剣豪の話を聞いたりしながらカクテルを呑み進めていると、さすがに酔いが回ってきた。1杯分で酔うことはそうそうない唯斗だが、疲労と時間、さらにかなり強い酒であることもあって、いい感じにほろ酔いである。
まだグラスに半分ほど残っているが、これくらいでやめておく方がちょうどよさそうだ。

くあ、と欠伸をすると、唯斗はそのまま左側のアキレウスの肩に凭れた。


「…、マスター?」

「ねっむ…つか、俺今日どこで泊まればいんだろ」

「あぁ、そういや転々としてきたんだもんな。藤丸たちが泊まってる部屋はどうだ?」

「ごめん、寝室いっぱいだ。新しく部屋取り直さないと」

「っと、この時間で予約ってのはちょいときついな」


自分の寝床の話なのに、アキレウスと立香が話しているのを他人事のように聞いていた。
防具を外してインナー姿になったアキレウスの肩に頭をのせている状態はひどく心地よく、このまま寝てしまうのがベストな気がしてきた。


「おいマスター、寝ちまうぞ」

「んー…まぁでも、アキレウスが運んでくれっかなって…」

「俺の部屋でいいなら運ぶぜ?」

「?別に…」

「いいわけないだろうマスター」


別にいいのでは、と言おうとした瞬間、そんな声が響いた。アキレウスが呆れたようにため息をつき、唯斗は動きが止まる。


「……アーサー」

「デート後にバーで酒を飲んで睡魔に身を任せるとは…君の危機感の薄さ、そろそろ本気で咎める方がよさそうだね」

「や…あの……」


酔いも眠気も一瞬で吹き飛んだ。アキレウスの肩から起き上がり、ソファーで距離を取ろうとしたが、こちらを見下ろすアーサーの笑顔は極めて低温だった。
恐らく、ウトウトし始めたのを見た立香が、アキレウスにお持ち帰りされる前にアーサーに回収してもらおうと呼んでくれたのだろう。それならそうと言ってくれればいいのに、と恨みがましく立香を見上げると、立香は口パクで、「反省して」と伝えてきた。

アキレウスも今回ばかりは呆れていた。


「ほんと、さすがにチョロすぎてどうしようかと思ったぜ。ま、据え膳は食ってなんぼだし、持ち帰る気満々だったが…警戒心の薄さはそうだな、彼氏にしっかり分からせてもらった方がいいな」


アキレウスにまで言われてしまい、いよいよ逃げ場はない。
そして、アーサーは唯斗を問答無用で抱き上げた。ジャンヌ・オルタは囃し立てている。


「藤丸君、これからカジノ・キャメロットの攻略というところですまないが…北斎殿はとても素晴らしい動きをするようになった、もう僕の助けは不要だろう」

「うん、大丈夫だと思う。まぁその…唯斗も久しぶりにこういう時間過ごせて嬉しかっただけだと思うから、あんま怒らないであげて」

「…そうだね。怒りはしないよ。怒らなくても分からせる方法はいくらでもあるからね」

「うっわ…唯斗がんばれ」


立香の同情を受けつつ、唯斗はそのままアーサーに連行された。どうやら別のホテルを取っているようで、アーサーは地面を蹴ってビルの壁面を駆け上がり、一気に近道でホテルに到着する。

ここも豪華なホテルだったが、エントランスを眺める暇もないまま、アーサーに最上階のスイートルームに連れ込まれた。


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