水着剣豪七色勝負−20


そしてそれから丸二日経過して、三日目。
宣言通りずっと抱かれ続けた唯斗は、ようやく特異点のすべての戦闘が完了し修復が終わったという報告を、アーサーがウサ耳執事服と一緒に回収していた通信端末で受け取り、この緩やかな監禁生活が終わることになった。
もはや二日目から二人ともそんなことはすっかり忘れており、そもそも二人とも部屋から出る気も湧かなかったため、その事実に盛り上がったのは初日の夜だけである。

チェックアウトのため礼装に着替えつつ、アーサーに身だしなみを整えられ、唯斗はアーサーとともに立香たちのいるギルダレイホテルにタクシーで向かう。
10分もしないうちにホテルのエントランスに到着してタクシーを降りるなり、立香とマシュが唯斗の頭を凝視した。

カジノ・キャメロットでも同じように頭上を凝視されたが、あのときはウサ耳をつけていたからであって、今は何もつけていないはずだ。


「…立香?マシュ?どうかしたか」

「え、唯斗気づいてないの…?マジで…?」

「ええっとあの…」


マシュは顔を赤らめて視線をさまよわせ、立香は唯斗の反応に呆然とした。
ジークフリートと小太郎も気まずそうに目線をそらし、北斎も顔を赤らめたため、いったい何事かとだんだん不安になってくる。

察した立香は、マシュから手鏡を受け取ると、そっと唯斗に差し出した。

そして、鏡を見て唯斗はぴしりと固まった。

なんと、唯斗の髪は金髪に、瞳の色も薄い緑色になっていたのである。このカラーリングと事象、思い当たるものは一つしかない。
朝からやたらアーサーが上機嫌だったのも、やたらすべての身だしなみをアーサーが整えたのも、そしてタクシーに乗るなり寝ていろと唯斗の目元を手の平で覆ったのも、すべてはぎりぎりまで気づかせないためだったということか。

唯斗は振り返り、アーサーを睨み上げる。


「お前なぁ…!!」

「僕の色に染まった君を見るのはとても気分がよくて。すまないね」

「〜〜〜ッ!!」


悪びれないアーサーはすべて確信犯だ。
確かに言っていた。唯斗の魔力とアーサーの魔力が置き換わってしまうほどに抱くと。まさかこんな形で表出しようとは思ってもみなかったのだ。


『おやおや、見せつけてくれるねぇ。すっかりアーサー王の魔力で満たされちゃって…それにしても、マシュに悪影響だからそこのバカップルは先に強制帰還とする!』


さらに、通信でも呆れたようにダ・ヴィンチの声が聞こえてきた。マシュのためを装っているが、恐らくそうではない。


「…その心は」

『君のその状態をより解析したい☆』

「あー…マジで俺何しに来たんだ……」


いったい何をしにラスベガスまで来たのだろう。
そう遠い目になりつつ、ニコニコとするアーサーに、まぁいいか、と切り替える。

たまにはこんなことがあってもいいだろう、なんて思えるのは、それだけこういう時間を過ごせることの価値をより深く理解したからに他ならない。
次のインド異聞帯の探索は来月に迫っている。そこで任務を達成すれば、次は晴れて大西洋異聞帯でキリシュタリアと対峙する。

また始まる過酷な日々にせめて心が負けないようにするためには、こうした何気ない時間の積み重ねが大事なのだと、唯斗はもう知っていた。


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