創世滅亡輪廻ユガ・クシェートラI−2


9月に入ってすぐ、ついにインド異聞帯に突入した。
シオンのサーヴァント、通称キャプテンを伴って、ボーダーを大西洋の航海に適したものに改造するための攻略であり、同時に空想樹の伐採も目標としている。

ボーダーの方はシオンとキャプテンが担うため、カルデア側は異聞帯の攻略だけに専念することになっていた。

激しい揺れとともに虚数潜航を終え、旧パキスタン共和国パンジャーブ州ラホール近郊から再度潜航、インド北西部へと浮上する。
浮上した座標は、デリー連邦直轄領、ちょうどインドの首都であるニューデリーの近郊だった。


「諸君。ここはもう嵐の壁の内側、インドに発生した異聞帯の中だ。まずは周囲の状況の確認を行おう。ミスター・ムニエル、空想樹は目視できるかな?」

「あー…あれだろうなぁ…遠いがなんとか見える。現在地から南東だ」


ムニエルはカメラを向けてモニターに映し出す。映像には、すでにかなり育っているらしい空想樹の姿が遥か遠くに見えていた。
唯斗は画面を見て、だいたいの距離を予想する。


「ビハール州のあたりだろうな。ざっと1000キロか?」

「うっわ…なんかアメリカの特異点思い出すね…」


隣の席でシートベルトを外しながら、立香はげんなりと答える。過去の3つの異聞帯は、比較的狭い領域だった。
今回は広大なインド亜大陸を横断することになりそうだ。

すると、同じくシートベルトをすでに外した哪吒が勢いよく立ち上がる。


「では早速、伐採に向かおう」

「いきなり大胆だねこの中華ロボット!?」


ゴルドルフは判断が速すぎる哪吒に度肝を抜かれる。
今回、中国に続き縁のあるインドでも活躍してもらおうと、哪吒に同行してもらっていた。ヒマラヤの向こうは彼女の過ごした崑崙などの聖なる山々だ。
ホームズも、さすがにそこまで急ぐことは考えていない様子だった。


「いや、それは危険だ。かなり距離があるし、敵…当然、クリプターたちも無防備ではないだろう。空想樹も安定しているように見える、今はまだ異聞帯の調査を優先していいだろう」

「そうか。ひとまず理解」


哪吒は落ち着いてまだ腰を下ろす。唯斗もシートベルトを外しながら、ダ・ヴィンチに声をかけた。いつも通り、唯斗と立香、そしてマシュとアーサーに哪吒を加えてメンバーでの屋外調査となる。


「ダ・ヴィンチ、他に何か見えるか?」

『そうだね〜…うん、おや?』

「…ふむ、空想樹とは距離があるが、他にも興味深いものが確認できる」


カメラに映し出されたのは、ここから南、旧マディヤ・プラデーシュ州のラージガル県にあたる地域に存在する巨大な箱状のものだった。幾何学模様を描くそれがなんなのか、皆目見当もつかない。


「…だめだ、どんな探査にも引っかからない!手応えがないというか、すべてが弾かれてる感じだ!」


ムニエルはお手上げとばかりに結果を報告する。どうやら魔力探査にも引っかからなかったらしい。となると、視覚以外の情報はまったく存在しない物体ということだ。


「あの立方体もここから500キロはあるだろ、何にせよまずはボーダー周辺の探査と、できれば現地人とのコンタクトを図るべきじゃないのか」

「雨宮の言うとおりだ!あんな得体の知れないものに近づくわけにはいかん!まずはボーダーの安全確保と私の安全確保が先決、そうだろう技術顧問!」

『まぁそうだねぇ。中国でのこともある、ボーダーでいきなり現地人に近づくのは避けたいから、町を探すにもまずは仮キャンプ…ボーダーを物理的に隠せるところに行こう』


意図せずして唯斗がゴルドルフの主張をフォローするような形になってしまったが、実際、ダ・ヴィンチの言うとおりまずはボーダーをどこかの岩陰にでも隠すべきだろう。

外の環境は安定しており、霊脈も近くにある。空想樹も見えている。現段階では、これまでのどの異聞帯よりもスタートは恵まれているようだ。


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