創世滅亡輪廻ユガ・クシェートラI−3


準備が整ったところで、いよいよマスターとサーヴァントたちは屋外へと出て調査行動を開始した。

快晴の青空と澄んだ空気、少し湿度は高く気温も暑いが、実際のインドよりは穏やかだ。
周囲はガンジス川平野が延々と広がり、豊かな水源がところどころに池を作っていた。水辺には睡蓮が咲き誇り、インドの幻想的な光景が広がっていた。


「すげ…これが排気ガスで1メートル先も見えないデリーの異聞帯の姿か…」

「マスター…それだけ聞くとこの異聞帯の方が好印象なのだけれど…」


アーサーは唯斗の感想に微妙な顔をする。唯斗は肩を竦めつつ、マシュの方を見遣った。


「術式は問題ないか?」

「はい。中国と違って特にエラーありません。先輩、いつでも行けます」

「うん、じゃあ早速!」


立香はマシュの盾から広がる召喚術式に手をかざす。いつも通り、立香は哪吒の他にもう2騎のサーヴァントを召喚することになっていた。


「…抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」


詠唱を終えると、青白く輝いた召喚サークルから魔力の霧が噴き出す。周囲の花々を揺らして出現した2騎に、全員目を見張った。


「サーヴァント、セイバー。偉大なるコーサラの王、ラーマだ」

「サーヴァント、ランサー。真名、カルナ。よろしく頼む」

「やった、知ってる二人だ!」

『おお!ようし!やはり私は持っているな!勝ったも同然の引きではないか。インド異聞帯攻略に最適なサーヴァントが呼べたと言えるだろう!』

『召喚したのは立香君だけどね』


現れたのはカルナとラーマ。まさにインドを代表するサーヴァントが現れた形であり、かつ、カルデアにも所属しているサーヴァントたちだ。霊基も同じクラスであるようで、当然記憶などはない異聞帯召喚サーヴァントであるものの、その特性などを知っているのは心強い。
何より、二人が英霊として、その強さだけでなく人格としても秀でていることをよく知っていた。

喜びもひとしおだが、まずは二人に状況を把握してもらう必要がある。
自己紹介などを経てから、立香とマシュ、唯斗で異聞帯について、汎人類史について、カルデアについてなどを一通り説明した。

二人も状況を理解したところで、早速ホームズが二人に尋ねる。


『さて、二人どうだろう。君たちから見て、このインドに違いなどはあるかね?』


ホームズの質問に、ラーマが周囲を見渡して眉根を寄せる。


「どう違う、と問われればまったく違う、と答えざるを得ないぞ。地理や地形に見覚えがないし…それに、感覚的なものだが…何か違和感があるというか……」

「あぁ。乾いている…寂しい、と感じる」

「おお、それだ。意味は余にも分からんがな」


カルナの補足に、感覚を一致させている。空気に寂しさを感じる、というのが何を意味するのかはさすがに分からない。
地形の違いはこれまでの異聞帯でもそうだった。比較的、中国は差異が少なかったが、ロシアと北欧は完全に違う大地と化していた。

このインドも、実際のインドより地形も植生も異なっているように見受けられた。
また、やはり二人とも旧ラージガル県付近に位置する巨大な立方体についてはまったく分からない様子だった。

まずはそのあたりで調査行動を本格的に始めようということになり、ダ・ヴィンチの指示で南東の方角へと向かうことになる。
早速、茂みから出てきた魔獣と会敵してこれを倒したが、戦闘したカルナとラーマ、マシュ、哪吒、アーサーは何か違和感を覚えているようだ。


「どうかした?みんな首をかしげてるけど」


立香も気になったようでラーマたちに尋ねる。


「うむ、実際に体を動かしてみて分かったが、この地はやはり何かがおかしい」

「完全同意。ただ、解析不能」

「ああ。俺たちが知るところの…正史とは異なる何かがこの世界そのものを包んでいるように思える」


全員、言葉にできない茫漠とした感覚のようだが、100%の力を出せないらしい。唯斗はアーサーを見上げて、念のためアーサーにも確認してみる。


「アーサーはどうだ?」

「うん、僕もどことなく、十全に力を発揮できていない気がするよ。イメージとしては、そうだな…水の中では陸地と同じ動きはできないだろう?それに近しい感覚だ」

「おお、さすが騎士王だな!確かに余も、その表現が最も近しいと感じる」


アーサーの説明はこれまでで最も彼らの感じている感覚を言語化した表現に近しいようで、唯斗はその言葉からいくつか状況を想定してみるが、どれも根拠がなく考えが進まない。


「…多分、世界のルールというか…汎人類史とは、英霊という存在に対して発動する法則が違うんだろうけど…さすがに分からないな。致命的なものじゃないみたいだし、今は先に進むしかないか」

『そうだね、戦闘にはそこまでクリティカルな問題ではなさそうだ。とりあえず、この先に町があるようだから、まずはそこを目指そう』


魔獣を倒すという程度であれば、このメンバーにとっては大した問題にはならない。だが、もちろんこの先、より強大な敵が出てきたときに火力不足が懸念される。
解明すべき事項の一つとして記憶しつつ、今は先に進むことにした。


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