創世滅亡輪廻ユガ・クシェートラII−6
なんとかアスクレピオスを撃破したと思ったのもつかの間、続いてやってきたのはウィリアム・テルだった。
今度は狩人らしい、中距離戦闘をすることにしたらしい。広場の反対側に泰然と立ち、周囲に浮かぶ魔力の赤い光の矢をクロスボウに装填する。
「手負いの獲物を逃げられるのは狩人の恥だ。ここで仕留めさせてもらう」
「っ、ガウェイン、オジマンディアス、ありがとう。戻ってくれ」
「どうかお気をつけて」
相手が変わったため、召喚サーヴァントを入れ替えることにする。ガウェインは唯斗を気遣い、オジマンディアスは無言で唯斗の頭を一撫でしてから退去した。
一方、立香はランサーをすでに呼び出しており、カリをラーマとラクシュミーに任せて、マシュとガネーシャとで唯斗の隣にやってきた。
「ここが踏ん張り所だね」
「あぁ。ディルムッド、頼む」
唯斗もディルムッドを召喚する。唯斗のすぐ傍に現れたディルムッドは、2本の槍を構えてすぐに臨戦態勢となった。
「スイスの名高い弓兵ですね。マスターも藤丸殿も、彼の息子ほどでしょうに…いえ、なんであれこのディルムッド、必ずあなたをお守りします」
「任せた。あいつの攻撃は基本的に当たる、けど矢は魔力でできてるから、ゲイ・ジャルグで弾けば消えるはずだ」
「承知しました」
ディルムッドはそれだけですべて理解し、紅の槍をメインに据えて飛び出した。ランサーも同様に地面を蹴ってウィリアム・テルに迫る。
ウィリアム・テルは連続して射撃を行って、二人の槍を弾きつつ、こちらにも器用に攻撃を伸ばす。それをガネーシャの石像やマシュの盾、アーサーの剣が弾き返した。
するとそこに、アーシャが現れる。手には、ウィリアム・テルに射殺された男が持っていたクロスボウを構えている。
「いけない!アーシャさん下がって!」
「ん?また懲りずに誰かが狩人に狙いをつけてるのか。どれっと」
槍兵二人が離れた隙をついて、ウィリアム・テルはアーシャに矢を放とうとする。
しかし、ウィリアム・テルは不自然に動きを止めた。すかさず立香が叫ぶ。
「だめだ!あなたが子供を撃ってはいけない!!」
「そうです!あなたは息子を守るために放った矢でもって英霊となった!あなただけは、絶対に子供を撃ってはいけません!!」
マシュも同じく叫ぶが、ウィリアム・テルは動揺を露わにする。
「息子…?息子ってのは、いったい、誰のことだ…!?」
「隙ありィ!!」
その隙を突いて、ランサーの槍がウィリアム・テルの肩を大きく抉った。心臓を狙ったものだったが、寸前でウィリアム・テルが避けたのだ。
追撃でディルムッドも迫り、矢を消失させながら、ディルムッドの黄色い槍、ゲイ・ボウでウィリアム・テルの脇腹を穿ち抉る。
まさか、アルジュナは召喚時にウィリアム・テルから息子に関する記憶や感情を消していたのだろうか。その善性の根幹たる息子のことさえ忘れていれば、確かにウィリアム・テルは合理的な狩人となる。
大量の血を流してよろめいたところに、ランサーがとどめを刺そうとしたが、今度は別のサーヴァントがそれを弾き飛ばした。
褐色の肌に巨大な鉄輪、ランサーとディルムッドは同時に下がる。
「…あぁ、むかつくぜ。前の仕事もやりきってねぇってのに、偶然見かけちまったら無視できねぇ!」
現れたのはアシュヴァッターマンだった。
すでに長引いた戦闘によって、唯斗も立香もかなり魔力を削られている。何より、かなり長い時間が経過していた。
この状態でアシュヴァッターマンとウィリアム・テルを両方とも相手取り、さらに頃合いを見てビーチュを脱出してボーダーに退避する、というのは、極めて難しい状況と言わざるを得ない。
しかし、今度はウィリアム・テルがアシュヴァッターマンに背後から狙撃した。同じ弓兵、アシュヴァッターマンは深手ではないが、驚いて振り返る。
「何しやがる!!」
「あぁ…くそ、何か大切なものがわしの中にあった、ということは思い出した…奪われていた、というのがな」
「仲間割れ!?とにかく撤退よ!」
ウィリアム・テルが隙を生み出してくれた。その間に、唯斗と立香はランサーとディルムッドをいったん戻してから走り出す。アーシャはガネーシャが家に入らせていた。アジャイの姿が見えないが、いったいどうしたのだろう。
とにかく、一同はビーチュを出てボーダーへと走り出す。前回ほどの緊急ではないが、アシュヴァッターマンと戦いながら逃げるというのは同じように苦しい状況だった。