創世滅亡輪廻ユガ・クシェートラII−17
激しく戦うアルジュナ・オルタとカルナの間には、迂闊に入れない。しかしバーサーカーであるアルジュナ・オルタの方が火力が高く、カルナにとっては攻撃有利であっても防御は不利だ。
そこで、カルナをサポートしつつ的確に削るべく、立香はエルキドゥを、唯斗はアーサーだけを向かわせた。マシュはマスター二人に攻撃の余波が及ばないようにしつつ、ガネーシャとラーマはそのフォローにあたる。
唯斗と立香でアーサーとエルキドゥ、カルナを支援するが、カルナはほぼ単独で動いているため、もっぱら立香もエルキドゥへの指示に集中していた。
エルキドゥの鎖が空中から出現してアルジュナ・オルタを拘束し、そこをカルナの槍とアーサーの剣が突き刺す。しかし刺された直後から回復し、さらに光の球を破裂させて三人とも吹き飛ばす。
本来、エルキドゥの鎖は神を縫い止めることに特化した神造兵器だ。しかし、アルジュナ・オルタの神性が高すぎて、その膂力を抑えきれていない。サーヴァントという身であるために権能が著しく制限されていることもあるだろう。
「どうしよう…エルキドゥの鎖でも抑えきれない…!」
「やっぱ遠距離のサポートが必要だな、でも立香はカルナに魔力持ってかれるし…あーくそ、なんでこういうときにマーリンがいねぇんだ…」
マーリンと再契約できていないことは単純に困る。唯斗は純粋なサポート役ではないものの、ここはギルガメッシュを頼ることにした。
本当は、エルキドゥと一緒になることを複雑に思うのでは、と一瞬考えなかったと言えば嘘になる。だが、あの賢王なら大丈夫だろう。そこはやはり、半分神の血を引くだけある。
「ギルガメッシュ!」
「ええいまたか貴様…と、ほう、これはまた。古代インドの全神性にメソポタミアをぶつけるか」
唯斗が呼び出したギルガメッシュは、何度も呼び出されたことに悪態をつきつつも、状況を一瞬で理解する。
ちょうどそこに、アルジュナ・オルタに吹き飛ばされたエルキドゥがボロボロになりながらすぐ近くに着地する。
「キャスターのギルか。ちょうど良かった、僕の鎖だけでは、あの混ざり物の神を抑えきれなかったところだ」
「フン、サーヴァントになってから弛んでおるのではないか」
「おやおや、マスターに対して、個人に向けるには大きすぎる感情を持て余している賢王様には言われたくないなぁ」
「先にお前を倒す必要があるようだな」
ギルガメッシュはそうため息をつきつつも、左手に石版を構える。エルキドゥも楽しげに笑ってから、地面にしゃがんで飛び出す姿勢になる。
唯斗は二人がすぐに慣れたように戦う体勢になったことが、ここにも神話の二人が再現される形となり、内心でテンションを上げる。
だがそんな浮かれている場合ではない。
「立香、畳みかけよう。ギルガメッシュとエルキドゥがアルジュナ・オルタを繋ぎ止めている間に、エルキドゥの本体攻撃とアーサーの攻撃を連続させる」
「それに続けて令呪を送ったカルナの宝具解放、だね」
「そういうこと」
「分かった。エルキドゥ、お願い」
立香も唯斗の意図と同じ考えだったようで、すぐに打ち合わせは終わる。それを見ていたエルキドゥは、僅かに振り返って微笑んだ。
「君たちは良い組み合わせだね」
「えっ、ギルガメッシュの隣にいるあんたに言われても…」
「たわけ。スケールが違うわ」
呆れたようなギルガメッシュの言葉をエルキドゥは笑う。すでに、二人ともアルジュナ・オルタを見据えていた。
そして唯斗は口を開く。立香も同じタイミングで声を発していた。
「「宝具解放!!」」
「了解!」
「よかろう!」
途端に、エルキドゥの足下は金色の光に包まれ、大量の鎖が出現して上空へと放たれる。エルキドゥ自身も光を纏い、その1本となろうとする。
ギルガメッシュは石版にシュメール文字を浮かべ、唯斗たちの背後に大量のディンギルを出現させる。
「
人よ、神を繋ぎ止めよう!」
「
王の号令!!」
ギルガメッシュは器用にも、宝具を展開する傍らでアルジュナ・オルタの足下から天の鎖を出現させていた。さらに、アーサーとエルキドゥ、カルナの攻撃力を底上げする術式をかける。
すぐにエルキドゥの光の鎖の群れがアルジュナ・オルタを直撃し、足下から現れたギルガメッシュの鎖と合わさって、アルジュナ・オルタを雁字搦めに拘束する。
立て続けに、ギルガメッシュのディンギルから大量の光弾が放たれ、アルジュナ・オルタに弾幕を張った。
その爆煙をかき分けるようにして、アーサーがアルジュナ・オルタを切り裂いた直後、エルキドゥ自身の鎖がアルジュナ・オルタの腹を貫く。
大量に血を吐き出したところへ、立香は右手を掲げた。
「カルナ!令呪を以て命じる!この間違った輪廻に終わりを!!」
「承知した!!」
立香の魔力を受け取ったカルナは、胸元のチャクラに接続した目の模様から魔力の光を放つ。赤く眩い光をチカチカと煌めかせながら、上空に浮かび、黄金の巨大な杖のような槍を構え、複雑な魔力の紋章が浮かぶ切っ先をアルジュナ・オルタに向ける。
「
日輪よ、死に随え」
エルキドゥとアーサーは撤退し、マシュとギルガメッシュは唯斗たちを守るべく衝撃波に備える。
天の鎖に繋がれて身動きが取れないアルジュナ・オルタに向けて、カルナの槍から、太陽光線が放たれた。
まるで太陽が落ちてきたかのような光は、アルジュナ・オルタごと一帯を焼き尽くし、地面を融解させ、曼珠沙華をすべて吹き飛ばす。
衝撃波に乗って大量の石や破片が弾丸のように飛んできたが、マシュの盾とギルガメッシュの結界が防いでくれた。
そして、その光が過ぎた場所には、アルジュナ・オルタが膝を着いて、その霊基を崩壊させつつあった。