創世滅亡輪廻ユガ・クシェートラII−18


「なぜ…なぜだ……!比較に、ならぬはず!お前が、シヴァやヴィシュヌの力を、手にいれていようと…私には、すべてが…!」

「いや、お前には足りていないものがある。俺にあってお前にないものだ」


致命傷を負って息も絶え絶えとなったアルジュナ・オルタに、カルナは上空から見下ろして答えた。今までと逆の位置だ。


「なに……否、そんなはずは、ない。私は、すべての、神性を…」

「それは、あれだ」


カルナはこちらを指さした。立香を主に示しているだろうが、正確には、唯斗やマシュ、ボーダーの中のスタッフたちもそうだろう。


「っ!」

「共に在る人。逆に言えば…神は、人と共に在ってこその神だ。空想樹という世界の外からの力に頼り、この世界の人を完全に切り捨てたお前は…たとえ創世と滅亡を繰り返す神であったとしても。そんな神は、神ではないのだ」


まさにそれは、エルキドゥとギルガメッシュが示したことでもあっただろう。
神の子でありながら人の王として生きることを選んだギルガメッシュと、彼を神の世界に繋ぎ止めるはずが神を人の世界に繋ぎ止めるための鎖となったエルキドゥ。

カルナの言葉を聞いていたエルキドゥもギルガメッシュも、表情からは考えていることを窺い知ることはできないが、人類史最古の英雄であり、人類史最古の友情物語であった彼らの神話は、一足早く、この事実に至っていた。


「…今回は、俺の勝ちだ。アルジュナ」

「お、おおお…!これは、こんな破綻は……許され、ない。なんという、屈辱……」


忌々しく言ったアルジュナ・オルタだったが、ふと自分の言葉に気づき動きを止める。そして、地面に落ち始めた曼珠沙華の花弁の雪を見上げた。


「…屈辱…?…この悔しいという感情は…不出来で、無駄で、不要な邪悪か?ならばなぜ、このようなものが私の中にある!?…そうか。最初から、私が完全な存在などではなかったのは当然か。完璧な神では持ち得ない…瑕……」


アルジュナ・オルタは地面に膝を着いたまま、瞳を閉じる。そして、退去の光に包まれた。


「……私は、追い続けたに過ぎない…私の中にある、貪欲な(クリシュナ)こそが…この私の……敗因を理解した。私の滅業の刃は、私の中には届かない。貴様への執心…それが完全なる神を貪欲に求め続けた理由であり…それは恐らく、私にとっては、世界よりも先に壊すべきものだったのだ…」

「お前はこの剪定事象の中にしか存在できない可能性だ。俺は、そんな最後の神などではないアルジュナに勝利したかった。不完全でありながら完全を目指そうとするアルジュナに。世界と同じだ、完全であればあるほど、不完全なものとなる」

「…ふっ、そうか…私は最初から、矛盾していた…お前が望むような男には、なれていなかったのだな……」


それを最後に、アルジュナ・オルタは消失する。ついに、この異聞帯の神は倒されたのだ。
戦いの終了を確認して、エルキドゥとギルガメッシュもカルデアに戻る。控えていたラクシュミーたちも前に出てきて、空想樹を見上げた。
次に戦うのは、この臨界寸前の銀河そのものだ。

しかし、やはりというか、そんなカルデアの前に立ち塞がる男がいた。


「そういえば、こういった挨拶は初めてかしらね。ようこそ、私が運営するインド異聞帯へ」


ペペロンチーノは、隙のない立ち姿で進路を塞ぐ。戻ってきたアーサーは、すぐに唯斗の前で剣を構えた。
立香は、ペペロンチーノの行動を分かっていなかったわけではないようで、極めて戦いたくなさそうに見つめる。


「…そこをどいてください、ペペさん」

「あらぁ、私じゃ役不足?でももともとそういう契約だったでしょ?神を倒すまでの一時的な協力だって」

「そんなふうに割り切れない…!」

「そうです!どうしてですかペペさん!私たちには、もう敵対する動機がないはずです…!」


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