創世滅亡輪廻ユガ・クシェートラII−20
そして唯斗は、アーサーとともに曼珠沙華のあった場所を走って空想樹へと向かう。背後で戦闘が始まったのを確認してから、アキレウスを呼び出した。
「うおっと、また空想樹だな!」
「あぁ、アーサーと一緒に上空に飛ぶ」
「任せな!」
アキレウスは戦車を出現させ、後ろに唯斗とアーサーを乗せて走り出す。
一瞬にして上空へと駆け上がり、そのまま赤黒い積乱雲が取り囲む空想樹に沿って高度を上げていく。
雲は空想樹の周りを囲んでぐるぐると回転しており、渦巻きの中心に空いた穴を貫くように空想樹が聳えていた。
まるで台風の目の中を飛んでいるようだ。
雲には雷が瞬き、空想樹の中には銀河が輝く。
そして8000メートルの高さにやってきた辺りで、開花した空想樹の先端に差し掛かった。外敵と判断した空想樹からは、赤い光線や衝撃波が次々と放たれる。
二回目ともなると、アキレウスは素早くすべてを避けつつも、唯斗たちが行動できるよう安定させてくれていた。やはりさすがの順応力だ。
「出し惜しみしても仕方ない。最大火力の一撃で決める」
「…分かった。アキレウス、くれぐれもマスターを落とさないように」
「令呪切んのか?ならこっちこい」
アキレウスは事前に唯斗を落とさないようにするため、自分の体の前に唯斗を引き込んだ。そのまま唯斗に抱き締められ、吹き付ける風を避けるべくその胸板に顔を埋めつつ、右手に魔力を集中させる。
「オジマンディアス!」
「…斯様な狭い場所に余を召喚するとは」
「悪い!メセケテットで滞空しててくれ!全力でぶち込む!」
「…フン、いいだろう。セイバー、うっかり余のピラミッドに押しつぶされないことだな」
「私の聖剣の光に当たらないよう気をつけてくれ」
「こら」
唯斗は早速諍いを始めた二人を素早く諫めてから、令呪に魔力を通していく。
オジマンディアスは炎に包まれていない状態のメセケテットを出現させてそちらに乗り込むと、アーサーもその甲板に飛び乗る。
それを確認してから、令呪を切った。
「アーサー、オジマンディアスに令呪を以て命じる!空想を焼き切れ!」
二画を一気に消費したため、視界がぐらりと揺れる。すかさずアキレウスが唯斗の体を支えた。
同時に、アーサーとオジマンディアスはそれぞれ宝具を解放する。
「
約束された勝利の剣!!」
「
光輝の大複合神殿 !!」
半分の拘束を解放されたアーサーのエクスカリバーから、聖なる光が禍々しい空を切り裂いて空想樹を直撃する。
さらに、オジマンディアスが出現させたピラミッドが上空から現れて、空想樹を上から垂直に切り裂きながら落下していく。
直上から引き裂くピラミッドと、それを後押しするように表面を焼き尽くす聖剣の光によって、空想樹上部は崩壊を開始した。
唯斗の魔力が危険な状態になったのを見越して、オジマンディアスは何も言わずに退去した。アーサーもすぐに戦車に戻ってくる。
「大丈夫かいマスター!」
「だい、じょうぶ…きっつ……」
ぐらぐらとして、もはや立っていられない。それほどまでに、オジマンディアスの宝具の全力解放はエネルギーを必要とする。
その代わりに、アーサーとオジマンディアスの2騎で空想樹の伐採に成功した。恐らくだが、空想樹にもクラスのような攻撃の通りやすさがある。今回はバーサーカーのようなものだったのだろう。
「チッ、仕方ねぇから騎士王がマスター支えてろ。俺がここに抱き締めたままだと風を受けちまうからな」
「言われなくとも。さあこっちにおいで」
「チッ」
二度も舌打ちをしたアキレウスの腕からアーサーの腕の中に戻る。
崩壊していく空想樹の轟音を聞きながら、アーサーに抱き締められて、ようやく体重のすべてを預けられた。
アキレウスは唯斗に配慮して、ゆっくりと降下を始める。内側に崩れるようにして崩壊していく空想樹と同じ速度で降りていくと、いくらか穏やかになった地上がようやく見えてきた。
戦闘している様子は見えないため、アシュヴァッターマンも倒せたのだろう。これで、この異聞帯を滅ぼすためのすべての工程が、完了した。