閻魔亭繁盛記−1


カルデアの壊滅、そして人理漂白の発生から丸一年。
ノウム・カルデアは、2019年1月1日を迎えた。

シャワーすら満足に使えないボーダーでの逃亡と、ロシア、北欧の二つの異聞帯の攻略を経て、シオンの招きで彷徨海に到達。そこに新しいカルデアベースを建設し、中国異聞帯とインド異聞帯を攻略することに成功した。
元のカルデアにいたサーヴァントだけでなく、異聞帯で縁を結んだ者や、始皇帝、スカディ、アルジュナ・オルタなどの異聞帯の王たち、さらには虞美人のような者まで実に多彩なサーヴァントが新たに召喚された。

そして30日後の今月末、いよいよカルデアは、大西洋異聞帯への突入を予定しており、着々と準備が進められていた。

そんな中、こうして無事に年越しを迎えることができたわけだが、早々に唯斗は管制室に呼び出されていた。
立香、マシュも一緒のようで、管制室に入ると、ゴルドルフとダ・ヴィンチ、ホームズが出迎える。


「あけましておめでとうございます、皆さん」

「おめでとうございます!」

「…おめでとうございます」


マシュが挨拶し、立香が勢いよく続く。唯斗もとりあえず乗っておく。スタッフたちも笑顔で返してくれた。
ゴルドルフは頷くと、おもむろに小袋を取り出す。


「うむ。しっかり挨拶にきた諸君らに褒美をやろう。謹んで受け取りたまえよ」

「わっ、これお年玉だ!」

「これが、あの…!?」


いわゆるお年玉である。立香はもちろん馴染みがあるため、顔を輝かせて受け取る。前のカルデアの給金だけでも使い切れないような額面であるだろうし、なんなら世界がこうなっていては使い所もないのだが、お年玉であるというだけで喜色を浮かべていた。
マシュも知識はあったようで、初めてのそれに表情を明るくする。


「ふっ。まあ、そう喜ばずともよいだろう。日本や中国ではそういうものがあると聞いてね。私の国では馴染みのない習慣だが、これも大人としての務めだ。感謝しなさいよ、ほんと」


当然だが、唯斗にとっても初めてのものだ。そんなものをもらえる人生ではなかった。まさか、初めてのお年玉がゴルドルフから、しかも彷徨海での経験となるとは、何が起こるか分からないものだ。


「ありがとうございます、新所長!来年まで大事に取っておきますね!」

「うむ、マシュはしっかり者ということだな。さっそく中身を見ている藤丸とは正反対だ」


封筒を開けて中身を確認している立香に、少し呆れながらゴルドルフは言った。さすがに唯斗も、そこは憚って中身はまだ見ていない。
それにしても、こうやって子供枠として扱われることはあまりなく、唯斗のサーヴァントも主従関係や対等な関係であるため、なんだか新鮮だ。

そしてゴルドルフからの用件はこれで以上であるらしい。


「それでは下がっていいぞ。私はこれからお汁粉を楽しむのでね。カロリー摂取に忙しい身なのだよ」

「それは聞き捨てなりませんね。せっかくの新カルデアでの正月なのに寝正月とは」


そこに現れたのはシオンだ。「謹賀新年ですね皆さん」と手短に挨拶を済ませながら、タブレット片手に眼鏡をくいっと上げる。


「さて、新年早々であれですが、微小特異点が観測されました。とはいえ、危険度はありません。場所は21世紀の日本、観測したところ、温泉リゾートホテルがあるようです」

「…つまり…?」


立香は理解して目をきらきらとさせる。シオンはニヤリと笑った。


「そう、これは慰安旅行です!今月末に控えた大西洋異聞帯は、クリプターの本丸と予想されます。今のうちに英気を養ってきてください。なお、同行サーヴァントはトリスメギストスIIの演算で采配しておきました」


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