閻魔亭繁盛記−6


それから二日、旅館には次第にカルデアからのサーヴァントたちが訪れるようになった。
通信が取れないことから、何かしらが起きていると察したダ・ヴィンチやシオンが、サーヴァントたちを派遣してくれているらしい。
客として一泊した者がカルデアに帰還して状況を説明したのだろう、三日目からは目に見えてやってくるサーヴァントが増えた。リソースギリギリのところで客として派遣しているようで、自分も行きたいと立候補する者たちが多すぎて大変だという。

なぜそこまでしなければならないかというと、この旅館は閑古鳥だからだ。数百年居座っている物の怪のような客もいるにはいるが、他の客が来ないため、温泉宿にも関わらず露天風呂は閉鎖されている。
他にも多くの施設が閉鎖されており、建物は大半が未稼働状態だ。

客のサーヴァントが増えたことで、施設を拡充する必要が出てきため、立香とマシュ、唯斗、そして女性陣のサーヴァントたちの主な業務は施設の復旧となった。

この日は、目玉である大浴場の復旧となったため、立香、マシュ、唯斗、玉藻の4人がかりで大掃除をしている。また、清姫と巴御前はいたずらしようとする猿を温泉の周辺から遠ざける作業をしている。完了次第、玉藻が獣避けの呪符を四方に配置する予定だ。

ブラシで床をゴシゴシと磨いていると、別方向からブラシがけしている立香が近くにやってきた。マシュはちょうど別の風呂を掃除している。


「…立香、」

「んー?」


戦っている清姫たちにも聞こえないよう、小声とまではいかないが声のトーンは抑えめに声をかける。


「さっき紅閻魔に、マシュと番扱いされてたろ」

「なッ、」


一瞬で顔を少し赤くした立香は、さすがにブラシの手を止める。良い反応にニヤリとすると、立香はジト目になった。


「聞いてたんだ」

「物音したから確認しに行ってたんだ。まさか戦闘してるとは思わなかったけど。そしたら紅閻魔と話してるの聞こえてさ」


先ほど、客の一人だという「虎様」という人物が暴れ、立香たちが戦いに行った。物音を聞いて唯斗も駆け付けたが、そのころには収まっていて、戦闘後に紅閻魔と立香、マシュが会話しているのが聞こえたのだ。
紅閻魔は、「この閻魔亭に番の客が来るのは久しぶりでち」と言っており、立香とマシュを番だと思っているようだった。


「で?相部屋だけど、何もしてないよな」

「するわけないじゃん!唯斗が同じ部屋だったらちょっと手ぇ出してたかもだけど、マシュのことはとにかく大事にしたいの!」

「どっちにしろ問題発言だろ」


なぜ同性の唯斗には理性が働かないのか、と呆れるが、今度は立香がニヤっとした。


「てかさ、唯斗こそ、アーサーと同部屋でしょ?そっちのが怪しいんだけど」

「翌日に響くから何もしてねぇよ……まだ」

「ふーん?」


楽しそうにしつつ、立香はブラシに少しだけ凭れて唯斗を覗き見る。


「…なんだよ」

「いやぁ〜、その恰好、気を付けないとぺろっといかれちゃいそうだなって」

「アーサーもそんなん言ってたな」

「アーサー王だけじゃなくてさ、これから唯斗のサーヴァントも来るかもでしょ?そしたら危ないよ。俺のサーヴァントにも危ないのいるけどさ。気を付けなよ?」

「…変な話だよな、ほんと」


そんなことにはならない、と言うには、前科が多すぎる。唯斗は立香の忠告を否定しきれず、ため息交じりにそう言うしかなかった。


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