神代巨神海洋アトランティスI−3


さらに悪いことに、デッキに上空からとてつもない勢いで降下してきた戦士が、その強烈な一撃をマシュにたたき込んだ。
マシュは盾で防いだが、その衝撃をいなしきれず、10メートル近く甲板を滑る。


「くぅ……ッ!!」

「マシュ!!」


立香は慌てて声をかけるが、マシュは負傷してはいない。
一方、優雅に甲板に降り立った白い装甲の槍兵は、こちらを悠然と睥睨した。


「挨拶は北欧で済ませたが、今は気分がいいから名乗ってやる。我が名はカイニス!神霊カイニス!このクソッタレな海を裂き割る稲妻、キリシュタリア・ヴォーダイムのサーヴァントだ!」


神霊カイニス、テッサリアのラピテース族の王であり、元は女性だった。ポセイドンに強姦された際、その償いとして男性になること、および不死身の肉体になることを要求し、ポセイドンはそれに応じた。
結果、カイネウスと男性名に改めて、不死身の肉体で権勢を振るい、王の座を簒奪した。

見た目は女性の体をしているように見えるし、名乗りもカイニスと女性名詞で行ったが、それはサーヴァントとしてのものなのだろう。恐らく、「彼」の内面は男性としてある、もしくは、男性であろうとしている。

その死に際も女性であったことへの侮蔑を伴うものであったとされるため、カイニスにとっては、アシュヴァッターマンとは別の意味で怒りや憎悪が常に渦巻いている状態だろう。

そこに、ハッチが開いてホームズとダ・ヴィンチが現れた。カイニスは二人を見て顔をしかめる。


「あ?計算担当は引っ込んでろよ」

「生憎、神霊相手ともなればこちらも総力戦にならざるを得ないのでね」

「はっ、そうかよ。たかだか人の英霊の分際で戦いになると?神との格の違い、見せつけてやるよ!」


カイニスはそう言うなり、目に止まらぬ速さでその槍をホームズに振りかざした。ホームズはギリギリで避けたが、直後に繰り出された槍の柄による突きで甲板に叩き付けられる。


「ぐッ!!」

「ホームズ!」

「よそ見してんなよ、ガキ」


続けてカイニスはダ・ヴィンチの腹に思い切り蹴りを入れ、ダ・ヴィンチは呻いて吹き飛ばされた。同じく甲板に打ち付けられ、激しく咳き込んでいる。


「ホームズさん!ダ・ヴィンチちゃん!」


マシュは悲痛な叫びで呼びかけ、アーサーはすぐにカイニスに聖剣を叩き込む。姿を現している聖剣を槍で受け止めたカイニスは、その膂力にニヤリとする。


「ハッ、やっぱ騎士王はちげぇな、そう、こなくちゃ、なァ!」


しかし、カイニスが力で勝り、アーサーを吹き飛ばす。空中でバランスを崩したアーサーに、その槍から雷撃が放たれ直撃する。


「ぐぁッ…!」

「アーサー!」


アーサーはなんとか甲板に着地したが、雷撃が効いているのか、膝をついたまま立ち上がることができない。
おかしい、いくら神霊相手とはいえ、アーサーがたった一撃でここまで追い詰められることはあり得ない。


「っ、そうか、ポセイドンの権能…海上では不死身なのか」

「正解だ、相変わらずむかつく頭の切れ味だぜ。恨むならあのクソ海神を恨むんだな」


カイニスはそう言うと、槍を振って空を見上げる。げんなりとしてから、ため息をつく。


「…刻限だ。まったく、殺してやりたかったが、まぁ、手前の命と引き換えにするほどの楽しみでもねぇ。じゃあな、カルデア。せめて、痛みがない、という慈悲くらいはくれてやろう」


そして、カイニスはその言葉を残して呆気なく撤退した。もう、カルデアの終わりを確定しているような言葉だ。しかも、自分も巻き込まれることを懸念するほどの攻撃によってカルデアが滅ぶことを示唆している。


「…戻るぞ立香、何か特殊な攻撃をするつもりかもしれない」

「そうだね」


立香はホームズに、マシュはダ・ヴィンチに肩を貸してやりながらハッチから中に入る。唯斗とアーサーも続いて艦内に戻ると、全員の帰還を確認したネモがノーチラスを再び潜水させた。


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