神代巨神海洋アトランティスI−4
操縦室に戻ると、慌ただしくネモ・マリーンたちが動き回っていた。
「ソナー感知!多数の何かがこっちに向かって投下されてる!」
「90ノット?!ぶつかってくるぞ!分析結果はラミア!」
ムニエルも時速167キロで接近するラミアを感知して、慌てて防御壁を確認する。ダ・ヴィンチもすぐ演算室に戻り、ホームズも操縦席に着く。ネモはすぐに指示を出した。
「回避する!総員何かに掴まって!」
急いでゴルドルフや立香は、手すりに掴まって衝撃に備える。アーサーは唯斗を抱き締めて壁に掴まった。
直後、ノーチラスは大きく旋回して高速接近するラミアを避けようと動いた。大きく重力がかかり体勢を維持できず、さらにとてつもない衝撃がノーチラス全体に走って揺れ動いた。
船体が軋む音と金属が断裂する鈍い音が響き渡る。
「大変!第二区画大破!浸水し始めてるよ〜!」
「ハッチをこじ開けようとしてる〜!」
「前方に船影50隻以上!突破できないよ〜!」
マリーンたちは次々に悪い知らせを緩い口調で知らせる。その口調とは裏腹に、状況は最悪だった。
ネモは表情を固くしながら、相次いで指示を出す。
「第二区画封鎖!ハッチ付近の個体を振り払う、全速前進!」
「全速前進!」
マリーンとムニエルはネモの指示通り、ノーチラスを一気に加速させて直進させる。さらに轟音が響き、重力が思い切り後方へとかかり、立っていられないほどの揺れでスタッフたちは床に座り込んだ。
アーサーは唯斗を抱き締めたまま姿勢を低くして床にしゃがむ。
「ひぃっ、怖い、怖い…!」
ゴルドルフの情けない声がするが、いつものそれではなく、明確に死への恐怖を感じ取っていた。
だが、これがカイニスが撤退することを選んだ攻撃なわけがない。あくまで、準備段階だろう。ネモたちは状況を一つ一つ解消することに精一杯のため、そこまで思考を巡らせきれていない。
敵の狙いはいったい何なのか。カイニスが主砲だったのなら、敵艦隊で囲んで撤退できない状態で戦闘を継続させたはず。敵艦隊からの砲撃を行うのは考えにくい、潜水艦への攻撃方法としてはザルすぎる。
エキドナによる怪物の大量投入、これもあり得るが、カイニスがわざわざ撤退する理由としては考えにくい。
カイニスは言っていた、せめて痛みがないことが慈悲だと。ならば、一瞬、かつ高威力の攻撃だろう。
ここがギリシア神話の世界なのだとすれば、間違いなく、神の権能による大規模な攻撃が考えられる。
「ダ・ヴィンチ!艦隊を突破できないなら虚数潜航するべきだ!カイニスがわざわざ撤退するほどの高威力攻撃が考えられる!」
「無理だ!今のノーチラスの状態で虚数潜航をすれば、虚数空間でバラバラになる!それほど外装の理論障壁は破損しているんだ!」
「…いや!ダ・ヴィンチ、我々は虚数潜航しかない、準備を!」
ダ・ヴィンチは危険すぎるとして唯斗の提案を否定したが、ホームズは逆にそれしかないと決意した。ダ・ヴィンチは葛藤を浮かべたあと、すぐに準備に取りかかる。
「一か八かの賭けだ、私は電算室に籠もる!」
電算室の扉を完全に閉めてボーダーの演算装置と同化したダ・ヴィンチと、作業をすべて止めて虚数潜航の準備に着手したホームズによって、とりあえずはこの場を切り抜けて虚数空間に退避することを優先することになる。
その間にもノーチラスは揺れ続けている。
さらに、マリーンが涙目で報告した。
「ソナーに感あり!先ほどと同一反応だよ〜!」
「船長!纏わり付かれてるぞ!」
ムニエルは外をモニターして、ラミアの蛇がノーチラスに巻き付いていることを確認する。船全体が軋む音を立て、動きが止まる。
ラミアによってノーチラスは完全に場所を固定されていた。敵は、カルデアが虚数潜航できることを理解している。その上でこうしたということは、恐らく、照準を合わせるためだろう。