神代巨神海洋アトランティスI−5
「上か…!マリーン、超望遠レンズどれだ!?」
「ここだよ!」
マリーンの一人に場所を示された、天井から伸びる双眼鏡のようなものを唯斗はすぐに覗く。操作は勘でなんとかなり、高度を上げていく。
直後、ダ・ヴィンチやネモ、アーサーがぴくりと動いた。
「………あ、」
「っ!!」
「マスター!何か見えるかい!?」
アーサーですら声を荒げて確認するほどの何かを感じ取ったらしい。そして、唯斗もすぐにその正体にピントを合わせた。
愕然として動きを止めそうになったが、すぐにスクリーンに投影する。
「……衛星軌道上、高度500キロ地点に、超高魔力反応…」
「え…これ、宇宙船……?」
立香の声も震えている。スクリーンに映し出されたものを、唯斗もレンズから目を離して直視する。
ゴルドルフは唖然としてそれを見上げていた。
「…なんだこれは…なんなのだこれは……!!ここは異聞帯、行き詰まりの人類史のはずだろう!?なのに、なんだあの、科学技術の粋を凝らしたような宇宙船は!」
「シオンと通信が繋がれば解析してもらえただろうけど…ぱっと見、私たちの技術より進んでる…?」
「…違う、あれは、人類が作り出したものじゃない。最初から在ったものだ。歴史の末に到達した技術じゃない、人類史の前から、存在していた…そういうレベルのものだろ、あれは」
ノーチラスの直上500キロメートル上空に浮かんでいるそれは、宇宙船のようなものだった。翼の生えた動物めいた造形に見えなくもない。
大気の厚みがおよそ400キロメートル、つまりあれは宇宙空間に浮かんでいるものだ。衛星軌道兵器、それそのものは現代の技術でも作れないことはないが、この縮尺はそんな次元のものではないだろう。あの質量を地表から宇宙に送り出すことがまず不可能である。
さらに、その宇宙船の下部、突き出した先端部に、莫大な魔力が集積し始めた。ネモはそれを見るなり、鋭い声で指示を出す。
「プロフェッサー!高度防衛術式展開!!並行して虚数潜航!!」
『了解。結界術式第一から第六十、空間歪曲術式、最大深度まで稼働』
ネモはノーチラス全体に最大レベルの防御術式を展開させるが、あんなレベルのもの、カルデアは想定していなかった。あれは、防げるようなものではない。
直感で理解したのか、立香は震える声で呟いた。
「…殺される……」
その次の瞬間、スクリーンにて、宇宙船からレーザー砲が射出されたのが確認できた。すぐにスクリーンは砂嵐となる。あまりの魔力量に、望遠レンズが観測できなくなったのだ。
それはすぐに上空から圧力となって海の中にも迫ってくる。あの威力だ、恐らくフランスの国土の半分を一撃で蒸発させることが可能だろう。
思わず、唯斗はアーサーのところに無意識に戻っていた。アーサーも唯斗を抱き締める。
直後、光は一瞬でノーチラスに到達した。周辺の数億立方メートルの海水は瞬きの間に蒸発し、ノーチラスは外気に触れることもできないまま、光線の中に晒される。
眩い光が窓から入り、あまりの轟音に鼓膜が破れたのではないと思うほど何も聞こえなくなる。激しい揺れの中、アナウンスでプロフェッサーの冷静な声が聞こえてきた。
『結界術式第一から第六十まで破壊されました。空間歪曲術式、すでに98%まで浸食、術式、保ちません』
「虚数潜航開始!!」
「キャプテン、この状態でそれは…!!」
ホームズが諫める声も聞こえないまま、ボーダーは虚数潜航を開始する。体から感覚が消えていき、精神だけが連れて行かれるような独特の感覚が始まる。
ここで、すべて終わった。そう判断するには十分だった。唯斗はアーサーの腕の中で終わりを迎えられたことだけが幸運だと思え、ゆっくり目を閉じた。