神代巨神海洋アトランティスI−8


無事に集落とやらに到着し、カルデアのメンバーとも合流、さらに翌日には立香と合流したことで、この異聞帯についてある程度の理解ができた。

まず、このヘスティア島に暮らしている人々は、最年長で200年近く生きているという極めて寿命の長い人間であり、その体の性能も汎人類史の人類とは比べものにならないほど頑強だ。
また、纏っている古代風の衣服も、意匠こそ古代ギリシアのものだが、材質はナイフでもっても裁断できない非常に頑丈なものであり、身体機能にしても所持している技術にしても、その生活様式のわりに汎人類史よりも遥かに未来のものだった。

唯斗としては、ここまで個として完成されているのであれば、そもそもこうして集住する必要はなさそうだとも思うのだが、その辺りは今後の調査項目となるだろう。

一方カルデアの方だが、まずあの砲撃を生き残った理由は、ネモが寸前に虚数潜航を行ったことによる。
本来、ボーダーはあのまま虚数潜航していれば完全に破壊されていたが、同時に衛星軌道兵器からの攻撃でも消失していたはずだった。しかし、虚数潜航と光線の直撃が同じタイミングだったことが幸いして、虚数潜航による「実在性の消失」と、衛星軌道兵器による「ボーダーの破壊」が同時に発生したため、あの状況では保てなかった虚数空間での存在証明が可能となり、こうして実数域に戻ってくることができたのだという。

あまりに奇跡的な結果だが、その代償として、外殻であるノーチラスと同化していたネモの霊基は破損して昏睡状態に陥っている。
ボーダーは浜辺で迷彩によって隠されており、ムニエルたちスタッフが番をしているそうだ。

また、唯斗がバーソロミューに出会ったように、立香もシャルロット・コルデーとオリオンと合流していた。
コルデーはフランス革命期に国民公会政府の重鎮を暗殺した少女であり、アサシンクラスとして現界している。立香と合流して森を彷徨っていたところ、超人オリオンと出会ったのだそうだ。
オリオンは、カルデアにいたアルテミスと熊の人形の霊基ではなく、オリオン本人であったようだが、立香を集落に送り届けてからどこかに消えてしまったため、唯斗たちはその姿を見ていない。

さらに、そもそもあの衛星軌道兵器がアルテミスなのだという。どう見ても宇宙船にしか見えなかったが、もしかすると、ギリシア神話そのものがこれまでの常識とはまったく違うのかもしれない。

そして、こうした汎人類史の英霊たちは、本当はもっと多くいたという。この大西洋異聞帯の大きさと汎人類史への脅威から、カウンターで召喚された英霊の数も極めて多かったようだが、そのほとんどが熾烈な戦いの末に散っていった。
その中の何人かは先にオリュンポスへと到達し、カルデアの橋頭堡を築こうとしてくれている。

同時に、大西洋に到達したカルデアをサポートするために、バーソロミューなどの何人かの英霊が残された。
残された英霊たちの多くは記憶を改竄されており、オリュンポス防衛軍側に情報が漏洩しないようにしている。

そのオリュンポスというものについては、海の真ん中に聳え立つ空想樹の直上に浮かんでいる「星間都市山脈」なる空中都市を意味するそうで、オリュンポスに到達するためには、オデュッセウス率いる大艦隊、衛星軌道兵器アルテミスからの攻撃、そして決められた海流でしか到達できない空想樹のあるビッグホールという海の穴付近にいる海神ポセイドン、これらをくぐり抜けていかなければならない。

あまりに果てしない道のりに気が遠くなるが、この異聞帯を巡る旅はいつもそうだった。まずは目の前のことから着実に成していくほかない。

そのため、一同はまず、ネモを回復させるために「神殿」とやらに向かうことになった。


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