神代巨神海洋アトランティスI−12


マンドリカルドがいわゆる陰キャと呼ばれる類いなのはすぐに分かった。自分も同じだからだ。そういう意味では、立香と話すマンドリカルドの姿は若干唯斗にも通ずるところがあった。


「え…あんまそうは見えなかったっすけど」

「そりゃ、カルデアのメンバーとは長いからな。今だって、中世のタタール諸民族の文化的背景を聞くっていう話題が最初からあるから声をかけられた。そういうのがなかったら絶対無理だ。当たり障りない話題とか分からないし、相手の反応が読めないと不安だし、そもそも俺の返答や話題の振り方が適切かも自信ないし」

「うわ、めっちゃ分かる…」


マンドリカルドは顔を輝かせる。完全に同類を見つけたことに喜びを感じているようだった。

そうして、マンドリカルドが話に応じてくれることになったため、唯斗は通路の壁に寄り掛かり、マンドリカルドから東方異民族の慣習などを聞いて感心しきりだったが、ある程度会話が進んだところで、ふと、唯斗は先ほどマンドリカルドと立香が二人きりで話していたことを思い出す。


「そういや、話変わるけど。立香と二人で何話してたんだ?ここに来る途中、二人だっただろ。ほら、立香が話題振ったんだったらもっと会話弾んでただろうし」

「あぁ…大したこと話してねぇっすよ。オリュンポスに向かった奴らとこの島にいたときも、俺は一番後ろで一人でいたんで、同じだなって。あとは、そうっすね…どうやって倒せばいいのかな、っつか、倒せんのかなって。サーヴァントなのにそんな弱気なこと言っちまって」

「……そう、なのか」


意外な言葉に唯斗は驚くのと同時に、なんだかハッとしたような気分になった。
どうやらマンドリカルドは、立香と二人で話しながら歩いているとき、世間話のように、この異聞帯を統べる者たちを倒せるのか不安視する言葉を発したらしい。立香もそれに同意しつつ、それでもやれることはやりたい、と答えたそうだ。

一見すればなんでもない会話だ。だが、マンドリカルドが自分で言ったとおり、普通のサーヴァントならそんなことは言わない。英傑たちの言葉ではないだろう。
スタッフたちも、マシュや唯斗もそれは口にしない。誰もが心に隠している不安であり、それをいたずらに表に出すことを良しとしないからだ。

しかし、立香にとって、それを誰かと共有することは、新鮮だったのではないだろうか。いつも励ます側である立香が、誰かと一緒に不安を共有する、というのは、恐らく誰もやったことがなかった。
唯斗と立香の間でそれをやることは、互いの士気に影響してしまうことを、恐らく二人は無意識に理解していたのだろう。意図的に、そういう会話を避けていた。
一度だけ、立香の部屋で立香の不安を吐露されたときくらいだ。

何気なく不安を共有すること、それは、実はそう簡単なことではないのかもしれない。


「…なるほどな。マンドリカルドが残った意味、なんとなく分かったかも」

「え、なんすか」

「うーん…や、これは言わない方が良さそうだ。立香のこと、よろしくな。ちゃんと守ってやってくれ」

「それは言われなくてもそのつもりっすけど…なんか同じ陰キャなのに、そっちのが理解してるみたいなの、ずるくねぇっすか」

「ふは、なんだそれ」


唯斗は小さく笑ってから、マンドリカルドをアトランティスに残すと決めた英霊たちに思いを馳せる。きっと彼らは、単純な戦力だけではなく、この絶望的な状況を共に乗り切る誰かを残そうとしたのだろう。それが、マンドリカルドの役割なのかもしれない。


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