神代巨神海洋アトランティスI−14
「ドレイクさん、ただいま戻りました」
ドレイクの酒場に戻ると、ドレイクはなごやかに出迎える。
「あぁ、ちょうどよかった。あたしも店じまいしようとしていたところさね」
「酒場なのに夜はやってねぇんすね」
ドレイクは今日はもう閉店することにしたようで、酒場が昼で終わることにマンドリカルドが首をかしげる。ドレイクは苦笑する。
「ここの住民は酔っ払う必要がないからねぇ。おかけで万年赤字さ」
「…、ドレイクさんはいつからここに?」
「さあ…そんなことも忘れちまったよ。あぁそうだ、そこのサーヴァントのくせして酔っ払ってるアホを起こしてやんな」
マシュの質問には適当にはぐらかしてから、ドレイクはテーブルに突っ伏すイアソンに目を向けた。マシュは釈然としていなかったものの、立香はイアソンを仲間に引き入れるためにも声をかける。
咳払いをしてから、いったいどこから出ているのかというような高い声を出す。
「起きてくださいイアソン様」
「っ!!な、なんだ、メディアか!?寝てない、私は寝てないぞ!!」
効果てきめんで、イアソンは飛び起きる。メディアではないことを確認したイアソンは、じとりを立香を見上げる。
「…なんだ、仲間になるという話ならもう…」
「北の神殿に言って防衛兵を倒してきたんですけど…」
「……は?」
ドレイクの勧めでのことだったが、イアソンはそれを聞いて目を見開く。
「っ、馬鹿野郎!!オデュッセウスの野郎が勘付かないとでも思ったのか!!」
「どうしてもテオス・クリロノミアが必要だったんすよ」
怒鳴るイアソンに、マンドリカルドが冷静に返す。イアソンのようなタイプは苦手そうなマンドリカルドだが、立香もいるため、はっきりと言い返している。
それに、オデュッセウスにこちらの行動を気づかれること自体は理解していた。
「その上テオス・クリロノミアまで奪ったのか!くそ、この島のヤツは汎用型だが現状を鑑みると、絶対にヤツは兵士を派遣してくるな!逃げるしかない、か」
「ははは、ちょうど言い頃合いじゃないか。そろそろ船出の時じゃないかい、アルゴー号のキャプテンさん?」
「ドレイク!お前の入れ知恵だな!」
「大正解♡」
かわいらしく言ったドレイクにイアソンは呆れる。やはり唯斗が予想していた通り、オデュッセウスから逃げるという外圧でもってイアソンをなし崩しに仲間に引き入れるという流れをドレイクは想定していたようだ。
「大体お前はどうする!?間違いなく巻き込まれるぞ!死ぬつもりじゃないだろうな」
「まさか!あたしは島のどこかに適当に隠れるとするよ。オデュッセウスも、あたしのことは重視しないさ。島から出られない、戦闘もできないサーヴァントだからね」
ポセイドンの呪いによって、海に出ることはおろか戦闘にも出られない状態のドレイクは、この島に留まるほかない。
マシュはその事実に表情を暗くするが、そこに、屋外から怒鳴り声が聞こえてきた。住民同士が言い争うようなものだ。
何事かと表に出てみると、村の住民たちを前に、筋骨隆々の熊のような大男が立っていて、大声で語って聞かせていた。
「だから!よく聞いてくれ!この島はこれからアルテミスの砲に狙われる!今すぐ船で別の島に逃げてくれ!」
「ッ、」
唯斗はその言葉に息を飲んだ。さすがにそんなことをするはずがない、と想定から外していた展開だったからだ。
立香は男と面識があるようで、慌てて駆け寄る。
「オリオン!」
「あれが…」
どうやらあれはオリオンの真の姿らしい。立香とコルデーをヘスティア島で助けてくれた人物だ。
「それ本当!?」
「ああ!アルテミスは、この島にいるあんたたちを狙って砲撃するつもりだ!」
「彼の言っていることは正しいです。すでに本体がその準備を進めています」
そこに、さらに別の声が響く。白い肢体を晒す優雅な立ち姿、アルテミスだ。しかし、その目元には瞳はなく、機械の瞳が一つ埋め込まれていた。
「あなたは…っ、」
愕然とする立香に、アルテミスは淡々と答える。
「我が名はアルテミス。このギリシャの空と星を支配するもの。厳密には、ただの端末です」
「へ、平伏!平伏しなければ!」
あの衛星軌道上の宇宙船の姿ではなく、人間体を取って端末としてこの地に立っているようだ。敵意がないのは、端末であるために思考演算が切り離されているからか。
住民たちは慌てて地面に平伏する。
アルテミスはそれを見渡すと、再び口を開く。
「もう一度お伝えします。我が砲は、この島に狙いを定めています。別の島に逃げるしか助かる術はありません」
「逃げるですって!?とんでもありません!神がついに我々のことを気にかけてくださったのです!死など恐れる必要が、どこにありましょう!」