神代巨神海洋アトランティスII−4


『あはは、イタリアってバチカンがあるのに、神よりお母さん呼ぶんだ、なんかいいね』

『こらこら、聞き捨てならないぞ〜?イタリア語だってoh, mio dioってちゃんと言うんだから。まぁ、本気でやばいときだけどね、神に頼るの』


ダ・ヴィンチからフォローになっていないフォローが入る。

このように、ギリシア神話の神の名前には、明確にインド・イラン共通時代からの影響が見られ、それはそのままインド・ヨーロッパ語族として語根に残り、欧州の様々な言語で単語の語源となっている。


「インド異聞帯でも見たように、冥界の神ヤマは東では閻魔に、北欧ではユミルに変化する。分かりやすいのは太陽だな。古代インド・イランの「セフェル」から、ギリシアではヘリオス、ローマでソル、フランス語でソレイユ、イタリア語でソーレ。英語では太陽光発電のソーラーになる。北欧神話ではスルトがそうだし、インド神話でもスーリヤがそうだ。時代が下って発音が変わると、トルコではスレイ、インドから東南アジアにかけてはスリ、シュリー。オスマン帝国の皇帝スレイマンや、東南アジアのシュリーヴィジャヤ王国、現代ではスリランカでもその単語の名残が見られる」

『うわ、確かに言われてみれば!すっご…古代の話でしょ?ユーラシアってすごい…』

「だろ?これが古代ユーラシア大陸の文明の繋がりを示す興味深い事例だ。こういうのがあるから歴史やめられねぇんだよな」

『そんな中毒者みたいな…ソルとかって日本には伝わってないの?』

「太陽を意味する漢字『日』は象形文字だからな、インド方面から言葉が入ってくる前に、先に古代中国で単語が生まれていた。日本でも独自の発音が古代に存在していて、中国から漢字『日』を輸入してからそこに当てはめた。発音の種類がやたら多いのはそのせいだな。『陽』は丘から日が上る様子を示した文字だし、太陽関係はインドからの輸入をする必要がなかったんだ」


日本語において、「三月二十日の日曜日は祝日で晴れの日でした」という例文は5回「日」という漢字を使うが、すべて発音が異なる。中国ではjiやniと発音する漢字であり、ジツとニチが輸入した当時の発音、すなわち音読みである。それ以外は元から日本列島に古くから存在していた表現を当てはめた訓読みだ。

東アジアでは中国という偉大なる文明によって独自路線が強めだが、スカンジナビア半島からマレー半島まで、ユーラシアは広く一つの文化的つながりを元来有している。
それはちょうど真ん中にインドとイランという古代文明が栄えたからで、そこから大陸中に言葉とともに信仰の形や神の姿が伝わっていった。

古い神格は、やがて大陸各地の文明がそれぞれに栄えるようになると姿を変えていき、ある者はより高位の神性になっていき、ある者は零落していくのである。


「ボスフォラス・ダーダネルス海峡を挟んでアナトリアとギリシアってのは、そうしたインド・メソポタミアからの文化と、欧州の文化とが接する場所であり、欧州世界に伝わる価値観を体系化する場所だった。要は、東から入ってくる価値観がギリシアで濾過された形だな。もちろん、ギリシアを経由せず、中央アジアからロシアを通って東欧・北欧にダイレクトに入ったものもある。ユミルがそうだ、ギリシアにはヤマ・閻魔・ユミルにあたる神性がいない。恐らく、メソポタミアやアナトリアに入っていく前に信仰が薄れ、遊牧民を通して中央アジアのステップ地帯からロシアの草原の道を通って北欧に入っていったんだろう」


そして、こうした神格の伝播と独自の進展こそが、ギリシア神話の機序を決定づけていく。


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