神代巨神海洋アトランティスII−6
『なんかもうすでに登場人物がお腹いっぱいなんだけど…』
「簡単に言えば、陸と空、海と山、闇と光、昼と夜、そういう基本的な自然のありようを神としたものと、眠りや夢、性愛、死、寿命、運命といった生命に等しく与えられた概念が神になったもの、そうした世界そのものが初期に体系化されたってことだな」
『OK、理解した。ガイアが自分だけで産んだウラノスと親子婚して、最初のごたごたが起こるんだよね』
ガイアが単体生殖で産んだ子のうち、天の神であったウラノスがギリシア世界最初の神の王となる。
ウラノスは英語rainと同じ語源を持ち、雨を降らす者として天の神を司った。
「そう。ここら辺からは有名な話になってくるな。ウラノスとガイアの間に生まれた子供たち、サイクロプスやヘカトンケイルはあまりに醜く、ウラノスはこれをタルタロスに幽閉した。悲しんだガイアは末息子クロノスを唆し、ウラノスを去勢し、神々の王としての座を奪った」
このクロノスは農耕神であり、時の神クロノスとは綴りが異なる。また、時の神クロノスはそもそも通常のギリシア神話には登場しない。
「クロノスは王権を簒奪し、兄と姉とともにティターン神族としてギリシア世界を統べるようになる。姉であり妻であるレアのほか、海の神オケアノス、その妻であり姉の一人でもあるテテュスなんかがいるな。だけど、クロノスはウラノスから同じように子供に王権を奪われると予言を受けて、それを恐れるようになる」
レア、オケアノス、テテュスはいずれも兄・姉であり、オケアノスとテテュスの間に生まれた子は3000の河川神と水の妖精とされ、その中には、ゼウスの最初の妻であるメティスや、イーリアスにおいてアフロディーテの母親とされるディオーネがいる。
また、同じく兄のヒュペリオンはHyperと同じ語源の神であり、「高み」を意味することから、その子には暁の神エオス、月の神セレーネ、太陽の神ヘリオスがいる。エオスは英語では日の出を意味するdawnの中のawに残る。セレーネは特に満月の女神であり、新月はアルテミス、欠けた月はヘカテであるともされる。
ヒュペリオンの弟にはイアペトスがおり、この息子には、空を支えるアフリカの山脈の由来となったアトラス、人類に火を授けたプロメテウス、そしてプロメテウスによって人類が神より賢くなることを恐れ、ゼウスが厄災の匣パンドラを嫁がせた愚鈍なるエピメテウスがいる。
「クロノスとレアの間には、上から順にヘスティア、デメテル、ヘラの姉妹と、ハデス、ポセイドンが生まれるも、予言を恐れたクロノスは全員を生まれるたびに飲み込んでしまう。悲しんだレアは、末息子ゼウスをクレタ島で生み落とし、ゼウスを隠して石を持ち帰り、それをゼウスと偽ってクロノスに飲み込ませた。その後、ゼウスが成人してから、レアはオケアノスとテテュスの娘メティスの薬によってクロノスから子供たちを吐き出させる」
『あ、そこでもうメティスが出てくるんだ。でもオケアノスとテテュスはティターンだよね?』
「オケアノスはもともと策謀を嫌うから、ゼウスとの戦いには加わらなかったし、テテュスはオケアノスと喧嘩して別居してたとされる。二人とも、ゼウスが王権を取ってからは表舞台には出てこないけど、オケアノスは世界を閉じる外洋として、テテュスはヘラの乳母として名前を知られることになるな」
『そうなんだ。でも、残りの多くのティターン神族は、ティタノマキアでタルタロスに幽閉されちゃうんだよね』
立香はさすがに基本的なことは勉強済みであり、その後の流れも理解している。
クロノスからヘスティアたち姉妹やハデス、ポセイドンを吐き出させたゼウスは、怒ったクロノス率いるティターン神族との間でティタノマキアという大戦争を繰り広げる。
「そうだな。ティタノマキアは10年膠着したけど、そこで祖母ガイアの助言を受けてゼウスたちは、サイクロプスやヘカトンケイルをタルタロスから解放することにした。ガイアはクロノスにウラノスを去勢させたときからずっと、息子たちをタルタロスから解き放つときを待っていたわけだ。そうしてタルタロスから助け出されたサイクロプスやヘカトンケイルから、ゼウスは雷霆の力を、ポセイドンは槍トライデントを、そしてハデスは姿を隠す兜を与えられ、それらをもってティターン神族を圧倒した」
地上も天上も地下も、そしてカオスまでをも焼き払い、ティタノマキアは終結する。敗北したティターン神族の多くはタルタロスに幽閉され、ゼウスたち12の神はくじ引きで担当する領域を定めた。
「こうして、ゼウスは天空を、ポセイドンは海洋を、ハデスは地底をそれぞれ支配することになる。ここからいよいよ、オリュンポス12神の時代が始まる」
『さっき言ってた通り、ゼウスの最初の妻は、ええっと、クロノスに子供たちを吐き出させる薬を提供した、オケアノスの娘、メティスだったっけ』
「そう。ただ、メティスの間に生まれる子は、男だったらゼウスを脅かすとされ、ゼウスはメティスが身ごもると同時に彼女を飲み込んだ。でもメティスの子はゼウスの頭に転移して、頭をヘファイストスに叩き割らせた結果、頭から成人して完全武装した女神アテナが生まれた」