神代巨神海洋アトランティスII−7
12の神のうち、5柱はクロノスとレアの間に生まれたゼウスたちが占める。
次に、クロノスの兄の一人コイオスの娘、つまり従姉にあたるレトとの間にアポロンとアルテミスを生む。なお、コイオスはティターン神族ではあるものの、恐らくこうした神々の系譜の辻褄合わせのために設定されたものと考えられ、特に逸話がない。
「コイオスの娘レト、そしてレトとゼウスの間に生まれたアポロンとアルテミスは、もともとアナトリアの古い神格だったと考えられてる。ギリシア文明の範囲がアナトリア西部に拡張されるにつれ、神の系譜に土着の神が吸収された結果だとされてるな」
『確かに、アポロンだけ名前ちょっと浮いてるもんね、あんまギリシアっぽくないっていうか』
「まぁそうだな。同じく、ゼウスがヘラとの間に産んだ軍神アレスはトラキアの神で、鍛冶神ヘファイストスはインドの火天アグニの影響を受けた神格だとされる」
火の神アグニはhngwniを語源としており、ここからヘファイストスの名や、英単語ignite(火をつける)などが派生する。
「ヘファイストスはヘラが生んだ最初の子だったけど、あまりに醜い奇形児だったことを理由に海に落とされ、アキレウスの母テティスに保護される。ヘファイストスはその恩義があったから、トロイア戦争に際してアキレウスに対して防具を提供してるんだ。その後もゼウスの頭を叩き割ってアテナを生み落とすのを手伝ったり、神々の武器を作ったりして、それで12神に組み込まれた」
『ハデスとアスクレピオスとかもだけど、そういうとこあるよね、ギリシアの親子って』
『まったくだ』
通信からは聞いていたらしいイアソンとオリオンの声が重なって聞こえてきた。
それに苦笑しつつ、残る神々を思い浮かべる。
「ゼウスは他に、アトラスの娘、つまり従兄の子だから従姪である女神マイアとの間に文化の神ヘルメスを、オケアノスの娘ディオーネとの間にアフロディーテを設ける。これで12柱だな。あと、テーベの王女セメレとの間に生まれたディオニュソスも、嫉妬にかられたヘラによって散々な目にあいながらもカルト教団を成立させ、その神格を認められたことで、ヘスティアが座を明け渡して12柱に加わった、とされることもある」
12神ではないが、ゼウスとヘラの間にはほかにも青春の神ヘーベや出産の女神エイレイテュイアがいる。ヘーベはhiegwehを語源とし、hが脱落して英語ではyouthとなる。
また、ティタノマキアを戦わなかったティターン神族の女神たちとの間に、芸術などを司る複数の子供をもたらした。
「オリュンポスの神々だけでなく、このころには大量のニンフたち精霊の姿もあった。ニンフは女性の精霊で、中にはキルケーのように神格に近い者もいた。あとは、やっぱ海の文明だから、海のニンフは女神に近い崇拝を受けることもあって、オケアノスから生まれたニンフの一人ピリュラーはクロノスとの間にケイローンを身ごもってる」
『つまり私が師事したケイローンはゼウスの従兄ということだ!』
なぜかそこでイアソンがドヤ顔であろう声で割り込んだ。ギリシア世界の知の巨匠であるケイローンは、神々の系譜ではゼウスの従兄にあたる人物。その門下生には、イアソンやアキレウス、ヘラクレス、アスクレピオスもいる。
『ケイローン先生そんなすごい人だったんだ…それで、確かティタノマキアのあと、ティターン神族がタルタロスに幽閉されたことに怒ったガイアがウラノスとの間にかつて生んでいたギガースたちを引き連れて、ギガントマキアが起こるんだよね』
またしても立香はここでようやくケイローンのすごさを実感したらしい。孔明とケイローンそれぞれから課題を出されてヒイヒイ言っていたが、それが途方もない出来事だとそろそろ理解してほしいものだ。孔明は依り代の人格による行為ではあるのだが。
「あぁ。ギガントマキアで神々は劣勢に立たされ、人間の力がなければ勝てないという予言に則り、ゼウスはミケーネの王女アルクメネとの間にヘラクレスを生んだ。試練を乗り越えた英雄ヘラクレスはギガースたちを次々と倒していった。シチリア島やヴェスヴィオ山が今の位置にあるのは、この戦争で神々が山や島を巨人に投げ飛ばしたからだとされる」
『すごいだろう!私のヘラクレスは!!』
『別にお前のじゃねーだろ』
またもイアソンがドヤ顔で言ったようだったが、オリオンが呆れたように返していた。