神代巨神海洋アトランティスII−11
そうして一同はデイモス島を離れ、再び海に出る。目指すはテティス島、そこにアキレウスがいるとヘファイストスが示した座標情報にはあった。
いつも通りアルゴーとロイヤル・フォーチュンに分乗して、西へと船は進む。
晴れ渡る青空の下、順調に航海が進んでいたが、そこに突然、ホームズの鋭い声が通信に入ってきた。
『諸君!急で悪いがすぐに戦闘態勢になるんだ!海上を猛烈なスピードで接近するサーヴァント反応…カイニスだ!』
「敵!迎撃するでござるか!?」
千代女はすぐに臨戦態勢になるが、空から嘲笑が落ちてくる。
「ザコが何匹集まろうが同じなんだよ!!」
「伏せろ千代女!」
オリオンは混紡を振りかぶり、千代女はすぐに身を伏せる。突如として甲板にカイニスが降り立った。その槍はオリオンが防いだが、オリオンは衝撃で木目の甲板を数メートル滑る。
「小細工した船でコソコソと俺の海を動き回りやがって。アルテミスの矢を生き延びたのは褒めてやる。だが、それだけだ。てめぇらと顔を合わせるのはここまでだ」
カイニスは悠然と槍を構えて立ち塞がる。偶然にも、今回は立香たちと唯斗、アーサーも同じくアルゴーに乗っていたため、総力で対峙している状態だ。
オリオンに加えて、イアソンもさすがに厳しい表情で剣を構えた。
「…カイニス」
「あ?サーヴァントが増えてやがると思ったら…確かにこりゃあ厄介かもな。負け犬を奮い立たせるってのは難しいもんだ。ここにはお前のヘラクレスはいねぇぞ?なにせ、アルテミスが全力で叩き潰したからな!」
どうやら、カイニスはヘラクレスが消失したときのことを知っているらしい。それを理由にイアソンが離脱したことも。
「しかしあいつも解せねぇよな。なんだっててめぇみたいなのを庇ったんだか」
「さあな、それは俺が知りたいってもんだ」
「もしかしてあれか?お前みたいな足手まといが嫌になったのかもな」
カイニスの嘲笑に、オリオンは殺気を高める。立香も睨み付けたが、一方のイアソンは飄々と微笑んでいた。
「そうだカイニス、俺からも一つ質問がある」
「あん?」
「神を忌み嫌ってるはずのてめぇが神の使いっ走りってのは、どんな気分かって思ってな。なんだ、お前ってばもしかしてマゾヒストか何かか?」
その一言で途端にカイニスは黙り、殺気を漲らせる。イアソンはなおも続けた。
「いやなに、性癖は人それぞれだ。だがそれを人に押しつけるのはやめた方がいい。普通はそんな恥辱、耐えきれないからな!」
「…いいだろう、てめぇは生きたまま殺してやる」
カイニスの瞳は紅に染まる。その魔力の漏出によって、船が軋んだ。怒りを露わにする様子を見てイアソンは溜飲を下げつつ、青筋を立てて剣を構えた。
「ヘラクレスを侮辱しやがって、いくぞお前たち!」
「どこにも行けねぇよ!てめぇらの航海はここで終わりだ!」
カイニスは目にも止まらぬ速さでイアソンに斬り掛かる。しかし、それより先にオリオンが初撃を防ぎ、続く攻撃をマンドリカルドが弾いた。だが二人とも、カイニスの槍の一振りで吹き飛ばされ、オリオンは床に、マンドリカルドは船の欄干に打ち付けられる。
アーサーはすかさずカイニスの槍にエクスカリバーをつばぜり合いさせ、カイニスの動きを止める。
「ハッ、またてめぇか、ブリテンの騎士王…!」
「今はマスターのサーヴァントだ。故に、君を野放図に戦わせるわけにはいかない」
「っるせぇ!!」
カイニスはアーサーに膂力で勝り、エクスカリバーを弾く。アーサーは離れた場所に着地したが、攻撃が通らないことに表情を険しくしていた。
それはイアソンも同じだったようだ。
「なんだ貴様その強さは!アルゴノーツのときはそこらの英雄と変わらん強さだっただろうが!」
「……」
カイニスは押し黙る。そうだ、カイニスも一説にはアルゴーの旅に同行していた。
そこでイアソンはひらめいたらしく、立香を振り返る。
「おい、あれ貸せ!ドレイクの!」
「っ、うん!」
立香はすぐに理解して、イアソンにポセイドンのコアを投げ渡した。受け取ったイアソンは走り出すと、隙を突いてカイニスを切りつける。カイニスは弾こうとしたが、防ぎきれず、僅かに切られた。
「なに…ッ!」
「やはりそうか!オリオン!」
「おう!!」
イアソンはコアをポセイドンに投げ、受け取ったオリオンは棍棒をカイニスに叩き付けた。カイニスは衝撃で階段の柵を粉々にしながら床に落下する。
「ぐッ…!」
「そうか、オリオンはポセイドンの子、コアと合わせればダメージが通るのか…!」
オリオンはポセイドンの子の一人ともされる。獣の類いが多いポセイドンの子にあって、人間の英霊として名を残した。それもあって、オリオンの打撃はカイニスを追い詰める。