神代巨神海洋アトランティスII−12
「アーサー!オリオンのフォローに入れ!」
「マシュ、マンドリカルドと千代女もお願い!」
すぐに唯斗と立香が指示を出すと、アーサー、マンドリカルド、千代女が次々と畳みかけていく。それを避けるカイニスに、オリオンがさらに大仰な攻撃を仕掛けるという形だ。
マシュがオリオンの姿を死角にするよう盾でカイニスの視界を塞ぎ、オリオンの打撲がカイニスを床に叩き付ける。
白い甲冑が血に染まり、明らかに骨が折れたのであろう鈍い音がここまで響いてくる。カイニスは血を吐いた。
オリオンたちが離れると、カイニスは槍に縋るように立って、血まみれになりながらこちらを睨み付ける。
「……くそ……目が見えねぇ…どうなってやがる…まさか、消えるのか…俺が…?汎人類史の終わりを見る前に、この俺が先に…?嫌だ、助けろ、誰か助けろ…!」
血を吐きながら言うカイニスに対して、イアソンは冷徹な目を向ける。
「助けなど来ない。今までお前が笑いながら殺してきた英霊たちと同じように消えていくんだよ」
「同じじゃねぇ…!俺が、てめぇらと、同じなものかァ!」
オリオンは弓を構えると、まっすぐカイニスの霊核に向ける。
「立香、トドメを刺すぞ。いいな」
しかしそこに、今度はまったく別の声が落ちてきた。凜とした、生まれながらの王者の声。圧倒的な覇者、他の人間と一線を画すもの。
「それは困る。彼にはまだ利用価値があるのだから。すまないが、ここで死に絶えてもらうのは君たちの方だ、カルデア」
「……は、」
呆然としたのは唯斗だけでなく、マシュもそうだった。
通信からは慌てたムニエルの声が聞こえてくる。
『藤丸たちの前方10メートルに時空振動確認!この反応、令呪だ!気をつけろ、マスターが来るぞ!』
その直後、甲板の前方、船の舳先の空中から突如としてオーロラが広がった。空を満たすオーロラとともに、薄暗くなって夜のようになる。
そして、夜とともに空中に泰然とした姿を見せたのは、ブロンドの髪をなびかせる青年。
「久しぶりだね、マシュ、唯斗。そしてはじめまして、私たちが退場した後に残されたマスター、藤丸立香。君たちの健闘には心から敬意を表す。私はキリシュタリア・ヴォーダイム、クリプターのリーダーでありこの大西洋異聞帯を任された者だ」
「あれが、キリシュタリア…!」
立香が息を飲む。アーサーはすぐに唯斗の正面に移動してきて、聖剣を構えてキリシュタリアを見上げる。
カルデアを睥睨するキリシュタリアは悠然と微笑んでいた。
言葉を発せないカルデアに代わり、イアソンが啖呵を切った。
「なにを見下ろしている!人を見下ろしていいのは、俺のように生まれながら王の気質を持った者だけだ!」
それに対して、まるで氷のような殺意と敵意に満ちた声が浴びせられた。
「黙れイアソン。貴様ごときが、キリシュタリア様に是非を問うな」
「ええ兄様。あまりにも見苦しい。神の祝福、アルゴー船を与えられながら失墜した無能の分際で、何を」
「お前たちは…ディオスクロイか!!」
イアソンは、キリシュタリアの背後から現れた金髪の兄妹を見て驚愕する。あれがディオスクロイ、イアソンがポルクスを妹だと明かした双子座の神。なら、男の方はカストロだろう。
「ディオスクロイ。カイニスを連れて離脱してくれ」
「…キリシュタリア様。我々に、この無能な女を助けろと言うのですか」
「ええ、ええ。お言葉ですが、我が兄同様、私も賛同しかねます。このような無能な犬のために、我らが血で汚れるなど…」
カストロ、ポルクスはカイニスを汚物を見るかのように見下ろしている。しかしキリシュタリアはそれでも命じた。
「だからこそだ。この意味が分かるね?」
その言葉に、二人は合点がいったのか、うっすらと微笑む。