神代巨神海洋アトランティスII−15
同じタイミングで、アーサーのエクスカリバーから莫大な魔力が解き放たれた。その光線は、直前にアーサーも気づいていた頭上から降り注ぐものへと向けられる。
それは大量の隕石、いや、隕石のような魔力の星弾である。キリシュタリアは宇宙の惑星配列を魔術回路に同期して、その天体の力そのものを魔力に変換して、こちらに向けていた。これがアニムスフィアの力だ。
ロードの家の深淵そのものであるキリシュタリアの攻撃によって、無数の隕石が辺りに降り注ぐ。海面に落下したものは激しい水しぶきを上げて水柱が立ち上がり、アルゴーのマストをへし折り、甲板を砕き、舳先を破砕し、そしてサーヴァントたちに直撃する。
エクスカリバーによる光線すらもくぐり抜けた燃えさかる隕石すらもあるほどで、アーサーは光線を放ったあとに直接剣戟で隕石を捌いていくが、それでも一つが直撃して吹き飛ばされた。
「ぐあッ!」
「アーサー!!」
「みんなっ、!!!」
立香の悲痛な声も響く。
マシュ、マンドリカルド、千代女、オリオン、イアソン、コルデー、全員が甲板に倒れ伏し、血を流していた。粉砕された木片とキリシュタリアの惑星轟の粒子が辺りに舞い上がる中、立っていたのはアーサーとマスター二人だけだった。
ボロボロになった甲板と、倒れる英霊たち。血まみれになってなんとか立っているアーサー。
呆然とするほかない唯斗と立香を、キリシュタリアは変わらずに見下ろしていた。
「あとは君たちだけだ。さすがに騎士王はまだ立っているようだが、もう数にカウントする必要はないだろう。サーヴァントを何騎潰そうと、マスターがいる限りカルデアは沈黙しない。逆に言えば、マスターさえ倒してしまえばいい。その命、ここで確実に消させてもらう」
「させ、るか…!」
キリシュタリアは再び魔術回路の接続を図る。アーサーはなんとか聖剣を彼に向けて、再び宝具を解放しようとしていた。連続で使用できるようなものではないそれを立て続けに放つには、アーサーの霊基は傷つき過ぎていた。
「っ、やめろアーサー!!消失するぞ!!!」
思わず唯斗は叫んでいた。しかし、アーサーはこちらを振り返って薄く笑う。
「唯斗、君を守るためなら命も惜しくはない」
「アーサー…ッ!!」
自分の身を犠牲にしてでも、アーサーは唯斗を守ろうとしていた。それほどまでに、もはや打つ手はなかった。
アルテミスのときと同じだ。ここでこの旅は終わる。そう思わせられるのは二度目であり、二度ともアトランティスの海に思ったことだった。
アーサーを止める手段もなければ、キリシュタリアに勝つ方法もない。ここで無様に死ぬほかない。そう思って体の力が抜けた、そのときだった。
「…退去せよ」
その一言とともに、空から降り注ごうとしていた隕石が忽然と消失していた。
甲板に立っているのは、濃赤のローブのフードを被った男。
「予定にない行動だ。これだから人生というものは」
「…それはこちらの台詞だ。あなたが、各異聞帯で人々をたすけていた正体不明の魔術師…『カルデアの者』か」
キリシュタリアの声音にも警戒が滲む。男の立ち姿に隙はなく、アーサーは目を丸くして男を見つめていた。
カルデアの者、北欧で集落を守ったり、インドで人々を病から救ったりしていた人物だ。謎に包まれ過ぎていてまったく議論すらしていなかった存在である。
「あなたの目的は異聞帯における人類の調査、そして査定だと理解していた。現カルデアを助ける理由はないはずだが?」
そうキリシュタリアが言った途端、一陣の風が吹いた。辺りに満ちていた水蒸気と粉塵をすべて吹き飛ばし、開けた海面とオーロラ満ちる夜の空が再び現れる。
同時に、男のマントも外れ、明るいオレンジ色の括られた髪がその風に靡いた。
「わ……いや。『おかしなことを言うんだねキリシュタリア。僕がカルデアを助けることに、理由なんて必要かい?』」
「……は、」
「え……?」
今度こそ、唯斗も立香も、マシュも、言葉を本当に失った。その声は、口調は、よく知るものだった。