神代巨神海洋アトランティスIII−1


アトランティスにやってきてから、2週間以上が経過した。

浮上してすぐにアルテミスの攻撃でノーチラスは大破し、続くヘラクレス島では島ごとアルテミスの砲撃が襲った。その矢を二度避けたカルデアだったが、キリシュタリアによって全滅しかけ、謎の男「カルデアの者」によって九死に一生を得る。

そうしてヘファイストスの助言通りテティス島に向かっていたところ、通信に割り込んできた女神アストライアに招かれ、アストライア島に立ち寄った。
アストライアはゼウスとテミスの娘とも、星の神アストライオスの娘とも言われる、ギリシア神話でも後期に登場する神だ。天秤と剣を象徴し、ローマではユースティティア、すなわちjusticeの神として知られる。なお、ラテン語ではjはyとして発音する。

汎人類史側の疑似サーヴァントとして現界した彼女は、オリュンポスの神の誘いを断ってアトランティスに残り、中立として留まっているそうだ。

唯斗はアーサーがまだ本調子ではなかったためボーダーに残ったが、立香たちは女神アストライアと三本勝負を行って勝利し、多くの情報を手に入れた。

まずはアストライアが残った経緯について、これは天秤がオリュンポスに傾きすぎることを理由に、均衡を保つことが目的だそうだ。
続いてアトランティスに残る汎人類史のサーヴァントについては、アキレウスの他にアーチャーが1騎残るのみ、他にもはや味方はおらず、20騎あまりの残存サーヴァントはほとんどが消されたらしい。メディアや坂田金時がオリュンポスに向かったというが、大半のサーヴァントはこの海で散っていったということだ。

そしてオデュッセウスについては、なぜか汎人類史の情報をやたら詳細に有しており、後から学んだという次元ではない、とのことだった。

最後に、アストライアはこの島に逗留していたアルターエゴ2騎の存在も告げた。異星の神の使徒であり、ラスプーチンと千子村正だという。
カルデア側は、てっきりラスプーチンとリンボ、コヤンスカヤのいずれかだと思っていたが、ここにきてまったく新しい村正というサーヴァントの存在が明らかになった形だ。かつて、立香が夢でレイシフトした下総国ではセイバーとして力を貸してくれていたと聞いている。

つまり、アルターエゴは4騎がいることになる。だが3騎が使徒であると聞いていることから、自然と明確に使徒ではないコヤンスカヤの立ち位置が謎になってしまう。

だがこの場にいない彼女のことを考えても仕方ないため、今はひとまず、ラスプーチンも村正もオリュンポスに帰ったと分かったことから、アルターエゴについては後回しになる。

また、テオス・クリロノミアのうち、アテナ・クリロノミアがまだ大西洋には残っているという情報も得られたため、それを入手することも目標に組み込まれた。

そうしてアストライアと別れ、ついに一同はテティス島に到着した。


「それにしてもアキレウスか…あいつ苦手なんだよな…」


上陸してすぐ、いよいよアキレウスと合流するとなったことで、イアソンはなぜか嫌そうにした。砂浜を内陸に向かって歩き始めつつ、イアソンは言葉を続ける。


「いや、生前に遭遇した訳じゃないが、とにかく伝説から考えて苦手だ。『イアソンくーん、パン買ってきてくんねー?』とか言いそうなタイプだ」

「まぁ…イメージだとそんな感じっすね。見たことないっすけど、無精髭生やしてゲハハハ!って笑いそう」


イアソンとマンドリカルドの勝手な批評に、思わず唯斗はむっとする。


「アキレウスはTHE英雄って感じのヤツだけど、そんなあくどい感じじゃない。俺が腹減ったって言ったら30秒でパン買ってきてくれると思う」

「それは唯斗だからだと思うけどなー…」


唯斗の反論を聞いた立香は苦笑する。アーサーも頷いていた。そこで唯斗が契約していることを思い出したのか、マンドリカルドはハッとする。


「そ、そういや唯斗、アキレウスと契約してるんすよね。しかもクラス、ライダーって…」

「?そうだけど。まぁ、ここではランサーで現界してる可能性もあるけどな」


なぜか顔を青ざめさせているマンドリカルドだったが、そこに通信でゴルドルフが声をかけてくる。


『雨宮、アキレウスは快く盾を提供してくれるのかね?』

「あー…ライダーだったら、たぶん。前にバレンタインでチョコ渡したら、お礼にっつってヘファイストスの盾渡そうとしてきたし。断ったら神馬クサントスを代替案で与えようとしてきたな。なんつか、カルナは価値を知った上でそれでも与えるから施しの英雄だけど、アキレウスは価値の尺度が元から普通の人間とずれてるんだよな」

『うわー英雄って感じ…ってそんなことがあったのかね!?つくづくお前は英霊を誑かすのが上手なマスターだな!』

「おい立香言われてるぞ」

「唯斗のことじゃん!」

「どっちもどっちだよ…」


心外だと唯斗が言えば、アーサーは呆れたように唯斗と立香にため息をついていた。


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