神代巨神海洋アトランティスIII−2
そうやって話しながら歩いていると、少し離れた位置から戦闘音が聞こえてきた。武器同士がぶつかる音であるため、サーヴァントの戦闘だと判断。アキレウスだろうと当たりをつけて、すぐに全員で走り出す。
すると、丘を下った先の草原で、アキレウスと誰かが戦闘しているのが見えた。相手はまだ幼く見える美少年で、頭に羊の人形のようなものを乗せている。
それを相手に、アキレウスが宝具を展開しようとしていた。
「うわ、宝具…!アキレウス!!」
唯斗は咄嗟に叫ぶ。サーヴァントなら聞こえているだろう。
アキレウスは唯斗の声を聞いて宝具の展開を止め、相手の少年もこちらに意識を向けた。
二人のところへ駆け寄ると、アキレウスは警戒したようにこちらを見渡した。
「何者だ」
「人理継続保障機関カルデアのマスターだ」
唯斗が代表して答えると、アキレウスは目をパチパチとさせる。
「カルデア…?てことは味方か?」
「アキレウスが汎人類史側の英霊ならそうなる」
「お前さん俺のこと知ってるんだな。いや待て、この感じ…」
訝しむようにアキレウスは唯斗を見つめ、上から下まで視線を動かす。品定めというより、確認だろう。
「なるほどな、お前さん、別の俺と契約してるわけだ」
「あぁ、ライダークラスで。さっきの宝具、戦車だったな。同じライダークラスで現界してるのか?」
「おう」
とりあえず見知った霊基であるようだ。もちろん、カルデアで契約している霊基とは別だ。
一方、対峙していた相手に目線を向ける。
「そっちは…」
「は、はい!汎人類史所属、トロイアの英雄…と呼ぶにはおこがましいですけど!真名パリスです!」
どうやら少年の方はパリス、トロイア王子でありヘクトールの弟、トロイア戦争の引き金となった英霊のようだ。なぜか羊飼いをやっていた子供時代で現界しているようだ。
そして二人が戦っていたのは、互いに異聞帯のサーヴァントだと思っていたからであるらしい。もともと因縁の仲というのもあるだろう。
「くそ、戦って損した!っていてて、チッ、傷に響くな…」
「傷…ってまさか、踵か?」
アキレウスが痛そうにしているのを見て、すぐに唯斗はその霊基に目を通す。個体としては別でも構造は同じであるため、唯斗にとっては慣れた作業だ。
そして、やはりアキレウスは踵を負傷しているようだった。
「あぁ。おかげで速度は7割減ってとこだな。致命傷じゃないが…」
「そうか…」
以前、第五特異点でアキレウスが踵を負傷した際は、掠めただけであったため治すことができた。しかし今回は直撃している。これでは、通常の魔術では治癒することができない。
「本来、アキレウスは神性があるヤツじゃないと傷すらつけられない不死性のある英霊だ。逆に言えば、神性あるヤツに踵を傷つけられると治せない」
「そうそう。おかげで殺すのに苦労したのなんの」
すると、パリスの頭に乗っている羊が唐突に喋った。見た目に反して低い声だ。
イアソンは顔を引き攣らせる。
「…おい、嫌な予感がするので一応聞くが、その羊はなんだ?」
「私の名はアポロン!空に浮かぶアルテミスの兄をしている神様さ!」
「……敵じゃん?」
「待ってください!アポロン様は違うんですー!!」
なんと、この羊はアポロンであるらしい。だがパリスと一緒に現界しているようで、すなわち汎人類史の神である。異聞帯と接続して情報をダウンロード済みであるらしく、オリュンポスの神に関する情報を閲覧できる状態だという。
「…え、じゃあなんだ。お前ら、汎人類史そっちのけでトロイア戦争の終幕部分を再現してたのか」
トロイア戦争末期、パリスはアポロンの力を借りてアキレウスの踵を射貫く。その後もアキレウスは一通り暴れてトロイアに大損害を与えてから果てることになった。
気まずそうにする二人をよそに、アポロンはまったく悪びれない。
「まぁ人とはそういうものだからね」
「うわ…てかカッサンドラってアポロンのせいで悲惨な最期迎えてるよな…?」