神代巨神海洋アトランティスIII−3
パリスの妹、カッサンドラはアポロンに愛され、予言能力を与えられる。しかしカッサンドラはその予言能力によってかえってアポロンの愛が冷めることを知ってしまい、アポロンを拒む。怒ったアポロンはカッサンドラの予言能力は誰にも信じられないという呪いをかけてしまい、パリスがヘレネを攫ったときも、木馬がトロイアに入城したときも、それが破滅をもたらすことを告げたときに信じてもらえなかった。
挙げ句、トロイア陥落に際してギリシア側のロクロイ王である小アイアスに陵辱され、アガメムノーンに戦利品としてミケーネに連れて行かれ、さらにアガメムノーンに復讐を試みていた妻クリュタイムネストラにアガメムノーン諸共殺害されてしまう。
なお、このときクリュタイムネストラが夫アガメムノーンに怒っていたのは、アガメムノーンがトロイアに出発する前に調子に乗ってアルテミスを怒らせてしまい港に足止めされてしまったとき、娘イピゲネイアを生け贄に捧げたからである。生け贄にする際、アガメムノーンはクリュタイムネストラとイピゲネイアを騙して、イピゲネイアをアキレウスに嫁がせると偽って呼び出し、そしてやってきたイピゲネイアを生け贄にしている。アキレウスはこの一件でアガメムノーンと険悪な仲になり、これはトロイア戦争におけるギリシア側の敗北の危機を招いた。
なお、クリュタイムネストラはディオスクロイの妹であり、パリスが攫ったヘレネの姉である。カストロの直接の妹がクリュタイムネストラ、ポルクスの直接の妹がヘレネだ。
「しょうがないだろう、美女と美少年は口説くものだ。君もギリギリいけるけれど、もう少し年齢が低いとなお良かったな」
ドン引きする唯斗は、思わずアキレウスの背中に隠れる。アキレウスはきょとんとするが、ふと唯斗は、カルデアのアキレウスが背中に背負っていた盾がないことに気づく。
「あれ…アキレウス、盾は顕現させてないんだな。霊基のキャパの問題か?」
「あぁ、その通りだ。鎧までなら出せると思うが。入り用か?鎧も盾も、ライダークラスじゃ使う予定ねぇけど」
どうやら、ここに現界しているアキレウスは、カルデアのアキレウスよりも霊基のキャパが一回り小さいようだ。きちんと正規の召喚プロセスで呼び出したのと違い、ここは汎人類史がカウンターとして断末魔のように呼び出した英霊たちばかり、確かに霊基はスケールが変わってくるのだろう。
「実は、アルテミスを撃ち落とすのに、ヘファイストスの鍛冶ユニットでアキレウスの鎧か盾を再鋳造できれば、って思ってたんだ」
「なるほどな…いやだが、仮にできたとしても、俺自身はこの状態じゃ衛星軌道まで飛べねぇぞ」
「だよな…」
そもそも踵を射貫かれた状態では、戦車で宇宙空間まで音速移動することはできない。これは話が振り出しに戻ってしまう。
どうしたものかと思っていると、オリオンが表情を明るくした。
「それなら、その鎧を弓矢にするってのはどうだ。そして、俺が撃ち落とす」
「……できると思うぜ、ヘファイストスなら。だがオリオン、それは正義のためか?」
アキレウスはじっとオリオンを見つめる。それに対して、オリオンは同じく目つきを真剣なものにした。
「いや、責任だ。これは、俺がやるべきことだ」
「…分かった、なら快く譲ろう」
二人の言葉は多くはない。それでも、互いにすべてを理解し合っているようだった。これが古代の戦士の会話、ということか。いや、軸の通った、まっすぐな人間同士のコミュニケーションと言ってもいいのだろう。
アキレウスとパリスはこちらに向き直る。
「つーことで改めて。我が名はアキレウス、遺憾ながら踵を射貫かれ不完全な状態だが…人理のため、この身を捧げると我が父母に誓おう」
「僕の名前はパリスです!一生懸命頑張ります!」
アストライアの話通りなら、この二人が最後の仲間ということになる。アキレウスは唯斗が、パリスは立香が契約して、いよいよヘファイストスの神殿があるペルセイス島へと向かうことになった。