神代巨神海洋アトランティスIII−9


ペルセイス島に上陸し、集落の住民に迷宮の場所を尋ねてから、いよいよラビュリントスに突入した。
アステリオスはいないと聞いているが、道中で多くの怪物を倒しながら迷宮内部を進んでいく。途中までは村人からの地図で、地図が途切れてからは、ヘファイストス・クリロノミアを摂取した千代女が先導して進んでいる。

数時間ほど歩きづめとなってもまだ通路は続いており、さすがに休憩を取ることになった。


「さあ、先輩は座ってください。敷物を用意します!」

「マッサージします!」

「あ、あー…じゃあ俺は見張りしてるっす」

「うん、ありがとう」


次々とマシュ、コルデー、マンドリカルドに言われ、立香は苦笑しながら礼を言ってマシュから敷物を受け取り、その上に腰掛けて壁に背中を預ける。
唯斗もさすがに疲労を感じているため、立香の向かいで同じく床に腰を下ろそうとした。


「マスターは僕のところにおいで」


そこに、アーサーは唯斗の肩を抱き寄せながらそう言った。じかに床に座ろうとしていたが、アーサーがそう言ってくれるのならとそれに応じることにする。

アーサーがまず座り、いつも通り、その足の間に唯斗も腰を下ろして、青い布を下敷きにしてアーサーの上体に寄り掛かる。
こうしてアーサーに抱き締められるのはいつものことだったが、見ていたアキレウスは面白そうにした。


「ほお〜、結構あからさまにイチャコラすんだなぁ」

「別にイチャついてるわけじゃない」

「そうかァ?」

「僕がマスターをこうして休ませるのは、新宿の亜種特異点からもう2年になるからね。これが当たり前なんだ」

「当たり前に躾したんだろ?」


アーサーに後ろから抱き締められながら会話を聞いていると、アキレウスがとんでもないことを言い出したため、否定しようとして、反論する余地がないことに気づく。


「…あれ、確かに…?」

「マスター?」

「や、ほら、新宿は場所が場所だったからってのがあるけど…なんか、この姿勢になる必要性って、逆に言えば新宿だけだったよなって…」

「じゃあやめるかい?」

「やめない」


アーサーはそんなことを聞いてきたが、唯斗は間髪を入れずに答えた。そして、アーサーの腕を掴んで前に持ってきて、よりしっかり抱き締められるような姿勢になる。


「安心するって意味で、大いに必要だからな」

「当然だろう?君を世界で一番慈しむ場所だからね」

「見せつけてくれやがって」


アキレウスは呆れたようにしているが、アキレウスから仕掛けてきたのだろうと正直思っている。
そこに、イアソンの悶絶する声にならない悲鳴が聞こえてきた。千代女に足つぼマッサージをされている。相当痛いようで、立香も少し引いたようにしていた。

それはそれとして、こうやって迷宮にいる光景は、本当に第三特異点のようだと感慨深くなる。


「なんかほんと、オケアノスを思い出すな。あのときはマシュと立香も手を繋ぐのすら顔赤くしてたのに」

「君も僕に撫でられる度に顔を赤くしていたけどね」

「うるせぇな」

「今回も手を繋ぐかい?」

「この大所帯で迷うわけないだろ」


第三特異点の迷宮で、アーサーに手を繋ぐかと聞かれ断ったところ、その直後に迷いかけて結局手を繋いだ記憶がある。
あの頃とは人数が違うし、こちらも経験が違う。本当に必要性がないだろう。

そう高を括っていた唯斗だったが、休憩を終えて歩き始めて10分後、敵を倒して残党を確認しようと曲がり角を間違えてはぐれかけ、アーサーに強制的に手を繋いで連行されることになる。


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