神代巨神海洋アトランティスIII−11


その後、通信は回復し、イアソンが誤魔化してくれたおかげでカルデアにも怪しまれずに、アルテミスとポセイドンの海流のことを伝えた。

ゴルドルフは、オデュッセウスを正面突破してアルテミスを撃ち落とすというとんでもない所業を強いられていることに不可能だと喚くが、再び通信はヘファイストスによって遮られる。


『警告、警告。侵入者。迎撃システム破損、神殿最奥までの推定到着時間…10秒』

「来るぞ!」


オリオンが鋭く叫んだ直後、廊下の入り口ごと壁が木っ端みじんに砕け散り、巨大な3つの頭が出現した。
犬のような頭、燃えさかる首、金属の頭を繋ぐ首輪。それを見て、オリオンは棍棒を構えて表情を険しくする。


「エキドナ…こんなものまで産み落とせるのか…!?」

「オリオン、あれはケルベロスだな」

「その通りだ唯斗。俺たちギリシャ英霊には見慣れた存在だよ」


やはり唯斗が推測していた通り、この特徴的な怪物はケルベロスで合っていたらしい。
アキレウスも槍を構えて唯斗の前に進み出る。


「マスター!あいつはヘファイストスを狙ってやがる、絶対に守り切るぞ!」

「ああ!アキレウス、アーサーは左の首から頼む!」

「オリオンと千代女は右側、マンドリカルドとイアソン、コルデー、マシュは真ん中!」


唯斗と立香は相次いでサーヴァントたちに指示を出す。開けた部屋とはいえ、ケルベロスが巨大なため空間は限られている。
今いるサーヴァントたちで戦わせることにしたが、戦力としては問題ないだろう。

アキレウスの槍が目玉を抉り、アーサーの剣が体表を削る。マンドリカルドの木刀とイアソンの剣、コルデーの短剣、さらに千代女のクナイにオリオンの棍棒で打撃、斬撃が繰り出されるが、なかなか傷がつかない。

すると、ヘファイストスが解析結果を告げた。


『解析完了。ケルベロス、デメテル・クリロノミアを適用』

「地母神デメテルのクリロノミアか…道理で固いわけだ…」


唯斗はデメテル・クリロノミアと聞いて納得する。確かに、それなら攻撃が通らないのも頷ける。


『デメテル、航行物資循環機能担当。あらゆる塵芥、不純物、廃棄物、死骸を処理。90%以上の再生達成。1000年分の物資で約4000年の超々長期航行を…』

「スペック説明どうも!今はそれどころじゃねぇがな!」


イアソンはのんきにデメテルの説明をするヘファイストスに呆れたようにする。
一方、唯斗はこれはいよいよ、ギリシア神話の神々が宇宙船そのものであるという事実を受け入れるほかないようだと察した。

もともと、島に神々の名がついており、さらにそれが宇宙船の残骸であるとプロフェッサーが指摘した時点でそう推測することはできていた。さらに、ヘファイストスから、ギリシア神話の神々というのはアトランティスにいた神であり、1万4000年前の「巨人」との戦争に敗れたことで現在のエーゲ海へと至り、オリュンポスの神話となったと聞いていた。
そこに加えて、ヘファイストスはデメテルを航行物資循環機能担当だと説明した。つまり、数千年の星間航行を行うための資源管理艦船であるということだ。

大地母神デメテル、motherの語源mehterから来ている名前であり、一文字目のdeは古代ギリシアにおいてearthを意味するGeから来ているとも、小麦を意味するdeaから来ているとも言われる。汎人類史ではそのことからも、大地の神であり豊穣の神でもある。

とはいえ、今はとにかくケルベロスを倒して、残る30分間、ヘファイストスを守り切ることだけに集中するべきだ。
そうやってしばらく戦っていると、突然、ヘファイストスは新たな警告を発した。


『デメテル・クリロノミアの暴走を確認。再生機能過剰活性、確認。魔力放出開始まで、残り10秒』

『逃げろ!オデュッセウスがクリロノミアを暴走させて神殿ごと爆破させる気だ!』


ホームズは通信から叫ぶが、今ここでヘファイストスと神造兵装を失えばもはや打つ手はない。
万事休すかと思われたそのとき、おもむろに、コルデーがケルベロスの前に立ちはだかった。

すでにケルベロスからは魔力が漏れ出しており、急速に熱を上げている。しかし、コルデーも左半身が金属化しているように見えた。あれはナノマシンだろうか。


「シャルロット…?」

「大丈夫です、マスター。あの魔獣は、私なら、大丈夫です」

「な、に、言って、」

「ゼウス・クリロノミア励起」


立香が動揺するのも気にとめず、コルデーは短剣だけを構える。そして、ゼウス・クリロノミアと言ったものを強制的に起動した。まさか、ゼウスのクリロノミアを入手していたというのだろうか。


故国に愛を、溺れるような夢を(ラ・レーヴ・アンソレイエ)


そして宝具を発動し、その短刀をケルベロスに一突きする。本来、人にしか効果がほとんど発揮されない暗殺宝具であるはずだったが、その一撃だけで、ケルベロスは瞬く間に崩壊していった。

沈黙が落ちる。それは、驚きと衝撃によるものだ。今まで戦闘で力を発揮するようなサーヴァントではなかったこと、さらに、ゼウスのクリロノミアを得ていたこと。
そして。


「思い出しました…私は汎人類史の英霊として召喚された…異聞帯側のサーヴァントです」


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