神代巨神海洋アトランティスIII−14
ペルセイス島は、ヘファイストスごとアルテミスが消滅させた。
またもギリギリで逃げおおせたところで、その足でエリス島に上陸する。
アテナ・クリロノミアを急いで回収するというのが目的であるため、人数を絞るべく、立香たちだけが向かう。一応、唯斗はアキレウスも立香につけて同行させた。
その判断が功を奏した。なんと、神殿でケイローンと会敵したのだ。
ケイローンは異聞帯側で生きてきた神霊であるようで、カウンターで召喚された異聞帯のケイローンを殺害して知識を獲得。アキレウスの踵を奇襲で射貫き、神殿でも立香を真っ先に殺そうとした。
アキレウスがいなければ立香は逃げ切れなかっただろう。
殿を務めたマンドリカルドは、ケイローンの宝具、空に浮かぶ射手座から直接射撃するというとんでもない攻撃を同じく宝具によって迎撃。なんとか逃げ延びたが、同じく殿だった千代女は致命傷を負い、助けることができなかった。
イアソンはそれを聞いて「乾坤一擲がある」と言ったが、詳しく語る前に、急いでアテナ・クリロノミアをコルデーに投与することになる。
医務室に集まり、ダ・ヴィンチ、マシュ、ネモ・ナースがベッドに横たわるコルデーの周りを取り囲む。その近くで、立香と唯斗も見守った。
「…始めるよ」
これからコルデーを襲うであろう壮絶な苦しみを理解しているダ・ヴィンチは、固い声音で告げると、アテナ・クリロノミアをコルデーに投与した。
その瞬間、コルデーは目を見開いて、断末魔のような悲鳴を上げる。
「…ッ!!イ、たい、痛い痛い痛いぃいいいッッ!!!やめ、やめて!!がッ、はっ、ああああああ!!!」
ベッドで暴れ出したコルデーに、マシュとナースは弾き飛ばされよろめく。慌てて立香と唯斗が二人を支えたが、そこにボキッという嫌な音が響く。コルデーの骨が折れたのだ。
同時に喀血し、鮮血で白いドレスが染まる。
「まずい!オリオン、マンドリカルド!」
見守っていたアキレウスは急いで駆け寄り、オリオンとマンドリカルドも加えて3人でコルデーを押さえつける。
暴れるコルデーはオリオンの太い腕を掴んだが、ブチッという音とともに肌が破け、血が滴る。オリオンの肌を引きちぎるほどの握力など、コルデーが持っていたわけがない。クリロノミアの力が暴走しているためだ。
「ど、どうすればいい!?」
立香は気が動転しないようにするのに精一杯だったが、オリオンは血を流しながら、それをまったく気にせず優しく立香に指示する。
「手を握ってやれ。あとはこいつがサーヴァントとしての意地を示すだけだ」
「大丈夫だ立香、俺が握力入らねぇよう、関節と筋を抑える」
マンドリカルドもコルデーの左腕を掴んで固定する。これでコルデーの手に握りつぶされることもない。
立香は頷いて、コルデーの手を握りしめた。
「もう、いや、痛いの嫌ぁああ!死にたい、死にたい…っ!!」
「死なないで、シャルロット!!」
必死に立香が呼びかける。堪らず、唯斗もコルデーの右手を掴んだ。右腕を押さえつけていたオリオンはアーサーと場所を代わり、ナースに肌を治療される。アーサーは関節を押さえて力が入らないようにしてくれているため、唯斗もコルデーの右手を握りしめることができた。
舌を噛まないよう、神性を持つ者にしか傷をつけられないアキレウスが手を口に差し込む。
「
大丈夫だ、コルデー」
「っ、っ…!」
口元に手を挟まれているため言葉にならないくぐもった声で、コルデーは涙を流しながら唯斗を見上げる。
「
心配しなくていい、全部うまくいく」
聞き慣れたフランス語だからか、コルデーは目を閉じて頷いた。その拍子に涙がこぼれ落ちる。
そしてコルデーはそのまま意識を失う。同じタイミングでヘファイストス・クリロノミアの抽出も完了したようだ。
立香は縋るように、コルデーの左手に額をつけていた。
立香の様子を見守っていたマンドリカルドは、その背中を優しく撫でる。