神代巨神海洋アトランティスIII−20


『オリオン!お前はもうそのまま突っ走ってネメシス島に行け!』

「いいのかイアソン!」

『千代女がやってくれやがった!魔獣たちが共食いを始めた今が好機!唯斗はオリオンの援護、パリスは戦車を交代しろ!』


イアソンが言うには、千代女はエキドナの魔力源として利用されており、それに賭けていたイアソンは、千代女に自分を呪ってエキドナと融合することを指示していた。千代女は自らを犠牲にして、エキドナを暴走させ、魔獣たちの支配権をオリュンポス側から奪い、手当たり次第攻撃する災害とさせた。

パリスはすぐに戦車から降りてきて、戦車も高度を下げる。立香たちはアルゴーから離れてロイヤル・フォーチュンの近くまで来ており、このままならバーソロミューに合流できるだろう。


「ガウェイン!長可!カルデアに退却!アーサーはこっち戻ってくれ!」


すぐに唯斗も指示を出すと、ガウェインと長可はカルデアに退却し、アーサーがすぐにこちらへ戻ってくる。
唯斗はアーサーとともに、パリスと入れ替わりにアキレウスの戦車に飛び乗る。


「バーソロミュー、立香を頼んだ」

「海賊として、この最後の航海を必ず成功させるとも」

「っ…ありがとう」


バーソロミューは、ネメシス島までの航路にすべての魔力を投じて船をコントロールし戦闘を続けるようだ。立香たちを島に送り届けて、そこで彼の霊基は果てるだろう。
礼を言った唯斗にニコリとしてから、バーソロミューは再び戦闘を開始した。


「クサントス、オリオンと併走頼む!」

「所有権は主と半々ですからね、快く引き受けましょう」

「……喋った!?!?」


唯斗が驚く暇もなく、戦車は勢いよく発進する。慌ててアーサーに抱き留められながら、なんとか日頃アキレウスがやっているように手綱を握る。
まさか、この戦車を自分で動かす日が来ようとは。

前方に水しぶきを上げて海面を走る大男を視認する。戦車が追いついたことを確認したボーダーは、今度はロイヤル・フォーチュンのフォローのためにオリオンの下から水中を移動した。


「アルジュナ!」

「アルジュナ、参りました」


今度はアルジュナ・オルタを召喚した唯斗は、オリオンに向かって水中からやってこようとする魔獣たちを示す。


「オリオンを援護する、上空から狙撃してくれ」

「了解しました。マスターの行く手を阻む悪は、すべて帰滅させるのみ」


アルジュナ・オルタは戦車の近くを浮遊しながら、同じスピードで滑空しつつ、怪物たちを正確に爆破して仕留めていく。
オリオンも迎撃しようとしたが、唯斗はそれを戦車から大声で制止する。


「オリオン構うな!とにかく全速力で走ってくれ!俺があんたを守り切る!」

「…ははっ、頼もしいなぁ!!」


快活に笑い、オリオンは海面を走ることに専念する。神の馬であるこの戦車と同じスピードで走るとは、まさに超人だ。
耳元で風を切る音を聞きながら、アルジュナ・オルタに指示を出して次々と怪物たちをオリオンから離して爆破していく。アーサーに支えられていなければ振り落とされているだろう。
手綱を握る手の平は擦りむけているだろうが、痛みは感じない。

そこに、水中からアルジュナ・オルタ目掛けてケルベロスが出現した。とてつもない速さであり、アルジュナ・オルタは回避が間に合わない。
唯斗はすぐに結界を複数重ねてアルジュナ・オルタの前に展開する。ケルベロスはそこに激突し、一瞬ですべての結界を破った。だが、その隙だけで十分だった。


帰滅を裁定せし廻剣(マハー・プララヤ)


概念宇宙で対象を裁定・剣によって帰滅させる宝具によって、ケルベロスは一刀両断され、次の瞬間には海上にバラバラになって浮かんでいた。


「感謝しますマスター。あなたを守るサーヴァントであるのに、守られてしまいました」

「一方的に守り守られるんじゃなくて、一緒に戦うもんだからな。気にしなくていい。今はとにかく迎撃、先制、爆破だ」

「…はい、マスター」


薄く微笑んでから、アルジュナ・オルタは再び攻撃を開始する。連続して水柱が立ち上がり、水中で爆発した衝撃波が泡となって海面を走る。
ネメシス島は目前に見えていた。


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