神代巨神海洋アトランティスIII−21
オリオンを護衛しながらついにネメシス島に上陸すると、狙撃を予定していた内陸の合流ポイントまで走る。あとは、立香たちの到着を待つだけだ。
アルジュナ・オルタはカルデアに戻り、アーサーと唯斗、オリオンだけとなる。
通信は、ロイヤル・フォーチュンが嵐に入ったことで途切れ途切れになったが、コルデーによってオデュッセウスが倒されたことまでは分かった。
どうやらコルデーは、アテナ・クリロノミアによって一度殺されてもオデュッセウスを倒すまでは行動できるようにしていたらしい。
油断したオデュッセウスを見事に仕留めて見せたコルデーだったが、その記憶は一度死んだことで失われていた。そして同時に、オデュッセウスを倒したことで活動は終了となり、消失する。
しかし、彼女は大切にしていた感情だけは失わないようにしていたらしい。これまで何度か、立香に好きだと言っては「尊敬できるマスターとして」「みんなも同じくらい好き」などの言葉を述べていたが、あれは誤魔化すためのものだったと、記憶も誰を好きだったのかも忘れたコルデーの口で明らかになる。
そして最後にコルデーは、その愛した人の傷になりたいというエゴを謝罪しながらも、涙ながらに叫んだ。
「これは、私の溺れるような初恋だったのです」と。
そうしてコルデーは消失し、残された立香はマンドリカルドに励まされながら、もう一踏ん張りの戦闘に戻る。
本当は今すぐにでも立香たちを迎えに行きたかったが、すでに戦車は消失しており、戻る手段はない。戦費の悪いアルジュナ・オルタをそのためだけに召喚するわけにもいかない。
ロイヤル・フォーチュンごと自爆しようとした防衛兵はイアソンがアルゴーを体当たりして守り、イアソンは爆発に巻き込まれ負傷。とはいえ生きてはいるようで、休むと言って戦闘からは離脱した。
パリス、マンドリカルド、マシュとともに戦っていたバーソロミューも、無事に沿岸まで船を到着させると、ロイヤル・フォーチュン号とともに退去していった。霊基はもう限界だったようだ。
「最後に希望を送り届けることができた」と、生前にはできなかった海賊としての最後の仕事を済ませて消えたあと、立香たちもようやく、唯斗たちのところに合流を完了した。
「よっ、生きているとは思ったが無事で何よりだ」
「アキレウス、良かった、動けたんだな」
「お前さんの令呪のおかげでバッチリな」
そこにアキレウスも戻ってきた。全身傷だらけだが、なんとかケイローンを押しとどめてきてくれた。
しかし、マスターとして、そのパスから伝わるもので状態は理解している。これで最後になるだろう。
「ちぇっ、生きてたのか」
「まぁな。だが、これで限界だ。離別の言葉でもくれてやろうと思って来たわけだ」
パリスの軽口にそう返してから、アキレウスはまず、オリオンに視線を向ける。オリオンも、戦士として状況は理解しているようで、盟友に向ける目つきをしていた。
「まだケイローンは死んでいない。だが、お前たちがやるべきことをこなすまで、絶対に通さない。だからオリオン、安心して女神を撃ち落とせ」
「ああ」
「それからパリス。まぁなんだ、お前の兄貴に生前したことは悪いと思ってるよ」
「…今更謝られたって」
「そうだな。だが、懸命に戦ってるお前さんを見ていたら言っておきたくなった」
アキレウスは続けてパリスにもそう述べた。パリスは様々な感情や言葉を押し殺して、一つ頷いた。
そして最後に、アキレウスは唯斗の前に立つ。ポン、と唯斗の頭に手を置いて、優しく微笑んだ。
「マスター。俺たちの歴史、お前さんに預ける。後は頼んだ」
「っ、あぁ。アキレウスも、任せたぞ」
「その期待、すべて背負い駆け抜けると誓おう。じゃあな」
あのアキレウスに、後は頼んだと言われたのだ。大英雄に託されたことに言葉を詰まらせそうになったが、なんとか言えば、アキレウスは一瞬で見えなくなった。
最初から最後まで、彼は英雄だった。