神代巨神海洋アトランティスIII−26
ボーダーに合流して、まっすぐに指定された海流に乗って空想樹のあるビッグホールへと向かい始める。
しかしすぐに、空想樹が透けていることに気づいた。
なんと、空想樹を含め、この大西洋の海そのものが蜃気楼だというのだ。この海の下、あのビッグホールの底に、真にオリュンポスが存在する。異聞帯という一つの世界が、この地球の白紙の地下に転移している状態ということだ。
地獄のような潜水を経てビッグホール周辺を流れていけば、ポセイドンの海流に飲み込まれ、ついにポセイドンと会敵する。
巨大な鯨のような姿であり、本来なら合計4カ所のコアが結界を纏っており、ここで詰んでいた。
しかしドレイクがその神核の一つを奪っていたために、最後尾は結界に穴が開いていた。ここに来て、ドレイクの働きがカルデアを救ったのだ。
こうしてストーム・ボーダーは最後尾に揚陸し、シャドウ・ボーダーを射出。ゴルドルフの運転とムニエル・ホームズの補助で、マシュ、立香、アーサー、そして唯斗が同行する。
もう一人、生き延びていたイアソンも一緒にいるが、戦闘には出ないらしい。
「見えない傷があるんですー」と言っていたが、これまでなら、さすがにこのレベルの戦いであれば参戦していた。本当にどこか怪我をしているのかもしれない。
そして、唯斗はもう一つ気にしていたことがあった。
揚陸に成功して最初のコアに向かいながら、唯斗はダ・ヴィンチに問いかける。
「ダ・ヴィンチ、サーヴァント反応はあるか」
『え?ポセイドンの装甲に?そんなもの……いや待て、ある!1騎、頭部とおぼしき最奥の一番大きなコアに反応あり!』
「じゃ、それがケイローンだな。アキレウスは仕留めてないって言った。なら、オリュンポス到達までにカルデアを手っ取り早く殲滅する方法は、ポセイドンに合流しておくことだ。オリオンを狙わないのが気になってたけど、先にビッグホールに向かってたってわけだ」
「ふむ、コアの迎撃システムに加えてケイローンとなると…なかなか厳しい戦いだ」
ホームズは冷静に言っているが、コアを一つ一つ潰してケイローンに辿り着く頃にはかなりじり貧だろう。
ならば、先手必勝だ。恐らく立香の一時召喚だけで手前2つのコアは破壊できる。それなら、唯斗は先にケイローンを倒しに行くべきだ。
「立香、ホームズ。俺とアーサーは先にヘッドコアに向かう。そこでケイローンと先行して戦闘する」
「なっ、危ないよ唯斗!」
立香は食い下がるが、それを唯斗は手で制した。
「アキレウスと約束したからな、必ず仕留めるって。ダ・ヴィンチ、リソースの出し惜しみはなしだ。俺も最大限、3騎を一時召喚してやるぞ」
『いいよ〜!今ここでやらずにいつやるんだって話だ。思い切り戦ってくるといい』
「てわけだ。手前2つのコアは頼んだ」
唯斗はアーサーとともに上部ハッチからデッキに上がる。そして呼吸を一つ。神代のマナで満ちてはいるが、問題なく活動できそうだ。
「…アキレウス!」
「おう!来たぜマスター!」
なぜか懐かしく感じてしまう声。甲板に召喚されたアキレウスは、もちろん、カルデアのアキレウスだ。第五特異点からずっと、唯斗の窮地を何度も救ってくれた。
「状況は理解してる。なんせ、異聞帯の俺が死んだときに記録が押し寄せてきたからな。あいつ、多分座からほぼ強制的に俺に記録を流し込んで来やがった。ま、俺だけど」
「…そっか」
どうやらアキレウスは異聞帯のアキレウスと記憶を同期したらしい。いや、させられたようだ。最後まで、この異聞帯で戦ったアキレウスは、唯斗のことを考えてくれた。
アキレウスは唯斗の頭を撫でながら戦車を呼び出す。
「……お前さんは本当、どこでも変わらないな。さあ行こうか我がマスター、この世界の俺が果たせなかった戦いをしに行くんだろう?」
「…あぁ。行こう」
唯斗とアーサーは戦車に飛び乗る。そして、アキレウスはすぐさまシャドウ・ボーダーを飛び出してポセイドンの結界内を飛行した。
迎撃システムが飛来するが、アキレウスの方が速い。急ごしらえのシステムで、この速さを捉えられるわけがなかった。