神代巨神海洋アトランティスIII−29
ちょうど同じタイミングでアーサーもコアに聖剣を突き刺し、魔力を放出してコアを破壊していた。大きく振動し、ポセイドンは崩壊を始める。
さらに、残る2つを破壊してきた立香たちもヘッドコアに到達した。
「唯斗!」
「立香、こっちは済ませた」
「俺たちも!良かった、じゃあこれでぜん、ぶ、うわっ、」
突然、地面が割れ、金属が破断する鈍い音とともに崩落を始めた。ポセイドンの機体が崩壊し始めたのだ。
「マスター、お気をつけて」
「オリュンポスでも必ず力になりましょう」
サンソン、ディルムッドは相次いで言って自分から退却する。アキレウスも唯斗の頭を撫でた。
「…感謝する、マスター。いろいろ伝えたいことはあるが、まずは生きて帰ってこい。そのために俺を呼べ。いいな」
「…うん、またよろしく」
「おう!」
アキレウスもそう笑ってカルデアに戻った。あとは、混乱してエラーアナウンスを流し続けるポセイドンと、血まみれで倒れるケイローン、そしてケイローンのもとにやってきたイアソン、立香、マシュとなる。
アーサーも剣を消失させて唯斗の傍に控えた。
「……なぜ、あなたたちが勝てたのです…戦力は、圧倒的だったはず……」
すると、ケイローンはイアソンにそう尋ねた。イアソンは肩を竦める。
「さあな。その答えを明瞭に持っているヤツなんざいないぜ、ケイローン」
そして、イアソンはいつものドヤ顔ではなく、恩師の姿をした別人にものを教える英雄の顔になる。
「ここにはただ、意志があった。負けないという強い意志があり、最後まで諦めないと誓って走り抜けた」
呆気にとられたケイローンの顔など、そう見られるものではない。
しかし、再び大きく船体は揺れ、いよいよ崩壊がひどくなる。
ホームズはシャドウ・ボーダーに繋がる通路からこちらに呼びかける。
「急げ!すぐストーム・ボーダーに帰投する!」
「は、はい!行きましょう先輩、唯斗さん!イアソンさんも!」
唯斗とアーサー、立香とマシュは急いでホームズの方へと走り出し、マシュはイアソンにも声をかけたが、イアソンはあっけらかんとした。
「ん?ああ、いや。俺はここで構わん。つーか疲れた」
「…っ、」
全員息を詰まらせる。やはり、イアソンはもともと限界だったのだ。最後まで、この戦いを見届けるために、踏ん張ってくれていた。
口では「もー二度とやらねー!」と喚いているが、すべて、カルデアをオリュンポスへ送り届けるためのものだった。
立香はイアソンのもとに駆け寄ると、その体をきつく抱き締める。
「いてっ!苦しいんだが…」
「ありがとう!!」
「…はいはい、早く行け」
立香とともに、唯斗も走り出す。イアソンとケイローンを残してボーダーに帰投すると、崩落するポセイドンの機体を脱出し、ストーム・ボーダーに乗り込んだ。
ポセイドンから離れる揺れの中、廊下を駆け抜ける。
そしてブリッジに入ると、今度は急にボーダーが落下を始めた。
「う、わっ、」
「マスター掴まって!」
唯斗は危うく倒れかけたが、アーサーに抱き留められる。どうやら、ポセイドンの機体が崩壊したことで、結界が破れて大量の海水が迫っているらしい。
急いで立香たちと席につくと、アーサーは唯斗を抱き締めたまましっかりと支えてくれた。
そのままビッグホールを落下し、激しく揺れる船内でアーサーの腕の中、唯斗は目を閉じる。
ここが、ようやくスタート地点。やっと本当の戦いが始まるのだ。
ドレイク、千代女、コルデー、バーソロミュー、アキレウス、ヘクトール、パリス、マンドリカルド、オリオン、そしてイアソン。
英霊たちがその身すべてを投げ出して、カルデアをここに送り届けてくれたのである。
そうして、揺れが収まるのと同時に目を開く。
窓の向こうには、巨大な都市と水晶の山脈が浮かんでいた。
星間都市山脈オリュンポス。第五異聞帯、真の姿。
今ここに、カルデアは絶海を突破した。