星間都市山脈オリュンポスI−7
一度ボーダーに戻ろうかどうか迷った唯斗だったが、立香たちがカドックにどこに連れて行かれたのか分からなかったこともあり、とりあえずは市内に留まることにした。
高層マンションの屋上で夜を明かし、日の出とともに目を覚ました唯斗は、もう少し情報収集と合わせて立香たちの行き先を探そうかと考える。
すでに立香たちの存在がこの辺りにあることを敵は知っていることから、また近いうちに戦闘が起こるかもしれない。今度こそ、唯斗も合流して一時召喚で戦力を呼び出さなければならない。
唯斗は朝食代わりの携帯レーションを食べてからマンションを出ると、外の通りを歩き始める。
いずれはあのドドーナにも突入する必要があるため、移動手段になるものも探しておければ良いと思ってのこともあり、唯斗はより大きな幹線道路を目指す。
どうやら、オリュンポスの市民はあまり遠出をしないらしい。この辺りの住民たちも、他の地区に移動することは滅多にないようで、大都市であるにも関わらず、田舎のように顔見知りであるようだった。
時折、話しかけやすそうな人間や年老いた見た目の人間に声をかけて、より詳しい聞き込みも行っている。
同じフィールドワークという体裁でやっているが、やはり知識は均一化されているのか、概ね返答は同じだ。
ただ、歴史を研究しているという学生に偶然出会ったときは、もう少し詳しい話を聞くことができた。
マキアは4つ、それぞれに名前がある。第一マキアはティタノマキア、第三マキアはギガントマキアであることは知っているが、第二マキア、白き滅びとの戦いはレウコスマキア、第四マキアである支配派と共生派との戦いはオリュンピアマキアというそうだ。
そして、レウコスマキアについては市民の研究者でも情報がなく、知られている知識はほとんど存在しない。その辺りの知識を、神は人に与えていないのだという。
また、不老不死である理由も理解した。アンブロシアとはデメテル・クリロノミアのことであり、定期的に普通の食事とは別に摂取することで不老不死となっている。
それにより、市民は実に1万年以上の間を生きているそうだ。やはり、人口の増減はほぼないと見ていい。
老人曰く、死とは神によって与えられるものだという。解釈すれば、要は神によってのみ人は傷つけられ、死に至るということだ。
知識を補足しながら、唯斗はガラス張りの高速道路に沿って南へと歩き出す。
市街地には、このオリュンポス全域にガラス張りの高架が張り巡らされている。高架といっても現代日本の高速道路のようなものではなく、流線型のガラス曲線を描くものだ。
柱は出入り口をかねているようで、一定の間隔で道路から車が降りてくるようになっている。車も魔術か何かで僅かに浮遊するホバリング型のもので、まさにSFの未来都市そのものだ。
遠出をしないため、長距離交通機関というものはなく、この高速道路くらいが遠距離移動手段になっているのだろう。
この高速道路に沿って歩いて南に向かっている理由は、少し前に、南部区画でデメテルが広域破壊活動を行ったからだ。
南部方面からやってきたというその人物は、デメテルがその権能を用いて南部区画を破壊し尽くし、その後、そのすべてを再生したのだという。
人々はそこで一度死んだし、街もそこで破壊された。しかし、デメテルは破壊後にすべてを再生させた。
無意味にそんなことをするはずがないため、恐らくは汎人類史のサーヴァントたちを殲滅するためにゼウスが派遣したのだろう。
しかし、と唯斗は疑問に思う。
再生されて生き返るとしても、死の瞬間は刻まれる。その痛みや苦しみの記憶そのものは残るのだ。もちろん、現代医学では生き返ったあとの精神的ショックなど研究しようもないため予想の域を出ないが、果たして、人間にそんなことが耐えられるのだろうか。