星間都市山脈オリュンポスI−10
逃げ惑う人々の合間を縫って、唯斗は破壊が及んだ区域に入った。
道路に亀裂が入っているだけのエリアから、その亀裂によって道路が完全に砕けてバラバラになった廃墟に入る。
一度持ち上がって落下したビル群は、ほとんどが根元から倒れるか自重に耐えきれず崩落している。頑丈な大型の建物だけ、途中で折れるなどある程度原型を感じさせる状態になっていた。
火災は徐々に広範囲に広がっており、粉塵と黒煙が混ざって町中に立ちこめている。
瓦礫に押しつぶされた人間の手が血だまりにいくつも出ており、瓦礫が直撃して頭が割れた女性、下半身が潰れた少年、建物の2階からぐったりと垂れ下がる少女、目にガラスが刺さってフラフラと歩く男性など凄惨な状況が広がっていた。
込み上げる吐き気を抑えながら、火災の熱を肌に感じつつ、口元に浄化術式をかけて黒煙を吸い込まないように走る。
デメテルは前方3キロ先に浮遊しているが、黒煙越しにその威容を誇る。ゆったりと、今度は東に向けて進み始めていた。
扇形の南部地区において、最初の3発は一撃で地区を端から端まで破壊できたが、南に行くにつれて市域が東西に広がるため、一撃では東西の端の方に爆風が届かない。そのため、南北方向に加えて東西方向にも舐めるように都市を耕す動きに転じたようだ。
徹底的に都市全域を破壊してでも、カルデアを殲滅するつもりということである。
道路を塞ぐように横倒しになったマンションの窓から中に入り、反対側に抜けるため横向きにひっくり返った室内を歩く。
家具や食器、観葉植物などがめちゃくちゃになった室内で、母親が小さな女の子を抱えた状態で床となった壁に倒れている。その頭には金属の棒が突き刺さっていた。少女の頭は重い棚が押しつぶしていて見ることもできない。
その遺体を跨ぎながら、震える手をぎゅっと握る。
「…生き返るから大丈夫、なんて…思えるか……」
どうせ生き返るのだから、どれほど残酷な状態で死んでいても問題ない、なんてことを思うのは、どうしても無理だし、それが無理であることに安堵する。
歪んだ扉を蹴破って外廊下に出ると、開けた外から建物の反対側に抜け出る。
バラバラになった道路をところどころ跳躍しながら歩いていると、崩落した連絡橋の向こうから剣戟の音が聞こえてきた。昨日も聞いた日本刀の音だ。マシュの盾の音もする。
立香たちが戦っているようで、すぐに唯斗は走り出した。
そして一息に地面に落ちた連絡橋の瓦礫を飛び越えて、広場になった交差点に着地した。
それと同時に、立香に向かおうとしていた人型機械を背後から強力なガンドで吹き飛ばす。
壊しきれなかったため、もう一撃お見舞いしてやれば、ようやく機械は沈黙した。
「唯斗!!」
「立香、怪我は!」
「大丈夫、良かった、無事だったんだね!」
立香たちは安堵しているが、無事であることは昨日のうちにカドックから聞いていたはずであるため、驚きはあまりない。
そして、唯斗は意外な人物を目に留める。
「えっ、宮本武蔵…?」
「ラスベガスぶりね、唯斗!相変わらずクールな登場素敵よ!」
そう笑顔で言いつつ、広域殲滅兵器の球状の外殻を一撃で破壊し、コアを貫く。行動と表情が合っていない。
「…まあいい、マシュ、状況は理解してる。作戦だけ端的に頼む」
「はい!これより現地協力者の狙撃ポイントにデメテルを誘導、先にやってきていたサーヴァントの皆さんが作成してくださっていた、七重連英霊砲を射撃します」
「ミスター雨宮はとりあえず火力でものを言わせる作戦で頼む」
「……え、」
ホームズのアホっぽい発言に思わず固まるが、マシュは首を横に振る。というかなぜホームズがここにいるのか。ボーダーにいたのではなかったのか。
まるで分からないが、とりあえず、一時召喚を行うことにした。