星間都市山脈オリュンポスI−12


「っ、アーラシュ!!」

「…事態は理解したぜマスター」


唯斗の正面に現れたアーラシュはすぐに矢をつがえる。宝具を放つ準備だ。ぐっと拳を握りしめた唯斗を労るように、アーラシュは振り返って笑顔を向ける。


「お前さんは間違っちゃいねぇさ。正しい采配だ。カルデアで待ってるから、無事に帰って来いよ。んじゃ、いっちょかまそうや、ファラオの兄さん!」


アーラシュはオジマンディアスにもそう笑いかけてから、宝具を放つ。
オジマンディアスも小さく笑って頷いた。


流星一条(ステラ)ァァアアア!!!」

光輝の複合大神殿(ラムセウム・ティンティリス)!!」


二人の宝具が同時発動する。
アーラシュの眩い光の矢は、放たれたデメテルの光線を切り裂いて進み、それを霧散させるとデメテル下部の瞳をまっすぐに貫く。そのまま背後にまで衝撃は進み、すでに破壊されたビル街を再び吹き飛ばした。
そのアーラシュが作り出した隙に、オジマンディアスが二つのピラミッドでデメテルを挟むようにして爆破する。

黄金の輝きとともに機体が軋む轟音が響き、爆風が空を揺らす。

そして、アーラシュとオジマンディアスそれぞれの霊基の消失ののち、デメテルは悲鳴を上げて揺れ動いた。

しかし、その外殻は瞬く間に回復していった上に、やはりまだ300メートル近く、狙撃ポイントまで距離が開いていた。
これだけの宝具攻撃を食らってもなお、デメテルは健在だと言わざるを得なかった。


「…なん、だ、あの堅さ…回復力…」

「だが無駄じゃないぜ」


しかし、震える唯斗の声にそんな別の声がかけられた。聞き慣れてはいる、しかしここで聞くとは思っておらず、一瞬気づかなかったほど。
勢いよく振り返った唯斗に、その槍兵はニヤリと笑う。


「見事なモンじゃねぇか、英霊ってのもなかなかやる。だがな、この神霊カイニスのとっておきはこんなモンじゃねぇ。ゴルドルフ・ムジークが借りた力、どんなものか見せてやる!」


なんと、そこにいたのはカイニスだった。白い装甲に槍を構え、不敵な笑みを浮かべている。


「カイニスさん!?」

「な、なんで!?」


マシュと立香も驚いているが、カイニスはすでに宝具を展開していた。


「通信繋げてやったからゴルドルフの野郎に聞け!見てろ、飛翔せよ、わが金色の大翼(ラビタイ・カイネウス)!!!」


カイニスは宝具発動と同時に、黄金の鳥に変化してデメテルへと飛び出していく。あれはカイニスが命を落としたときに現れたという黄金の鳥の具現化だろう。
その直撃によって、デメテルは狙撃ポイントに躍り出る。

そこに向けて、エネルギー砲が放たれる。先ほどマシュが言っていた七重連英霊砲とやらだろう。
光線が直撃したことで、外殻は融解していた。しかしすぐさま回復が始まっている。ただ、そのスピードは緩やかになっていた。


「そうか、カイニスのポセイドンの権能…」


古代、ギリシア神話では大陸とは海に浮かぶものだと考えられていた。そのため、ポセイドンとはすなわち、海によって陸地を浮かべている存在でもあった。
また、ポセイドンはアトランティス大陸を担当していたという説もある。アトランティス人が徐々に神を崇めなくなったことに怒ったポセイドンは、ゼウスに洪水を起こさせて大陸を海に沈め、大西洋となったというものだ。

そうしたことから、カイニスの持つポセイドンの権能は、大地母神に対しても優位に働く。それによって回復能力も抑えられているのだ。


また、ゴルドルフも通信から説明してくれた。どうやらカイニスはアトランティスでディオスクロイに倒されたあと、かろうじて生き延びてオリュンポスに辿り着き、偶然にもボーダーで保護された。ゴルドルフの決死の懐柔によってカイニスは一時的な共闘を受諾し、今ここに立っている。
通信機はカイニスが中継機を持っていることで機能しているそうだ。


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