星間都市山脈オリュンポスI−13
「あれ、じゃあアーサーも…」
「呼んだかな?」
それならばアーサーも活動できるのでは、と思ったところに、ちょうどその声が後ろからかけられた。
すぐ振り向けば、アーサーがデメテルの様子を窺いながら、巨大な装置を地面に置いているところだった。
「アーサー!」
「怪我がないようで何よりだ。ただ、何かあったら帰投するという手筈だったのに戻らなかったことについて、後でゆっくり話すとしよう」
「げっ…」
アーサーは笑顔だがシンプルにキレている。こういうときが一番厄介だ、マタ・ハリなどに教えてもらった小悪魔ムーブとやらで誤魔化せない。
「…まぁ、その話は後でな。それより、そのオルテナウスの換装パーツみたいなのはなんだ?」
「君の推察通り、オルテナウスの取り付けパーツだよ。マシュ、ダ・ヴィンチ女史とシオン女史が開発したアトラス院の秘密兵器が到着した」
「っ!ついに完成したのですね!それでデメテルにトドメを刺すということでしょうか」
「恐らく。見てみるといい、デメテルはすでにこの5分で負った傷の8割を回復している。すぐにでもコアを叩かなければ、振り出しに戻る」
アーサーが示した通り、すでにデメテルの回復は相当な範囲に及んでいた。
カイニスも戻ってきて、忌々しげにしている。
マシュは盾とオルテナウスにパーツを換装し始めた。通信からはゴルドルフが解説する。
『そう!これこそが我々の最終兵器、神をも殺すブラックバレル!アトラス院の七大兵器のひとつであり、そのレプリカとして持ってきたシオンがダ・ヴィンチと開発した代物だ。仕組みはよく分からないがね!』
世界の滅びの運命を回避するために研究している錬金術師たちが生み出してしまった、逆に世界を滅ぼせる兵器。それを七大兵器という。
その一つであるブラックバレルという兵器の模造品を所有していたシオンが、ダ・ヴィンチとともに神殺しのために開発したのだそうだ。
ホームズも装置を見て感心したようにする。
「完全調子の私でも理解できない仕組みだ。しかし何をするものかは分かる。天寿、宇宙に終わりがある限りあらゆるものに死があるという概念を逆説的に使用する兵器だ」
「つまりあれか、残りの寿命を魔力に変換してぶっ放すってことか」
『そういうことだ!粗忽に見えて頭がいいのだな君は!』
「あん?」
カイニスは静かにキレたが、その端的な言葉は実に分かりやすい。
「なるほど、天寿を尺度として存在規模を計測、その観測された寿命を逆説的に真説魔力化して荷電粒子砲にするのか」
『え、そんなにすぐ理解できるもの?』
長さを測るにはメジャーが必要だ。時間を計測するにはタイマーが必要だ。それらは起点から終点までの定義で計測される。
長さであれば、北極点から赤道までの距離の1000万分の1を1メートルとする。時間であれば、太陽の周りを地球が1周する時間を60進法で数えた単位となる。
それと同じようにして、宇宙の終わりまでの時間、すなわち天寿をメジャーとして、対象のスケールを計測、算出された残る寿命を魔力に変換するのだ。
本家のブラックバレルは、これを地球に使ってしまった場合、地球を破壊できることになってしまう。
今回は神に特化した神殺しの兵器として製造されたため、そんな事故にはならない。
『でも砲身の本格駆動には超高密度魔力が必要だ。立香君、君の令呪が必要になる』