星間都市山脈オリュンポスI−16


「じゃあホームズ、早速で悪いけど、情報のすり合わせしてもいいか。俺も丸一日、単独行動してたから整合性を持たせたい」

「そうだね、それがいい」


アーサーへの共有もかねて、唯斗はホームズとこの世界に関しての知識の共有を行った。何か新しいことが聞けるかと思ったが、特段真新しいことはなかった。
一つだけ、ディオスクロイがキリシュタリアのサーヴァントとなった経緯というのが、キリシュタリアがこの異聞帯のディオスクロイを一度殺して従えているからだと知った。もともと古き神性であった双子は、ゼウスに従い神話体系に組み込まれることを選択。それがギガントマキア以前のことであり、その際にクリロノミアを与えられた。
これによって系譜に連なったディオスクロイだったが、キリシュタリアはクリプターとして異聞帯にやってきたときにディオスクロイと戦いこれを下した。素手で神霊を倒せることは、あの惑星轟を見れば驚きはない。


「ふむ、さすがミスター雨宮。ほぼ同じ知識をたった一人で収集していたとは。いったいどうやって?当たり前のことを聞くというのは難しいだろう」

「学生のフリした。みんなが当たり前に知っていることを、あえて自分ならどう説明するか、その説明表現の特徴量を分析するっていうテーマでフィールドワークしてる体裁にしたんだ」

「ほう、なるほど。確かにそれなら、基礎知識を聞いてもまったく違和感がない。それに、正直そのテーマは非常に興味がある」

「それな。我ながらこのまま研究したいテーマだった」


合理的な手法として考えたものだったが、わりと楽しんでいたところは否めない。
聞いていたアデーレも感心したようにしていた。


「確かに、そのテーマであれば実際のオリュンポスの文学研究として興味深い内容になりますね」

「あんな神のことなんざ説明したくもないけどな」

「俺からすりゃ悪口全集みたいになるな」


一方のマカリオスとカイニスはそんな調子だ。確かにこの二人に聞いたら極端な表現が出てしまうだろう。

すると、アーサーが咳払いした。


「さて、そろそろマスターがそれだけ長い間単独行動した挙げ句、デメテルとの戦いが始まってもなお戻らなかったどころかたった一人で爆撃区画に乗り込んで藤丸君たちに合流したという容疑について、説明を求めたいのだけど」


一通り話が終わったことを理解したからだろう、アーサーは先ほど言っていたことを蒸し返した。
確かに、まずいことになったら戻ると言っていた以上、最初の神託の時点でボーダーに戻っておくべきだった。
そうすれば、カイニスと早くから合流し、サーヴァントでも普通に市内を歩いて問題ないと聞くことができたはずだ。そしてそれができるなら、普通に魔術も使えると理解できた。

言葉に詰まる唯斗に、ホームズはフォローに入る。


「いえしかしアーサー王、彼が早くから戦闘に加わってくれていたおかげで、マシュや武蔵、私の疲弊は最小限に抑えられました。オジマンディアス王とアーラシュ・カマンガーの活躍のおかげです」

「…ピラミッドとステラは見えていたとも。確かにそれは肯定しよう、ミスターホームズ。しかしこれは私とマスターとの間の話だ。口を挟むのは道理でないと思うのだが、それは君の時代の王室とは異なる常識だったかな」

「これは失礼。お許しを、我らが騎士王。そしてミスター雨宮、諦めて絞られてきたまえ」

「裏切り者…!」


アーサーはばっさりとフォローを切り捨てた。しかし、オジマンディアスとアーラシュのことを思い出し、唯斗はつい左手を握りしめてしまう。ずきりと痛みが走り、そういえば回復もせず、ナイフで切ったままだったと気づく。傷口が開いて再び血が滲む。

加えて、珍しく腹がぐるりと一度鳴った。そういえば、今朝レーションを食べて以来だ。

アーサーはひとつため息をついてから、優しく唯斗の肩を抱く。


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