星間都市山脈オリュンポスII−3


その後、双子の家で「忘れ物」を回収してから一度地下基地に戻った。
何かの兵器だと思っていたが、まさかその「忘れ物」が英霊だとは思わなかった。

それも、ローマ帝国第三代皇帝カリギュラ。アトランティスにてアルテミスの精神攻撃を受けたことで、逆にバーサーカーとしての狂気が相殺され、流暢に会話できるようになっていたのである。

カリギュラはアフロディーテとの戦闘において切り札になると考えているようで、これから地上での術式設置に伴って、対アフロディーテ戦を担ってもらうことになる。
術式設置には莫大な魔力放出が起きるため、残る3つの術式の敷設は兵士や防衛兵器、そしてアフロディーテの妨害が想定されている。

今度はカイニスも連れて再び地上に出ると、日が沈んで夜になっていた。相変わらずホームズとカイニスは霊体化しており、アーサーは迷彩術式で隠している。


「…それでは、そろそろ始めます」


しばらく歩いたところで、アデーレは立ち止まって術式設置を始めると述べた。ここは往来のど真ん中であり、どう足掻いても隠れることはできないだろう。
すなわち、これは戦闘の合図でもある。

アデーレはAIに託された魔術式を起動した。同時に、青白い召喚術の光が通りに放たれる。円陣型に広がる青白い光に、人々は驚いてこちらを振り向いた。
さらに、警報音が市街地に鳴り響き、通りのあちこちからゲートが開いて球状の広域殲滅兵器が出現する。


『緊急警報。オリュンポス市民の皆さん、カルデアの悪魔が出現しました。これより準広域破壊作戦を実施します。手順に従い、落ち着いて避難してください』

「始まったな。アーサー、迷彩解くぞ」


市民は押し殺したような悲鳴を上げながら、兵士や兵器に先導されて走ってシェルターへと避難を始めた。混乱にはなっていないが、辺り一帯が騒然とする。
もはや迷彩も霊体化も不要だ。唯斗はアーサーにかけていた迷彩を解除し、ホームズとカイニスも姿を現した。


「肩が凝ってしまうかと思ったよ」

「体解すにはちょうどいいな。なんだかんだ、デメテルのときは佳境だったし、オリュンポスでちゃんと戦うのはこれが最初か」

「そうだね。アテナ・クリロノミアの調子も試すとしよう」


アーサーとマシュにはアテナ・クリロノミアが、武蔵にはアレス・クリロノミアが投与されている。同盟基地には、アトランティスにあったもののオリジナル機が配備されており、アトランティスからは喪失していたクリロノミアも適用可能だった。
Arthurという名前の語源も、「戦士王の子」という意味を持っているという説があるほどだ、アーサーにとってはアレスよりアテナの方が親和性は高いだろう。

取り囲むように現れた正規兵と広域殲滅兵器に対して、アーサー、カイニス、ホームズ、マシュ、武蔵がアデーレとマカリオス、マスター二人を守るようにして対峙する。
恐らくもう1騎いた方がよさそうだと判断した唯斗は、中距離レンジ要員としてディルムッドを一時召喚した。


「ディルムッド!」

「ディルムッド、ここに」


双槍を構えたディルムッドに、武蔵は「いい男じゃない」と軽口を叩く。困惑した様子のディルムッドだったが、正規兵たちがこちらに向けて走り出したことで、敵だけに照準を定めた。


「アーサーは近めで、ディルムッドはやや離れて戦闘開始」

「了解!」

「承知しました!」


アーサーとディルムッドは即座に応戦を始める。

ディルムッドは一度跳躍して、カルデアを取り囲む兵士たちの中程に割り込むように着地、その場で兵士たちを槍で薙ぎ払う。アーサーはこちらに接近する兵士たちを次々と切り裂いた。
カイニスは再生の権能を兵士から奪うべく、トドメを刺さずに一撃を加えることに専念して場を走り回り、ホームズとマシュで広域殲滅兵器によるレーザー光線を防ぎ、武蔵が兵器を叩き切る。


「術式設置完了しました!」

「よし、次のポイントに移動するぞ!」


双子の報告を聞いて、サーヴァントたちはそれぞれ最寄りの敵を一気に叩き潰し、道を開く。
その間を、マシュとホームズが庇いながら唯斗たちは走り出す。
次々とやってくる兵士たちをアーサーとカイニスが吹き飛ばし、後ろから追いかけてくる兵士を武蔵とディルムッドが沈黙させる。

アトランティスでの戦闘よりも、比較的スムーズにことが進んでいた。


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