星間都市山脈オリュンポスII−10


上空1800メートルほどの高さに滞空しているアフロディーテとの戦闘のために、マカリオスたちが転送して出現させたのは小型戦闘機だった。恐らく音速が出る代物だろう。
ステュムパリデスというらしいその戦闘機は、人数の都合上、唯斗とアーサーは登場せず地上に待機することになる。

待つしかないというのは正直忸怩たるものがあるが、魔力をかなり消耗している唯斗が同行しても仕方がないというのも事実だった。
せめてアーサーを伴わせようとするも、アーサーは唯斗を守るために地上に残ると主張し、立香たちも同意したため、二人で地上に残っている。

瞬く間に見えなくなったステュムパリデスは、アフロディーテよりも高い位置まで音速で上昇していく。

やがて、空中に突如として巨大な甲冑が姿を現した。ギリシア神話の未来都市に現れる平安の甲冑という異質な光景に、思わず唯斗もアーサーも目が点になる。
どうやらあれは金時の宝具を、この大召喚陣によって仮想顕現させているようだ。ヒュージ・ベアー号という大具足は、アフロディーテを鷲づかみにして固定。すかさず立香がステュムパリデスからブラックバレルを射出した。

またも立香が令呪によってブラックバレルを使用した形である。どうにかして唯斗もできるようになればいいのだが、砲手がマシュである以上、それも叶わないだろう。


「…くそ、何もできないの腹立つ」

「僕を君一人で止めただけで十分だろう。あの状況で僕まで戦闘行動に入っていたら、本当に全滅していた」


アーサーの言うとおり、アーサーが敵として武蔵やホームズとともに戦っていたら、それだけでこちらは全滅していただろう。その余計な戦闘を防いだというのは確かにその通りだが、ブラックバレルの黒々とした光線がアフロディーテを貫くのを見て、無力感を感じてしまう。

いまだに体は気怠く、魔力不足で意識が飛びそうになるが、まだ自分の足で立っている。

機体が崩壊していくアフロディーテの姿を見上げながら、唯斗は通信で帰投ポジションに正規兵などがいないことを告げようとした。

そのときだった。

突然、アーサーが動き、唯斗の目の前に剣を突き出した。同時に、エクスカリバーに激しく衝突する別の剣。まったく気配はおろか接近する音も魔力も感じなかったため、唯斗はアーサーに抱き寄せられながら目を見張る。


「な…ッ、」

「避けるか、人間。小癪な」


唯斗とアーサーの前に現れたのは、金髪に青銅の冠をつけた双子のサーヴァント。唯斗が対峙するのはアトランティス以来となる。


「双子座の神、ディオスクロイ…!」


あれはディオスクロイ、カストロとポルクスだ。キリシュタリアとの戦闘で見かけたきりで、実際に戦ってはいない。
神話通り、ポルクスは剣で、カストロは盾で戦うようだ。間違いなく、ポルクスはボクシングもできるはず。アーサーがいなければ唯斗の首は繋がっていなかっただろう。

アーサーは警戒心をマックスにしており、唯斗を背中に隠すようにして双子に立ちはだかった。


「マスター、総力だ。無理させて申し訳ないが、最大限の戦力を」

「……分かった」


その声音から、アーサーがいつになくディオスクロイを脅威として認識していることが窺える。単純な神性や強さというより、今の剣戟の速さを警戒しているのだろう。つまり、速すぎて守り切れないということだ。


「人間の英霊ごときが何騎いようと変わらん。死ね」

「死になさい、騎士王とやらとそのマスター」


カストロの冷徹な目は、虫を見るようなものだった。事実、彼は人間をそう認識している。ポルクスもそれを肯定しているようで、剣を構えて瞬時にアーサーへと飛び出した。


「っ、エミヤ、長可!」


唯斗はすぐにエミヤと長可を召喚する。マシュの盾は遠いがなんとか呼び出せた。魔術回路が痛みを持つが、今はそんなことを気にしている場合ではない。


「双子座の神かね」

「あぁ、エミヤは俺の近くから攻撃頼む。長可は盾の方だ」

「殺してくるぜ殿様ァ!」


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