星間都市山脈オリュンポスII−11


エミヤは唯斗の近くで守りと遠距離攻撃に徹する。アーサーはポルクスとの剣戟、長可はカストロに対する牽制と攻撃を行う。

アーサーとポルクスの剣術はもはや目で追うことはできず、ひっきりなしに火花が散って、斬撃の余波で地面が抉れた。
長可は巨大な槍でカストロの盾に迫るが、カストロも俊敏に避けて、時に盾を投擲して距離を取った。
エミヤはそれぞれに矢を放ってフォローするが、ポルクスとアーサーの剣戟にはもはやフォローも敵わない。


「こちら雨宮、着陸は俺から離れたところにしてくれ。ディオスクロイと交戦している」

『なんだって?マカリオス、すまないが急いで着陸を』


通信で状況を伝えると、立香の代わりにホームズが答える。すぐに立香たちも戻ってくるだろうが、立香もブラックバレルの令呪装填で疲弊しているはずだ。


そこに、一際激しく甲高い音とともに、ポルクスがアーサーを吹き飛ばした。アーサーはエクスカリバーごと弾き飛ばされ、離れた場所に着地する。カストロも長可を盾で思い切り殴り飛ばすと、近くのビルに叩き付けた。
轟音とともに長可はビルの壁面を破壊して倒れ伏す。

さらに、その隙にカストロとポルクスは二人でエミヤに迫った。エミヤは慌てて弓から短剣に切り替えて応戦したが、ポルクスの剣がエミヤの左腕を跳ね飛ばし、カストロが盾でエミヤを吹き飛ばす。


「ぐあ…ッ!」


エミヤも地面に叩き付けられ、唯斗の正面はがら空きになった。そこから僅かなラグもなく、ポルクスの剣が唯斗に迫る。
息を飲んだ唯斗だったが、それより先にアーサーが再びポルクスの剣を弾いた。


「おのれ騎士王、我が剣を二度も防ぐか」

「ブリテンなどという辺境の田舎者の王が、不敬であるぞ。死ね」


ディオスクロイたちはアーサーを睨み付け、二人がかりでアーサーに向かうが、今度は長可の槍がポルクスを掠めた。瓦礫の中から一瞬でここまで駆けつけたらしい。


「てめぇらが死ね」


怒鳴るでもなく、血を吐きながら淡々と言う長可は、かなり頭にきているらしい。しかし、カストロは不愉快そうに長可を睨んだ。


「我が妹に触れるな、極東の蛮族風情が」


直後、ポルクスの剣が長可の鎧ごと腹を貫いた。同時にカストロの盾が長可の脳天に直撃し、大量の血が辺りに飛び散る。


「長可っ、!」


しかし、長可は盾ごとカストロの腕を鷲掴んだ。即死レベルの傷のはずだ、それなのに、その眼光は爛々と輝いていた。


「知ってるか神さんよォ…負い目のあるヤツほど、他者を見下して上に立とうとするンだぜ」

「貴様ッ、」

「やれ弓兵!!」


そして長可が叫んだ直後、エミヤのニードル剣の矢が、長可ごとカストロに突き刺さった。エミヤはどうやら、左手がないため、足で弓を支えていたようだ。倒れた場所から長可諸共カストロに狙いを定めた。長可は、カストロの素早さを固定するために自ら攻撃を受けていたのだ。


「お、のれ人間ンンッ!!」

「…ハッ、いい声で喚くじゃねェか」


その言葉を最後に、長可は消失した。アーサーは唯斗を抱えて跳躍し距離を取る。
カストロは血を流すが、しかしその傷は瞬く間に癒えていく。やはり本物の神だけある、回復の速さも桁違いだ。

そこに、突然砂嵐が巻き起こった。砂塵によって瞬く間にディオスクロイの姿は見えなくなり、魔力探知すらできなくなる。


「これは、」

「唯斗!こっち!」


聞こえてきたのは立香の声。恐らく、マカリオスたちの撹乱術式だろう。
唯斗はエミヤを退去させてから、アーサーとともに立香たちの方へと走り出す。

1騎を失っておきながら、回復する傷一つしか残せなかった。それは結果としては芳しくないだろう。しかし、神そのものを相手に一矢報いた長可の捨て身の攻撃と、気力を振り絞ってカストロを抑えたその胆力は、まさに人間の底力を見せた戦いだった。


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