星間都市山脈オリュンポスII−12


ディオスクロイとの戦闘後、破神同盟の基地に戻ってきたカルデア一同を出迎えたのは、まさかのペペロンチーノだった。

カドックと同じく、敗れたクリプターとしてオリュンポスに滞在しており、「協力者」とやらの使いをしているそうだ。
ペペロンチーノは協力者の居場所に案内してくれるとのことで、基地はその座標へと地下を移動。都市中枢の祭壇街へとやってきた。

都市の中央部に聳えていた2000メートル級の超高層ビル群が祭壇街のようで、地形上、最も地表に近く、ゼウスの索敵が及びやすい区画にあたる。

ペペロンチーノが協力者の元へカルデアを誘導したのは、破神同盟が事前に協力者に依頼していた、対ゼウス用の切り札「大召喚器」の用意が完了したからとのことで、一同はペペロンチーノの先導で基地から協力者のいる区域へと歩く。

そうして到着したのは、広い空間の中央に円柱状の高炉が聳える工房だった。


『久しぶり、とでも言っておこうか。カルデアの諸君。そして破神同盟』

「お初にお目にかかります。知識神…いえ、鍛冶神」


協力者とは、プロメテウス=ヘファイストス。オリュンピアマキアで敗北したプロメテウスが、同じく敗北して捕囚となっていたヘファイストスと統合され、オリュンポスの地下で隷属的に働かされているのだという。

プロメテウスはウラノスとガイアの子イアペトスの子であり、ティターン神族にあたる。人類に火をもたらした知恵の神であり、それがきっかけでゼウスによってカフカス地方の山脈に拘束され、生きたまま肝臓を鳥に啄まれるという拷問を課せられた。
Prometheusという綴りのうち、proは「前」「先」を意味する語根であり、英語ではpromise(将来の決めごと=約束)やprofessor(前方でfes「言う」者=教授)などの語根として残っている。preも同じ意味となる。
metheusについては、thinkあるいはthiefいずれかを語根として名付けられたとされている。どちらも、考える者として、あるいは火を盗んだ者として、プロメテウスの性質を象徴する説であるだけに、いまだに結論は出ていない。


『諸君らは、アトランティスでアルテミスとポセイドンを、オリュンポスでデメテルとアフロディーテを打倒し、ついにゼウスの喉元にまで食らいついた。見事、というほかない…アフロディーテは、最後、何か言っていただろうか』


プロメテウス=ヘファイストスは、アフロディーテの夫であったヘファイストスの立場として、アフロディーテの最期について尋ねた。立香は静かに、「あなたの名を呼んでいたよ」とだけ答えた。


『…そうか。では、大召喚器についてだが』

「き、切り替えの早い御仁ね」


しかし、とっとと次の話題に移ったヘファイストスに、武蔵もさすがに驚いた。それを見てカイニスは呆れたようにする。


「当たり前だろ。こいつらは所詮機神、人のように見せているだけでその性根はただの機械だ。海が人の心をなんと知る?嵐が人の心何を知る?そういうこった」

『カイニス。ポセイドンの加護を受けた者。うむ…そう嫌うな、確かにポセイドンの在り方は…問題があるとは思うが…』

「てめぇが語るな!さっさと召喚器とやらを出しやがれクソ神!」


瞬間湯沸かし器のようにキレたカイニスに対して、武蔵やホームズが諫めるより先に、まったく別の低い声がかけられた。
誰もがその気配に気づいていなかったほどの唐突さに、一気に緊張が走る。


「随分と喧しいお兄さんだな。なんだ、腹でも減ってんのか?」

「ッ!てめえ誰だ!」


容易くカイニスの背後を取った男は、肩にかけていた羽織をひらりとさせ、カイニスの影から現れる。
逞しい肉体を晒し、唯斗よりも僅かに背が低いくらいと見られる少年めいた姿をしているわりに、どこか口調は年寄りのような風体。


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