星間都市山脈オリュンポスIII−1
夜が明け、オリュンポス4日目の朝となった。
村正は道理を通すためだろう、最終工程を自動化することで完成前に姿を消し、敵対することを防いだ。
朝になると同時に大召喚器アイテールが完成し、ついにすべての準備が終わる。
アイテール、カオスの孫世代であり原初神、その意味は上天を意味する。ゼウスよりも遥か高み、大気そのものを司る概念神でもある。airと語源を同じくする神の名を取って、ゼウスに対抗するのだ。
空想樹の臨界が近いことは事前に分かっていたため、今日にでも軌道大神殿オリュンピア=ドドーナに突入するつもりだった。
しかしその前に、突如として工房の壁が吹き飛び、一瞬で緊張が満ちる。
「…これはこれは、皆々様おそろいで」
なんと、現れたのはリンボ。いるだろうとは思っていたが、まさか直接工房に乗り込んで来るとは。
すぐにマシュとアーサーは唯斗と立香の前に立ち、武蔵は抜刀する。ホームズ、カリギュラも臨戦態勢になった。
『我が工房の探知にもかからずに乗り込むとは、貴様並大抵の英霊ではないな』
「探知?はて。私は神の加護を受けておりますので。といっても、オリュンポスの神々ではなく、我々の異星の神ですが。おかげで、神妃エウロペの衣についた糸も気づかれずに済みました」
「糸…!?おのれ、おのれ蕃神、わたくしにそのような…!」
「はい、はい!ンンンン、おのが故郷たる汎人類史に与するそのお心、利用させていただいた!実に無様!拙僧、この朝を待ちに待っておりました。大召喚器、でしたか。それをあなた方の目の前で破壊すれば、ええ、さぞ愉快な声が聞けるものと!!」
「この外道…!」
武蔵は低い声で睨み付ける。相変わらずの悪趣味に反吐が出る。
しかしその強さは本物だ。さらに最悪なことに、リンボが開けた穴からさらに別の神霊が現れる。
「見つけたぞ、人間」
「見つけました、兄様」
「是より…」
「神罰を下す!」
「この場で全員死ね!」
ディオスクロイまでもが現れ、すぐにこちらへと剣をふりかざす。まったく迷いなく、こちらを殺そうとしていた。もはや対話も不要とばかりに、ポルクスの剣が迫る。
しかし、その剣は突然現れた槍に弾かれる。霊体化を解いて現れたカイニスが青筋を浮かべていた。
「誰か忘れちゃいねぇかクソ双子野郎!!」
今回はカイニスがいるため、ディオスクロイにも存在しているであろう回復の権能は効果を低減させている。それならば、昨晩のような苦戦はしない。もっと言えば、こちらも体力魔力ともに万端だ。
「アーサー、リベンジマッチだ」
「了解したよ」
アーサーもディオスクロイを睨み付けている。
追加戦力として、唯斗はエミヤを、立香はナポレオンを呼び出した。
「エミヤ、こちらを守りながらフォロー!」
「了解した」
「ナポレオン、動き読んで動きを牽制!」
「ダコール、メートル!」
カイニス、アーサー、マシュの短距離攻撃と、エミヤの援護射撃によってディオスクロイにダメージを入れていき、ナポレオンは砲撃でディオスクロイの動きを制限する。
カリギュラと武蔵、ホームズはリンボを担当する。
しかし、ディオスクロイの速さはこちらの戦力差を上回り、着実にこちらを削り、自分たちはダメージを受けていない。まるで光のようだ。
さらに、リンボはヘファイストスにコンピューターウイルスのようにして魔力を強制注入して浸食し、その隙にエウロペの背後を取った。
「それでは。是にて」
その言葉を最後に、リンボはエウロペとともに消失する。こちらの隙を突いて連れ去られてしまった形だ。
最初からそれが目的だったのだろう、こちらがディオスクロイに気を取られている間にヘファイストスは致命的なダメージを受け、エウロペは連れ去られてしまった。しかも、ディオスクロイは依然としてこちらに猛攻を続けている。
一際激しい音とともにアーサーの剣を弾いたカストロは、ポルクスとともにいったん距離を取る。
間合いを開けて、カルデアから数メートル離れたディオスクロイたちは、こちらに忌々しげな視線を向けた。
「破神同盟を名乗るゴミ虫ども。ハデスの領域に隠れ潜んでいようとは」
「地下機構帯、過去のマキアの敗者たる死者のみが稼働する冥府。生者の分際で死者の領域に潜むとは万死に値します」
「その通りだ妹よ。では是より先は誅伐ではなく、神罰ならず、害虫の駆除であると心得よ」
「……害虫?」