星間都市山脈オリュンポスIII−2


立香はカストロの言葉に、珍しく、嫌悪の滲んだ声で、無意識だろうが呟いていた。聞いていないのか、それとも興味がないのか、カストロは自分の言葉に合点する。


「ああそうだ、破神同盟、これまでも貴様らを殺して回っていたが、何かに似ていると思っていたのだ。虫!まさに虫だ!」

「優美ではありませんが正確な喩えです、兄様」


カストロの高笑いに頷くポルクス。それを見て、アデーレは静かに言葉を発した。


「………反吐が出るわ」

「…ヒトの娘よ。今の言葉は、私に向けたものか?」

「ええそうよ、ディオスクロイ・ポルクス。あなたの言葉は追従ばかり。彼に頷き、彼を讃える以外の言葉は出てこない。道を違えたときにはきちんと諫めなさい。あなたの兄は間違えている。神は、人間を統べるものかもしれないけれど…憎しみで殺すものでは、ないでしょう。それではまるで…」

「まるで人間だ、ディオスクロイ・カストロ」


立香も吐き捨てるように言った。ディオスクロイがどんな存在か知っているからこそのものだろう。
盾を構えるマシュも頷く。


「はい、マスター。古き神としてのディオスクロイは間違いなく双子神であるはずですが、双子座のカストロは人間として伝えられています」

「そう、実に簡単なことだ。ディオスクロイ、確かにゼウスの命というのは事実の一面だろうが…結局のところ、この大量殺人の真相は、ただの怨恨だ」

「……やめろ」


ホームズもあっけらかんとそれを口にする。ポルクスは初めて、声を震わせてこちらを止めようとするが、その声音にこそ、それが事実であることを理解していると窺えた。
マカリオスはそれを聞いて、拳を握りしめる。


「…なんだよそれ…なんなんだよそれは!おい、こっちを見ろディオスクロイ!あんたたちは、そんなにも遠い理由で仲間たちを、父さんを!母さんを!殺したのか!?」


どうやら、アデーレとマカリオスの両親は共生派の人間として、過去にディオスクロイによって殺害されていたらしい。双子だけが生き残っているのはそんな背景があったようだ。
カストロは語気を荒げてそれを黙らせる。


「黙れ害虫!神前であるぞ!!ヒト、ヒト、ヒト!人間、人類種!導いてやらねばすぐ死ぬか弱き者ども!貴様らはそこまでか弱くありながら、神たる我らを、時の悠久のなかで変質させていく!おお、信仰!ヒトの思い!汎人類史において、俺は人間へ零落させられ、我が愛しき妹もまた、半神へと堕とされた!」

「兄様……」

「夜闇を恐れるか弱さでありながら、時におぞましくも増殖し、発展し、繁栄する!なんたる不遜、不敬!」


なぜここまでディオスクロイ、特にカストロが人類への憎しみを抱いているのか。なんとなく分かってはいたが、やはり、人間に零落させられたことへの憎悪によるものらしい。


「貴様らを滅ぼし尽くすのに十分な理由だ!それを、俺は!寛大にも!父上に反旗を翻す者を選んで殺している!」

「…なるほどな、キリシュタリアの野郎、とんだサディストだぜ」


すると、カイニスはすべてを理解したように嘲笑を顔に浮かべた。槍を構えたまま、双子を嘲笑う。


「双子神のディオスクロイは人間様が嫌い。なるほど、なるほど。そりゃ、ああなるよなぁ。アトランティスで俺を殺した理由、なんてことはねぇ。羨ましかったンだよなァ!神霊の器を得てポセイドンの神器を手にした俺が!弱っちくも人間へ墜ちる道があるカストロ兄様はよォ!」

「ッ、」

「黙れ!黙れ黙れ黙れッ!それ以上兄様を愚弄するな!!」

「ポルクス、」

「もういい、兄様、もう言葉不要です!ここで私が殺し尽くします!我ら双神ディオスクロイ!ヒトを導く星の光なれど、こと貴様らに対しては!断罪の光!避け得ぬ死の刃であると知れ!」


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