星間都市山脈オリュンポスIII−7
話がまとまってすぐ、地下機構帯にもオリュンポス兵が突入してきた。それを突破して地上に出ると、やはり市民の代わりにオリュンポス兵と広域殲滅兵器、さらには幻獣までもが動員されていた。
総攻撃を仕掛ける都市側に対して、一点突破で道を開くと、双子がステュムパリデスを顕現させて立香たちが乗り込む。
アフロディーテのとき同様、人数制限になってしまうが、それは唯斗がアキレウスの戦車で移動するということで事前に話をつけていた。
「アキレウス!」
「おう、来たぜマスター!」
立香たちがステュムパリデスに乗り込んでいる傍ら、唯斗はアキレウスを呼び出して戦車を顕現させる。
「目指すは軌道大神殿オリュンピア=ドドーナ、大神ゼウスのいる場所だ」
「さすがの俺も、ゼウス神は初めて見るが…ま、なんだろうと倒すだけだな」
アキレウスはニヤリとして戦車に乗り込むと、唯斗とアーサーも同乗する。
「音速までは出さないがかなりのスピードを出す。騎士王、マスターを支えることに傾注しろ。マスターも防御術式で体を守っておけ」
「了解した、頼んだよアキレウス殿」
普段は軽口をたたき合う二人だが、さすがに今の状況はそんな余裕がないと互いに理解している。端的に指示を出してから、アキレウスは手綱を握った。
唯斗は鼓膜など圧力変化に弱い体の器官を防御しつつ、アーサーの腕の中でその体にしがみつく。
直後、戦車は豪速で地上を出発した。衝撃波で周辺のビル街の窓ガラスが砕ける甲高い音が響いてくる。
2000メートル級の祭壇街のビル群の合間を戦車は猛スピードで抜けていき、窓ガラスに戦車が反射して煌めく。
ステュムパリデスも同様にビル街を急上昇していくが、同時に地上からは上空への追撃が始まった。浮遊術式を纏った兵士や飛行型の殲滅兵器が続々とステュムパリデスに向けて飛び出している。こちらに来ないのは、アキレウスの戦車に追いつけないと理解しているからだろう。
「どうするマスター!援護するか!」
「…いや、カイニスがなんかやるっぽい」
操縦に注力しているアキレウスに問われたが、唯斗はステュムパリデスの上で槍を構えるカイニスを見て否定した。こちらが割り込むのはむしろ邪魔になる。
しかし、カイニスはどうやらステュムパリデスに付与されたクリロノミアの力を使用して宝具を展開したらしい、猛烈な濁流が嵐となってすべての敵性体を一掃したものの、ステュムパリデスはコントロールを失い始めた。
「…まずい、あれ墜落するな」
「墜落地点に合流するかい?」
アーサーもその様子を見ているため、立香たちと合流するかと聞いてきたが、唯斗は少し迷った。
墜落するのは、下層部にあるドーム状の植物園のような施設だと考えられる。そこから中部の巨大な機神回廊を経て、最上部に大祭壇があるとアデーレは事前に教えてくれていた。機神回廊は目測で3000メートルほどの高さがある構造体だ。何階建てになっているかは分からないが、英霊の足で全力で走っても1時間以上はかかるだろうし、あそこに敵がいたらさらに時間が掛かる。
「立香、俺は機神回廊に直接突っ込む。大祭壇の手前で合流しよう」
『了解!』
通信でとりあえず伝えておいてから、唯斗は機神回廊の突入できそうなポイントを視界に魔術をかけて探す。
事前に敵を倒しておいて、立香たちがスムーズに回廊を上がってこられるようにするのだ。
「アキレウス、回廊の上から3分の1くらいのところにあるテラスから突っ込んでくれ」
「おう!」
アキレウスはビル街を抜けて神殿の外縁に沿って飛行する。さらにスピードが上がり、唯斗は周囲を見るのをやめてアーサーの腕の中で顔を埋める。なるべく外気に顔を晒さないにようにするためだ。
そして、少しして戦車はテラスの窓ガラスを突き破り、機神回廊へと突入した。
回廊は機神がアリスィアで移動できるほどの高さと幅があり、まさに神のためのものだった。ここをそのまま進むのはあまりにナンセンスだ。
本当はアキレウスの戦車に乗ったまま進みたかったが、さすがに魔力を温存すべき局面だ。
「アキレウスありがとう。アーサー、とりあえず移動しよう」
「何かあればすぐ呼べよ」
アキレウスは唯斗の頭を撫でてから退去する。アーサーは入れ替わりに唯斗を抱きかかえると、回廊を走り始めた。
この回廊の先に、ゼウスが座す。