星間都市山脈オリュンポスIII−11
ゼウスはアーサーの話に瞳を閉じてから、ゆっくりと開く。
そして、カルデアの者たちを順に見渡した。
「……世界を取り戻すと言ったな。世界を守ると言ったな。全能たる我に預けるならまだしも、小さき者の身で己が力で果たすと!なるほど、アルテミス、ポセイドン、デメテル、アフロディーテ、魂なき機神が太刀打ちできぬわけだ!その愚直、その眩き輝きをなんと言う!」
その言葉と同時に、再び強力な重力波が放たれ、全員姿勢がぐらつく。咄嗟にアーサーは唯斗を抱きかかえて支えてくれた。アーサーに縋るように凭れるが、唯斗はなんとか、自分でも立てるよう防御術式を強く反発させて、足に力を籠める。
「カルデアの者たちよ。汎人類史の我ならばソラに上げ、星座としただろう。だが我は違う。我は寛大であるが慈悲の神ではなく、雷を以て人を征する神である!真体、降臨!」
すると、ゼウスはさらにアリスィアを降臨させるべく、雷霆を纏った。それは権能のほんの指先にも満たない漏電のようなものだが、空気を劈く轟音と高出力に、一撃でも当たれば落命すると即座に理解した。
『神体偽装、解除。空間展開、大祭壇領域直上に設定。神格真体名、ゼウス。指定霊基:エンシェント・ゴッド/ルーラー。周囲の知性体は速やかに退避してください』
アナウンスとともに、スタジアムの天井は完全に展開し、屋根がなくなる。星空に雷が満ちて、いくつもの雷光が瞬いた。雷光、雷轟、雷鳴、それらが大神殿はおろかオリュンポス中に響き渡っている。
星間戦闘用殲滅型機動要塞、旗艦ゼウス。
それは高さ1000メートルを優に越す巨大な顔のような船であり、まさに神として、雷光渦巻くソラから人類を見下ろしていた。
『汎人類史、考える葦たちよ。地球は、我が救おう。神話復権である』
そう宣言するのと同時に、一際大きな轟音とともに雷霆が放たれた。咄嗟にマシュはオルテナウスのシールド出力を最大にて宝具を展開する。
白亜の歪んだ正門が出現し、ゼウスの雷霆をかろうじて弾いた。なんとか耐えきったマシュだったが、正門が消え、雷霆が消失すると、周囲の惨状に全員目を見張る。
スタジアム上の祭壇は床を残してすべての構造物が消滅しており、神殿は回廊の中程まで破砕されていた。破壊されていても、恐らくゼウスの発する磁場によるものだろう、破壊された瓦礫がその場に留まって落下しないため、砕けていながらその場に留まり原形を留めていた。
この祭壇も、本来なら崩落していたところ、ゼウスの磁場によって浮遊を続けている。
「出し惜しみしてられない。アーサー、宝具解放」
「了解。
十三拘束解放、
円卓議決開始」
『承認。ベディヴィエール、ガレス、ランスロット、モードレッド、ギャラハッド』
「…これは、世界を救う戦いである」
『―――アーサー』
「
約束された勝利の剣!!!」
アーサーは聖剣を解放し、黄金の光線を放った。衝撃波が吹きすさぶ祭壇から、上空に浮遊する巨体へと光線はまっすぐに伸びていく。
かつてティアマトをも押しとどめた聖なる破壊光線であるにも関わらず、ゼウスの体が破壊される音は一向に聞こえてこない。
それどころか、エクスカリバーの光線が晴れたあと、ゼウスは傷一つない姿で浮かんでいた。
「……嘘だろ、」
唯斗は愕然とする。もちろん、今までだってエクスカリバーで倒せない相手はいた。それこそティアマトがそうだったように、概念上の理由でエクスカリバーでは倒せないケースがあった。
しかしゼウスはそうではないはずだ。にも関わらず、傷一つないというのは、単純にゼウスの防御がアーサーの攻撃を防いだということだ。
「…私の聖剣を以てしても傷一つつかない…それほどの存在強度を誇るか、大神ゼウス…!」
「そうか、機神を統合しているから…!くそ、こんな固くなるのか」
奥歯を噛みしめて、唯斗はどんな手を打つか考える。理論武装、概念武装であればそれを解除すればいいが、現状、そういったものが思い浮かばない。あれは、単にそれだけの存在強度を誇っているというだけだ。その存在強度は、これまで多くの機神を統合してきたことによる全能化がもたらしたものであり、この異聞帯に特有のものだろう。
さらに、アナウンスが残酷なことを告げる。
『大主神戦闘、規定の予定時間を超過。敵知性体の健在を確認、防御力の再評価を実施します。よって、権能の一時解除を承認します。大複合権能ティタノマキア、限定解除。大複合権能ギガントマキア、限定解除』
「なんと、この上があったというのか…!」
ホームズも唖然として、急速に魔力量が跳ね上がるゼウスを見上げる。
恐らく複合権能は、ティタノマキア、ギガントマキアそれぞれでゼウスが統合した神性を意味するものだろう。これまで、周囲への影響の大きさから解放していなかった力ということだ。