星間都市山脈オリュンポスIII−21
キリシュタリアの仕業でもないらしく、キリシュタリアですら愕然としている。
「馬鹿な、育ちきった空想樹を外部から燃やすことなど…!」
「ああ。だから内部から燃やしたんだよ」
「ッ!」
咄嗟にキリシュタリアはその場を離れる。寸前までキリシュタリアがいたところに拳を突き立てていたのは、ベリル・ガット。
避けられたことに驚いたのか、ベリルは鳩が豆鉄砲を食ったような顔でキリシュタリアを見つめた。
「おいおい、背中に目でもついてんのかよ?」
「君こそ、もっと慎重に行動すると思っていたよベリル。仮にここで私を殺したところで、カルデアのメンバーは健在だ」
「しかも冷静ときた。なんだ、俺がこうするって分かってたのか?」
「いや。私も正直混乱している。君に裏切る理由はないはずだ。君だって異星の神から解放されて神になれるのだから」
冷静に見えるキリシュタリアだが、この事態は想定外だったらしい。ベリルはその返答にニヤリとする。
「あァー…そうか、まぁ、お前には分からないよなぁ。なんせ、お前は忙しすぎた。ブリテンを直接見ておけば、俺に任せるなんて真似しなかっただろう。それにしても、なんでブリテン異聞帯を敵視してたんだ?見てもいねぇのに」
「…考察したからね。もしブリテンに異聞帯が現れるとしたら、それは星を道連れにした滅びの呪いだ」
「うお!よく分からねぇがそいつぁやべぇな!あいつらマジモンの爆弾だったってわけだ。ま、それなら乗った甲斐もある。教えてやるぜヴォーダイム。俺がここに来た理由。俺は妖精たちを裏切った身だ、ぶっちゃけいつでも命を狙われている…ここにいるぞ、と言えば、すぐに天罰が下るくらいにはね」
「っ!アデーレ!マカリオス!立香!唯斗!今すぐ逃げるんだ!!」
すると、キリシュタリアは目を見開いてこちらに鋭い声で警告を発した。それに真っ先に反応したのは、意外にもアーサーだった。
聖剣を構えてこちらに叫ぶ。
「距離を取るんだマスター!!ロンゴミニアドが放たれた!!」
「な…ッ」
真っ赤な光に加えて、第六特異点で目にした黄金の輝きも迫ってくるのがすぐに見えるようになった。アーサーはエクスカリバーによって相殺しようとしているようだが、明らかに熱量が違う。令呪を伴う聖剣の解放でなければ相殺できないだろう。疲弊したアーサーでは押し負ける。
「くそ、退避は…間に合わない、マシュの宝具でも駄目だな…っ、せめてボーダーに乗っていれば…!」
ここがボーダーであればなんとかなったかもしれないが、この場のメンバーだけでは間に合わない。アキレウスの戦車で唯斗と立香が離脱したとしても、他は全滅だ。
いったいどこから、誰が放ったのかさっぱり分からないが、聖槍の光は空想樹からこちらに迫ってきていた。
しかしキリシュタリアが今度は動く。
「騎士王!聖剣はまだとっておかれよ!ここは私が!」
そう言って、キリシュタリアは上空に魔術回路を拡張して結界を展開した。惑星轟の術式の応用だ。
それによって一時的に聖槍の光線が堰き止められ、轟音とともに衝撃波が星空に広がっていく。
「まだ、彼らの旅をここで終わらせるわけには…!」
「そうかい。ならやっぱ、死ぬのはお前だ、ヴォーダイム」
そんな低い声とともに、今度こそ、ベリルの拳がキリシュタリアの腹を貫いた。鮮血が飛び散り、キリシュタリアは口から血を大量に吐き出す。
「神になるだ?願い下げだ。そしたら人を殺せなくなる。俺はクズのままでいたいんでね」
聖槍の光は消え、キリシュタリアの結界も消えた。空想樹はいまだに炎上しており、その赤い光の下で、キリシュタリアはどさりと地面に倒れる。どんどん血が地面に広がっていき、それを無感動にベリルは見下ろしていた。