永久凍土帝国アナスタシアI−11
暗中模索だったロシアでの第一歩は、着実に先を見通せるようになりつつあった。
まず、一同は叛逆軍に合流することにして、そこでこのロシアに呼び出されたサーヴァント、アタランテ・オルタと出会った。アタランテはバーサーカークラスであり、アーチャーのアタランテの別側面であるようだ。
特異点は、その基礎となる聖杯がバランスを取るために召喚したサーヴァントがいた。ここにもサーヴァントがいるというのはある意味で自然である意味不自然だが、抑止の手段である英霊という本来の性質に近いものかもしれない。
叛逆軍への所属後、ロシア北西部の砦から近くの村、ヤガ・スィチョーフカとヤガ・ヴャジマに檄文を届けて叛逆軍への協力をこぎつけた。どちらも現代ではスモレンスク州にある小都市だ。
その後、ゴーレムに素材と食料を乗せて一度ボーダーに戻ることになり、いったんパツシィとアタランテとも分かれてボーダーに戻った。
一晩かけてゴーレムが修復に勤しんでいる間に、マシュはダ・ヴィンチのもとでメンテナンスに入り、立香と唯斗はつかの間のベッドでの睡眠にありつけた。
あまりアーサーとは会話できていないが、その気力もなくベッドで倒れて眠ってしまった。身体的疲労というよりも、精神的なものだ。
今回はアーサーもマシュもサーヴァントとしてほとんどの力を失っている状態であるため、かなり気を張っていたからだ。ようやく、常時召喚のアヴィケブロンと一時召喚8騎という戦力を確保でき、叛逆軍という現地協力者もできて、敵の情報もいくらか見えてきたことで、少し気が安らいだ。
翌朝、立香と部屋でレーションを食べていると、ダ・ヴィンチとマシュがやってきた。アーサーも部屋の壁に寄り掛かって控えている。
「おはよう二人とも。さて、マシュのことなんだけど」
「…先輩、唯斗さん。申し訳ありません、私はナビゲーターに戻ることになりました」
さすがにそうだろう、とは立香と唯斗はどちらも理解している。マシュは戦えないが、それはマシュのせいではない。
それに、この戦いがこれまでの戦いとは異なる性質であることを、そろそろ誰もが気づき始めていた。恐らく、アーサーはそれを理解しているからこそ、わりと黙っているのだろう。唯斗たちが、この戦いを自分たちで落とし込んで向き合わなければならないからだ。
「戦力も確保できたからね。体はいたって健康だけど、サーヴァントとして戦うには厳しい部分がまだ多い。立香君には悪いが、マシュはボーダーに残ってナビゲーター役だ」
とはいえマシュはひどく落ち込んでおり、役に立てないことをかなり責任に感じている。何をフォローしても気にしてしまうだろうから、唯斗は逆に励ましの言葉は言わないことにした。
「マシュがナビゲーターやってくれるなら、通信に占めるゴルドルフの割合が相対的に減るからな。それはとても良いことだろ。俺たちの精神衛生まで頼むな、マシュ」
「あはは、唯斗の言うとおりだね。ナビゲーターよろしく!」
「っ、はい!先輩、唯斗さん!」
マシュも明るい表情を取り戻し、再び立香と唯斗、アーサー、アヴィケブロンはボーダーを出発した。
残念ながらここからは長期戦だ。叛逆軍がオプリチニキと戦えるような軍隊になるまで成長させること、イヴァン雷帝の情報を得ること、このロシアを担当するクリプターであると考えられるカドックとサーヴァント・アナスタシアに関して調べること、そしてロシアを取り囲む嵐と、モスクワ付近に聳える巨大な樹、アタランテの情報では「空想樹」と呼ばれるものを調査すること。それらが今後の目標だ。