星間都市山脈オリュンポスIII−25


そうして、カルデアは無事、大西洋異聞帯でのすべての作戦を完了した。
唯斗がボーダーに帰投した直後、軽い戦闘が甲板で起き、カイニスと立香たちが交戦したものの、けじめ、と本人が言っていたように、すぐに片はついてカイニスも消失。

また、なぜか重傷のカドックがラスプーチンによって届けられ、収容して治療ポッドに入っていると共有された。
その後、ホームズも同じく無茶をしたため治療ポッドに入り、マシュとアーサーも医務室で霊基の調整を行うことになっている。

同時に崩落する都市上空で規定通りのプロセスによる虚数潜航を行い、ボーダーは嵐を突破して異聞帯から元の大西洋上空へと脱出した。
さすがに規模が大きく異聞深度も深かったことから、異聞帯を取り巻く嵐の壁はまだ残っているが、徐々に縮小している。

澄み渡る青空、真っ白な地表。ここから北海座標まで移動して、彷徨海に帰投するのだ。

それまで数日かかるため、マスターたちには休養が言い渡された。


その夜、久しぶりに自室で一人の睡眠をしようと思っていた矢先、ムニエルからある映像が送られてきた。
それは、デメテル撃破後にマカリオスが記録した映像であり、神殿に上る前にカルデアに送られたものだという。迷いはあったものの、ムニエルは今共有することにしたそうで、立香にも映像を送ったと唯斗に教えてくれた。

そして、「もし必要だと思ったなら、遠慮せず、藤丸の部屋に行って欲しい」と言われた。

映像を見る前に言われたためどういうことか分からなかったが、映像を見終えて、すぐに唯斗は部屋を後にする。

その映像では、双子と武蔵の会話が記録されていた。マカリオスが破神同盟の内部調査として記録したもので、武蔵とアデーレにカルデアの所感を尋ねていた。
そこで武蔵は、立香を大好きだと述べた上で、「ずっと幸せに、なるべく痛いことや苦しいこともないように、生きて欲しい」と、そう口にした。

破神がすべて終わったら祝宴を開こう、とも。

立香の部屋にやってきた唯斗は呼び出し音を鳴らそうとしたが、それより先に扉が開く。立香は目の前にいた唯斗に驚いてから、柔らかく破顔する。


「…来てくれてたんだ。自分から行こうとしてたのに」

「そりゃな。入っていいか」

「……うん、ありがとう」


立香は唯斗を暗い部屋に招き入れる。立香も寝るところだったのだろう。
笑顔を見せはしたが、溢れそうなものに、もう唯斗は気づくことができる。

いつも通り、ベッドに並んで座り、唯斗の左側に座った立香が自分の膝を見つめる。


「……アトランティスからここまで、長かったね。オリュンポスなんて4日間しかいなかったのに、1ヶ月くらい過ごした気分だ」

「本当にな。だいたいアトランティスで3週間くらいだから、全体でも1ヶ月といなかったってのは…うん、体感時間からは信じられない気もする」


アトランティスに突入してすぐ、オデュッセウスの防衛軍とアルテミスの矢によって壊滅しかけ、流れ着いた島でバーソロミューやコルデー、オリオンと出会った。
次の島でイアソンとドレイクとも出会えたが、ドレイクは呪いのために島とともにアルテミスの矢で消滅。

その後、その島で合流したマンドリカルドとともに旅を再開し、千代女やアキレウス、パリスとも合流した。


「……たくさんの犠牲を払って、やっと、この異聞帯を攻略できたんだよね」

「…そうだな。今回は…本当に、たくさんの英霊が命を投げ打ってくれた」


千代女は生きたまま自らの毒でエキドナを内側から破壊した。
コルデーは大切な初恋のために、それを忘れてでも、オデュッセウスの暗殺を成功させた。
バーソロミューはすべての魔力を使ってオリオンを送り届け、ヘクトールはただ一撃を防ぐためだけに召喚に応じた。

マンドリカルドは、騎士としてではなく、立香の友としてたった一人でアルテミスの矢を防ぎ、パリスは自ら矢となり、オリオンはその矢で最愛の女神を撃ち落とした。

ドレイクのおかげでポセイドンを攻略することに成功し、そしてイアソンは最後までカルデアを見届けてくれた。


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